ダーナ氷の女王 第二部 第6話 1
マナはその日も、上がったばかりの一番の獲物を手にして、すやすやと休んでいた。
他の村人の手前もあって、いいかげん叱らねばならないと考えていたガインだったが、
その満足げな寝顔に、今日も何も言えないのだった。
そんな平穏な日々を打ち破る来客者があった。
「キラ?キラかおまえ・・」
「呼び捨てとは・・随分えらくなったもんだなガイン・・」
それは、マナが高台であった深い緑色の髪の背の高い男。
キラと呼ばれている。キラは鋭い目つきでガインをにらめつけた。
10年ほど前、まだこの地が緑の大地だったころ、
キラ達狼族はこの大陸で一番力を持った種族だった。
狼族と猫族は互い交流があったが、
プライドの高い狼族にいいように使われることも多かった。
当時まだ、若かったガインはキラの下っ端だった。
いわゆる悪ガキ仲間である。
だが、大陸が砂漠化し、住処である森林を失った狼族は、
偉大なる指導者と共に流浪の旅に出たのだ。
それは、砂漠の魔女の復活と時を同じくしていた。
森林の消滅と、魔女の復活。
ただの傲然ではありえない。
「・・・いいんだ今の俺には関係のないことだ。
それより、一族と一緒にここを去ったお前が、なんのようだ」
「・・・お前には関係がないことだ・・。それより・・・」
キラはずかずかとガインの家に入り込むとベッドで満足げな寝息を立てているマナに近づ
いた。
「・・こら!マナに何をする!」
ガインが、キラに飛びかかって声を張り上げた。
猫族としてはびっくりするほどの大男だ。
さすがのキラもおもわずたじろいだ。が・・。
ふふっと鼻で笑うと
「・・・俺が知らないとでも思っているのか」
「な、なにをだ・・。マナは俺の娘だ・・・・」
ガインはキラの薄気味悪い笑いに言葉を詰まらせながらそれだけいうのがやっとだった。
・・・何を知っているというのだ?・・・・。
「やっとのおもいでしらべあげたのさ・・・。グリンウエルの姫様の行方をな・・・。
そしてこの娘の正体もな」
「・・なんだって?」
キラの言葉に、ガインは全身を震わせた。