クレール光の伝説ミッドランド編
第3話
ギネビア姫一行が、険しい山の麓に着くとそこには小さな祠があった。そこが仙人の住
処だという。
「これは、これは、ギネビア姫が本当にお越しとは・・・」
祠の入り口には、およそ、仙人などと言う名前には相応しくない、でっぷりと太った男
が立って出迎えていた。
「いかにも私がギネビアです。仙人様に会いに参りました。仙人様は何処に?」
りんとした態度で、ギネビア姫が男に尋ねた。
「だから、わしがその仙人なんよ」
「え!?」
ギネビアはじめ一行のものは驚きを隠せなかった。仙人と言えば、このような山中で一
人修行に明け暮れているはずだ。
しかし、目の前にいる男は、でっぷりとした太鼓腹、にたにたと笑うその顔には、とて
もそんな風には見えなかったからだ。
ギネビア姫と3人の侍女だけが、仙人の祠の中へと案内された。世に聞こえた著名な仙
人の言葉である、ここまで姫君一行を守ってきた兵士達はおずおずと帰る他はなかった。
ギネビア姫は、祠(といっても、その入り口こそ重厚な門で守られてはいるが、その中
は洞窟になっていた)の中へと進み、やがてこじんまりとした部屋へと案内された。
洞窟の中である、ろうそくの明かりに照らされたその部屋の奥にはなにやら祭壇のよう
なものが飾られている。仙人の言葉を借りれば、祈りの場とでも言うのだろうか。
祭壇の前には仙人が座り、その両側に屈強な男が二人立っている。仙人の身の回りを世
話をする修行僧だ。ギネビアと侍女達は、その前のいすに座らされた。
「お話はよく伺っております・・・」
仙人はもったいぶったように話し始める。
「なにやら最近怪しげな化け物があらわれては婦女子をさらい、姦淫するという話もな」
ギネビアは、真剣な顔で仙人の顔を見つめ頷いている。
「・・・そう、姫君のような美しい方がそのような目に合われたら、父君初め国中の民が
嘆き悲しむことになるじゃろう・・・」
暗闇の中でも、ギネビア姫の美しさは変わらない。全身を覆う、濃い緑のドレス。腰ま
で伸びた黒髪。知性的な顔は、暗闇の中でひときわその美しさを増しているようにさえ見
えた。仙人はその顔を見て、思わず背筋がぞくっとした。
「・・・お願いの儀。すでに使者よりお聞きのことと存じますが・・・」
「ああよい!全て承知じゃ・・」
「・・・よろしくお願いいたします」
「うむ・・・。うら若きおなごの身には辛い試練になるかも知れぬ。それも覚悟の上で」
「はい!いかような試練もお受けいたします」
ギネビア姫が仙人の言葉に神妙に答える。その言葉を聞いて、仙人は密かに笑みを浮か
べると言葉をつないだ。
「ときに・・・姫はまだ純潔の身でござるかな?」
「は?」
突然の言葉にギネビア姫は言葉を失う。両側の侍女達も言葉を失い顔を染めている。
「ほ〜ほっほこれは失礼!ミッドランドの姫君ともあろうお方にこれは失礼を申した」
「・・・・・」
仙人はこれもまた、そぐわない大笑いを始めた。
ギネビアは顔を伏せたまま、耐えていた。
「さあさ、それではさっそく災いを取り除く業をいたしましょう・・・おっとその前に」
「は?まだなにか?」
ギネビアが聞き返した。心使い一つ感じられない無礼な言葉の後だけに、ギネビアも神
経を尖らせている。
「この者達に案内させますので、奥の湯場にどうぞ、修行の前に、身を清めていただきま
す」
「・・・・わかりました」
蝋燭だけがわずかに辺りを照らす洞窟の中、その岩場に湧き出る湯泉があった。決して
清潔とは言えない湯で、ギネビアと侍女達が身を清めていた。
「・・・ああ何が仙人よ!まるでいやらしいひひ爺じゃない!」
「これ!そのようなこと!」
侍女が仙人の顔を思い出して吐き捨てるように言う。それは、ギネビア姫も同じだった。
仙人の目が、自分の体中をいやらしく舐めるように見ていたのをはっきりと感じていたの
だ。
「姫様も感じておられたのでしょう?あんな男が仙人だなんて!」
「・・・だからといって他にどうしようというのですか?」
ギネビアが再び侍女達を叱りつける。
ギネビアは恐れていた、燐国のまるで妹のようにかわいがっていた姫が、城の中からさ
らわれて、おぞましい怪物に犯されたとういう話。さらにはその怪物の子を身ごもったと
言うこと。
また、うわさに聞くハーン公国の一夜にしての滅亡が、天災などではなく。怪物達に滅
ぼされたのだという話。
すべてが、自分の国に決してあってはならぬ事だ。当然我が身にもなのだが・・。
『国一番の仙人』と名の通ったハーミットの仙人。この仙人の力で、自分が化け物に犯
されても妊娠しない身体に変わるなら、自分の身を呈してでも果たさねばならない。国を
思う心の強いギネビアは、国のためになるならと、今回の話を快く飲んだのである。
「わかっております・・・けれど、あのような男に姫を任せるなど・・・私には国王の気
持ちがはかりしれませぬ」
「・・・父をせめてはなりません!私から望んだことなのです。たとえどのような業であ
ろうともです!」
言葉とは裏腹に、その業たるや、どのようなものか知るものはいない。ましてや、その
仙人があのような男では、どのような目に遭わされるのか。ギネビアとて処女の身。まる
で知る由のない性の修行に、恐怖を感じない訳はない。
自分の身体をかき抱き恐怖に震えたとして、ナンの不思議はないのである。
暗闇の中で、ギネビアは自分の身体をいとおしむように洗い流している。漆黒の髪を頭
上にまとめ上げたその姿は、すでに豊満な女の身体だった。
「姫君は本当に美しゅうございます。女の私でもほれぼれとしてしまいます」
「いやだ・・・メリイ・・・」
侍女の言葉に、ギネビアは顔を赤らめた。
19歳という、当時としてはすでに行き遅れの感さえある年齢。首筋から肩にかけての
流れるようなフォルムは、しっとりと肉付きの良い白い肌。ふっくらと盛り上がった乳房
は、その中心につんと張りつめた、ピンク色の乳頭。盛り上がったお腹と、くびれた腰。
白く豊かな丸みを持ったお尻は決して垂れることもなく。形よく盛り上がっている。そし
て、豊かな太股は、その奥に潜む処女の証を隠している。
このような白い肌を見た男がいたならば、その場で、襲いかかったとしても、無理のな
いことだろう。
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