みだら人形(第5話)
「すごいなあ・・・ほんとにそっくりだ」 英里子は、まるで顔をくっつけんばかりにコッペリアの顔を見入っていた。 「気に入りましたか?」 後ろから人形師の声が響いた。 英里子は振り向くとあわててカーテンを閉めて気まずそうに微笑んだ。 「おや、お友達は?」 「え?・・・・あ、あれ・・・」 英里子は辺りを見回した。かおりとゆかりがいない。 「お帰りなったのでしょう・・・」 人形師が言った。 「なんでえ・・・。突然にいなくなっちゃうなんて」 英里子はさすがに気持ちが悪くなった。 だが、人形師は意に介せず。 「どうです。ほんとにそっくりでしょう・・・」 人形師は英里子の前に回ると、カーテンを開けてコッペリアの人形を見せた。 「ほんとだあ・・・・」 再び見とれる英里子。だが、胸騒ぎは消えない。 「どうです?ほんとに入れ替わってみれば?」 「え?」 英里子は人形師の言葉に更に不安が増した。 『どうしよう・・・。かおりやゆかりがいればいいけど。あのおじさんと二人きりだよね。 着替えるって、裸になる事よね・・・・やばいよ・・・』 かおりとゆかりがいなくなったことで、不安が募ってきた。 だが、 「さあさ・・。どうぞどうぞ・・・」 「あ、あの、ちょっと・・・・」 人形師は、英里子をコッペリアの部屋?に押し込むとカーテンを閉めた。そしてどこかへ と行ってしまった。 「どうしよう・・・・」 英里子は困惑していた。
かおりとゆかりがどこへ行ったのか、なんのことはない。壁一つ隔てた隠し部屋にいた。 コッペリア人形に気を取られている時。後ろのピエロ人形が襲いかかった。後ろから襲い かかり、口に布を当てられ、そのままピエロが立っていた場所にあった隠し扉からこの部 屋に連れ込んだのである。あまりの手際の良さに二人は悲鳴を上げることさえできなかっ たのだ。 「な、なんなのよあんたたち・・・!」 精一杯かおりがピエロをなじった。 だが、ピエロ独特の笑顔をペイントした男達はニヤ ニヤと笑っているだけだ。 そこは妙な部屋だった。部屋の中心部にはベッドがあり、その上にかおりとゆかりが押し 倒された。妙に薄暗く、部屋の隅には言葉にも出せない淫具やらが散らばっていた。 実はここは、人形趣味の男達ができあがったダッチワイフをもてあそぶ、人形専用のラブ ホテルだった。 「へへへ・・・・二人ともパンツ丸見え・・・」 二人のピエロが、二人をのぞき込む。 「え!いやっ!いやあ!」 ふかふかのベットである。押し倒されて開いた足の奧の下着をミニスカは隠してくれない。 二人とも必死になって隠そうとするが、うまく行かない。 「へへへ・・・いつもパンツ丸出しで踊ってるのに、生パンは恥ずかしいのかな?」 「なにを!・・・あっ・・・」 かおりはピエロ達をにらめつけようとしてはじめて気付いた。ピエロは全身タイツを着込 んでいる。だが、その股間はくりぬかれて、おぞましい男性器がそそり立っていた。 「やあっ・・・・・」 ゆかりもそのことに気付いて目を伏せる。 ピエロ達はじりじりと二人を追いつめていった。