アルセイク神伝


第二話その4.フィオーネ絶体絶命

「お前をただ犯すだけでは面白くないな。こうしてやろう。」
 ラスが奇怪な呪文を唱えると、フィオーネのいる床の上に魔法陣が出現した。魔法陣は
黒い床に赤い光を放ち、フィオーネを取り囲んだ。
 「はっ、動ける・・・」
 魔法陣に取りこまれた途端、フィオーネの金縛りが解けた。自由を取り戻したフィオー
ネは、魔法陣の外に向かって走り出した。だが。
 「きゃあっ!!」
 魔法陣を出ようとした瞬間、フィオーネの前に見えない壁が出現し、行く手を遮った。
 「その魔法陣から逃れる事はできんぞ。その中で淫靡な快楽に酔いしれるがいい。」
 「い、淫靡って・・・」
 「お前は男を知らぬ乙女ゆえ、このわしが素晴らしい快楽の園に誘ってやろう・・・」
 そう言うなり、ラスは再び呪文を唱えた。すると、
 「う、うあああ・・・」
 フィオーネは足元が激しく揺れる感覚に襲われた。目の前のラスとヒルカスの姿がグニ
ャリとねじれ、ラスの笑い声がこだまの様に頭の中に響いた。
 「その魔法陣の中にいる者は、淫靡な快楽に堕ちる。女なら狂ったように男を求める様
になるのだ。」
 ラスがそう言うと、魔法陣の魔力によって、落ちるような感覚に苛まれたフィオーネが
床に崩れた。
 「う、ううう・・・」
 手足が痺れ、心臓が激しく鼓動する。手足を動かそうにも思うように動かない。なんと
か上半身を起こしたフィオーネは、立ちあがろうと懸命になった。
 「無駄な足掻きだ。」
 ラスが人差し指をすっと動かすと、フィオーネの前でカマイタチが発生し、フィオーネ
のウェデングドレスをバラバラに切り裂いた。
 「ひいっ。」
 ドレスがペチコートもろとも全て破られ、フィオーネはキャミソールとドロワースを身
につけただけの姿になった。
 破られたドレスの破片が幾ばくか残ってはいたが、露になった体のラインを隠すには、
余りにも頼りなさ過ぎた。
 「コルセットなんぞ付けていては窮屈だろうが、外してやるぞ。」
 ラスはそう言うなり、カマイタチをフィオーネの背中にお見舞した。後ろからきつい目
に結ばれていたコルセットの紐が弾け、その勢いでキャミソールの胸元が破れた。
 「あっ・・・」
 短い悲鳴を上げるフィオーネ。キャミソールが破れたため、胸の前がはだけ、フィオー
ネの白く美しい乳房が露になった。慌てて胸元を隠そうと手を持っていくが、うまくいか
ない。
 「!?・・・」
 自分の手が乳首に触れた時である。胸に今まで感じた事の無いような、奇妙な感覚が走
った。
 胸の皮膚感覚が、異常なまでに高まっているのだ。震える手が胸をこするたび、プリン
と乳房が膨らみ、乳首が起った。
 「あう、う・・・こんな・・・」
 胸元に当てた手が、自分の意思とは関係なく、乳房を揉み、乳首を擦り始めた。ラスに
操られているのではない。自分の内から湧いてくる淫靡な感覚がそうさせていたのだ。
 「快楽に目覚めたか、さあ、淫靡な欲望のまま、己の身体を貪るがいい。」
 ラスは再び人差し指を動かした。するとコルセットと同じ様に紐を切り裂かれたドロワ
ースがスルスルと、ずり落ち始めた。
 「あっ、だめ・・・いや・・・」
 ラスの念力でずり落ちて行くドロワースを手で押さえていたが、思うように動かない手
ではそれを阻止する事が出来なかった。
 足掻くフィオーネは床にうつ伏せ状態で転がった。ずり落ちるドロワースを前で押さえ
様とした為、おしりをラスに向けて突き出す形になってしまった。
 「おお、これはこれは・・・尻の穴が丸見えだぞ。頭隠して尻隠さずとはこの事だな。」
 ラスの下卑た声がフィオーネに、おぞましい険悪感をもたらした。
 ドロワースの真ん中の割れ目から、フィオーネ自身のピンク色の割れ目が丸見えになっ
てしまい、誰にも見せた事の無い大事な部分を、おぞましいラスに見られてしまった。
 「み、見ないでぇっ!!」
 慌てて手を後ろに回そうとするが、手がドロワーズから離れた途端、ラスの念力によっ
て、ドロワーズが一気に膝までずり落ちてしまった。
 「ひい、だめ・・・いやっ。」
 しびれてまともに動かない手を動かして、下半身を隠そうとあえいだ。
 そして、自分の太ももに手が触れた途端、胸に感じたのよりも強い感覚が走った。下半
身に走ったその感覚は、股間の大切な部分を直撃した。 
 「い、いや、こんな・・・ああ・・・」
 フィオーネの左手が股間をまさぐっていく。そして、栗毛色の陰毛をかき分け、秘部を
指でいじり始めた。
 「お、おねがい・・・誰か・・・わたしを止めて・・・ううあ・・・」
 言葉とは裏腹に、右手は自分の胸を揉んでいる。全身が熱く火照り、秘部には愛液が溢
れた。
 「ククク、穢れ無き姫君の淫靡な自慰行為だ。最高の眺めではないか。」
 ラスは舌なめずりしながら、自慰行為をするフィオーネを見ている。フィオーネは激し
く噴出してくる淫靡な快楽に翻弄されて床をのた打ち回った。
 その度に、破られたキャミソールと膝まで下ろされたドロワーズが脱げてゆき、ついに
は、一糸纏わぬ全裸になってしまった。
 「うははっ!!、なんていい身体をしてるんだっ。さすがお姫様。ヨダレが出るぜ〜。」
 陰湿な声をあげるヒルカス。
 幼さの残る、天使の様に可憐で清純なフィオーネは、邪悪で陰湿なラスとヒルカスの前
で、自慰行為をすると言う辱めを受ける羽目になった。
 いくら逃げ様と足掻いても、手足が自由に動かない為、ただ床の上で悶えるしかなかっ
た。そして、さらし者にされる苦痛が彼女を苦しめた。
 「だめ、なんでこんな事を・・・」
 淫靡な感覚がフィオーネの全身を電撃の様に駆け巡って行く。いくら自分の手を止めよ
うとも、激しい快楽の前には逆らう事が出来なかった。自分の手が別の生き物の様に、秘
部をまさぐった。
 「いや、見ないで・・・たすけて、陛下あ、あっああー!!」
 カルロス王を呼びながら、フィオーネは果てた。
 「はあ、はあ・・・う・・・ううう、陛下・・・」
 カルロス以外の男の前で露な姿を晒してしまった事、そして淫靡な快楽に自分の身を委
ねてしまった事を悲しみ、顔を覆って涙ぐむフィオーネ。
 だが、彼女に泣いている暇など無かった。恐怖の魔王ラスが、フィオーネを奪うべく近
づいてきたのだ。
 「存分に堪能させてもらったぞ、では今度はわしがお前を昇天させてやろう。」
 「いや・・・こないでっ、近寄らないでぇ!!いやー!!」
 絶叫するフィオーネ。その叫びが辺りにこだました。
 歩み寄るラスから逃れようともがくフィオーネだが、手足が思うように動かない為、空
しく喘ぐのみであった。
 「ん〜いい顔だ、怯えろ、もっと怯えるがいいっ。いくら叫んでもカルロスとやらは助
けに来んぞ。おとなしく我が餌食となれ。グハハァーッ!!」
 ラスがそう言ったときである。王の間の天窓のガラスが破られ、衛兵の魔族が悲鳴を上
げて落ちてきた。
 床に叩き付けられた魔族の胸には剣で切りつけられた傷がある。
 「!?、なにごとだっ。」
 楽しみを中断されたラスは、怒りの篭った目で割れた天窓を睨んだ。その天窓から、3
つの人影が踊り出てきた。
 「フィオーネッ、助けに来たぞ!!」
 3人のうち、真中の人影がそう叫びながら床に降り立った。続いて残り2人も床に下り
る。
 「あ、陛下!!」
 床に飛び降りてきた人物を見るなり、フィオーネが歓喜の声を上げた。
 剣で武装したその人物は、カルロス王と、その護衛であった。
 「大丈夫かフィオーネ!?」
 魔法陣の上に全裸で横たわっているフィオーネを見たカルロスは、彼女を助けるべく、
駆け寄って行った。
 「貴様ら、何奴だ!!」
 3人の前に、ヒルカスが立ち塞がった。
 「私はフィル王国の国王、カルロス・ランスフィールドであるっ、我が妻、フィオーネ
を返してもらうぞ!!」
 「おのれぇ、ラス様に無礼を働く不埒者どもがっ、返り討ちにしてやる。者ども、かか
れー!!」
 手下の魔族達が一斉に襲いかかった。
 「ひるむな、いくぞっ」
 「おおっ!!」
 迫り来る魔族達を3人は次々に切り捨てて行く。3人ともいずれ劣らぬ剣豪だ。瞬く間
にヒルカスの手下達は床に倒れ付した。
 「くそ、不甲斐ない奴等だっ。」
 自らカルロス達に立ち向かおうとしたヒルカスを、ラスが制した。
 「まあ待て、あ奴らごときにお前が出るまでも無い。下郎どもには相応しい相手を出し
てやろう。出でよ、ブタ男っ。」
 「ぶうっひ〜!!」
 ラスがそう言うと、カルロス達の眼前に、巨大な肉隗が雄叫びを上げて飛び出してきた。
 「な、なんだこいつは!?」
 驚愕するカルロス達。肉隗の正体はなんと、ブタの頭と魔族の体を持つオークだった。
しかし、その巨体、醜悪な面構えは並のオークではない。
 「ぶひひひー、およびでずがぁ?らずざまー。」
 「その人間どもと遊んでやれ、遠慮はいらんぞ。」
 耳障りな濁声で喋るブタ男に命令を下すラス。
 「ぶひぶっひ〜あぞんでやりまずぅ〜!!」
 ヨダレを垂らしながらガッツポーズを決めるブタ男。
 「くたばれバケモノ!!」
 カルロスの護衛2人が、切っ先をきらめかせ、柄まで刺されとばかりにブタ男の脂ぎっ
た腹に剣を突き刺した。
 「ぶひー!!」
 「やったか!?」
 叫ぶブタ男。護衛達は勝利を確信した。
 「ぶあーやらでだー。なーんぢゃってね、おでにごんなもんぎがねー。」
 ニヤリと笑うブタ男。剣は深く刺さっているはずだ。だが、ブタ男は何のダメージも負
っていない。護衛達の表情が驚愕から恐怖に変わり、ヘビに睨まれたカエルの様に動けな
くなった。
 「あわわ・・・ぎゃっ!!」
 「ぐえっ。」
 護衛の2人が、ブタ男の強烈な張り手を食らって吹っ飛んだ。
 「ハンス!?、ガーロック!!おのれ・・・よくも!!」
 ブタ男に倒された護衛達を見て、名前を呼びながら絶句するカルロス。
 「ぶひひー、づぎはおめーだぁ。」
 腹に刺さった剣を抜きながら、ブタ男はカルロスを睨んだ。
 「ぶひょおおっ!!」
 抜いた剣をカルロス目掛けて叩き付けるブタ男。だが、叩き付けた場所にカルロスはい
ない。
 「あで?どごだ?んぎゃ!!」
 ブタ男の頭にカルロスの蹴りが決まり、ブタ男は前のめりに転倒した。ジャンプしたカ
ルロスが、ブタ男を踏み台にして更にジャンプしたのだ。
 「ラスッ、覚悟!!」
 頭を下にしてひっくり返っているブタ男を尻目に、ラス目掛けて剣を振り下ろすカルロ
ス。
 「フッ、愚かな。」
 不敵な笑みを浮かべたラスは、両手をすばやく横に動かした。その途端、
 「う、うわああっ!!」
 空中にジャンプしていたカルロスの両肘と踵から鮮血が飛び散った。ラスの放ったカマ
イタチが、カルロスの両肘の筋とアキレス腱を切断したのだった。バランスを崩し床に落
ちるカルロス。
 「へ、陛下っ、陛下ああ!!」
 フィオーネの悲痛な叫びが辺りに響いた。


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