淫汁の白鳥(第1話)1
愛川莉菜。 18歳にして国際コンクールで入賞した、若手バレリーナ。 地方の小さなバレエスクールの出身ではあるが。その限りない才能は計り知れない。 なによりもその美貌が人気の秘密だろう。 彼女は今日凱旋公演を行っていた。地方の小さなホールではあったが、出身スクールと しては破格の公演であった。 莉菜は白鳥を踊った。多くの観客が彼女の踊りに熱い視線を送った。しかし、その中に おぞましい欲望の視線を放っている者がいることなど知る由もなかった。
莉菜は公演が終わった後、専属にあつらえられた更衣室でたたずんでいた。 公演の熱気と、踊り終えた後の疲労感に火照ったからだをいたわるように。 否、心身ともに、白鳥になりきったプリマドンナとしての自分を姿見で眺めながら、一種の 陶酔感に浸りきっていたという方がいいのかもしれない。 バレリーナとして最も幸福な時を過ごしていたのだ。 しかし、その幸福な時は、どす黒い、卑猥な陰謀に打ち消されようとしていた。 突然の乱入者に後ろから襲われた。チュチュのスカートを捲り上げられ、純白のタイツに包まれた 下半身があらわになる。 「だ、だれ・・・・」 しかし、大声を上げることはできなかった。 睡眠薬をかがされ、莉菜は気を失っていった。 『誘拐』その言葉が一瞬頭をよぎった。そして、その言葉の意味も。 しかし、意識は薄れていった。 白鳥の姿のままに・・・・。