王女戴姦 第10話

隠者


  シュレイへの拷問が本格的になろうとする頃。
内大臣ネスビル邸から戻った王妃デルフィナは自室に入ろうとした瞬間、国王
であり夫であるガザンに呼び止められた。
「どこへいっていたのだ!」
デルフィナの目が驚きで大きく見開かれる。さきほど、ネスビルの浣腸で腸内
に注ぎ込まれた液体は腹の中でごろごろとしている。一刻も早くトイレに行き
たかった。
「あ、兄とお酒を飲んでいらしたのでは?」
「もう終わったわ!!」
ガザンは酔っていた。ふらふらとした足取りで、デルフィナの方へと歩み寄っ
てきた。
「ん?どこへいっていたのだ。今宵は久しぶりにそなたを抱きたい」
酒臭い息。これだけ酔っていればおそらくモノは立たないだろう。とはいって
も裸にはならなくては疑問に思われる。だが、デルフィナの背中にはネスビル
の鞭の痕が残っている。加えてデルフィナの腹を襲うぎりぎりと刺し込むよう
な痛み。一刻も早くガザンから逃れなくてはならない。
「あ、あの。月のモノが…」
「なにぃ?生理だとぉ。いいではないか久しぶりに」
デルフィナは過去に血塗れになりながら、ガザンとした事が何度かあった。そ
の時の異常なガザンの異常な興奮を思い出しデルフィナは失言だと思った。
「さ、お前の部屋に行こう。今宵は寝かさないぞ」
「でも、お腹が痛くて…」
それは事実だった。もう限界寸前だ。そんな事もお構いなしにガザンはデルフ
ィナの身体を抱き寄せようと手を伸ばしてきた。
「駄目なんですっ!!」
デルフィナは思わず、ガザンを突き飛ばしてしまった。よろめきながらガザン
の目が座ってきたことに、デルフィナは危険を感じたがもう遅い。
「この女め!よくもワシを突き飛ばしたな!!」
ガザンは猛然とデルフィナに突撃した。デルフィナははずみで床の上に転がさ
れる。
「腹が痛いだと?!ここか?ここが痛いのか?」
酔った所為もあるだろうが、ガザンの怒りは凄まじかった。元々「アリゾンの
鷹」と恐れられた軍人である。プライドが高い上に短気で、こうなると手が付
けられなかった。ガザンは体重をかけ、デルフィナの上に馬乗りになると、握
り拳でぐりぐりとデルフィナの腹を押す。
「いたっ…や、やめて…」
か細く情けない声だった。もう腸内は爆破しそうだ。苦悶するデルフィナの表
情にガザンは一層興奮した様子で、下腹部を覆うデルフィナの衣装を破る。
「なんじゃ!?生理など、どこにも血が付いてないぞ!?」
「このうそつきめ!!」
そういいながらガザンはぱんぱんに膨れたデルフィナの下腹部を今度は足蹴に
した。
「抱かれたくない理由でもあるのか!?どうなんだ!?えっ!?」
酔った上とはいえ、王妃の腹を蹴り飛ばすなど蛮行に近かった。デルフィナは
腹を抱え丸まり、うめき声を上げなら、ガザンの暴挙に耐えている。

「お父様!!何をしてるの!?」
ガザンの脚がピタリと止まる。ガザンの怒声を聞き、隣室のリリアが目を覚ま
したのだった。リリアはお腹を抱えて床にうずくまる義母デルフィナの姿をみ
るや、駆け寄った。
「大丈夫?お義母様」
「あぁ…デルフィナ…」
デルフィナの優麗な顔は蒼白で、苦悶の表情が浮かんでいる。額には汗が滲ん
でおり、その様子が尋常じゃないことはリリアにも一目で分った。

  と、その時だった。デルフィナの尻からカエルをひねりつぶしたような、醜
い音が漏れ出し、宮廷内の廊下に響きわたった。
「ぁぁぁぁあぁっっいやいやいやいやぁぁぁっっっ!!」
もう止まらなかった。リリアの姿で気が緩んだのが不味かった。デルフィナは
自らの尻を懸命に押さえ、溢れ出す液体をとどめようとするが、汚物はデルフ
ィナの手やドレスをその独特の色合いに染めていく。辺りには鼻が曲がりそう
な汚物臭が漂い、リリアは思わず、ナイトガウンの袖で顔を覆った。
「お、おまえ、一体、何をしてきたぁぁ!!」
ガザンはデルフィナのもっとも汚れた場所から溢れ出す量が単にお腹を壊した
程度ではないことに気が付いた。人為的な作業がなければ、こうも見事に大量
の汚物を撒き散らすはずがない。
「…い、いやいやぁ」
「いえっ!!どこで何をしてきたっ!!」
ガザンの目は正気に戻っていたが、怒りにみちみちている。
「お父様!あとにして!このままじゃお継母様が可哀相よ!」
廊下で汚物に塗れるデルフィナの惨めさを思ってのリリアが叫ぶ。
「うるさい!これは夫婦の問題だ!いえっ!デルフィナ!」
しかし、デルフィナは泣きながら、ただいやいやと首を振るばかりであった。
「お父様!早く着替えさせてあげて!」
リリアの目にも自然に涙があふれてきた。美しく気品に満ちたデルフィナが汚
れる光景などみたくもない。
「いえっ!いってくれぇ…デルフィナ…お前…どこで何してきたんだよう…」
ガザンはへなへなとその場にへたりこむ。アリゾンの鷹の目にも涙が光ってい
る。
「い、今はとにかく綺麗にしてあげよ…」
そういいながらリリアがデルフィナの手を引き、王妃の寝室へと半ば強引に引
き込んだ。
「…デルフィナ…」
ガザンはその場でしばらく、悲嘆にくれていた。

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