鞭と髑髏
Peitsche und Totenkopf /隷姫姦禁指令
Female Trouble
第6章・暗黒の隘路(上) Der schmale Weg der Schwaerzung(2)
ラナがいきなりクラリスの脱出をはかろうとしたのは、無論のこと、クラリスの命を救
いたかったからだった。昨夜のような責めがこれからも日々エスカレートしたなら、ヘル
ガ少佐は果たしてどんなことを求めてくるのか。その底知れぬ欲望の果てに、幼い少女は
破滅を予感してしまった。
このままでは、姫さまには確実に死が待ち受ける…。
その危機感がラナに決意を迫ったことは、間違いなかった。
だが、ラナ自身もよく自覚できていなかったことがあった。
あのように非人間的な責めを加えられ、命さえ失いかけたラナだったが、本心からご主
人様であるヘルガ少佐を見限ったわけでもなかった。今でも、ヘルガに調教された時を思
い出せば、身体が熱くなってくる自分がいた。
そのヘルガが、実は自分など眼中にはなく、その心はこのクラリス姫だけに占められて
いることも感じとっていた。
嫉妬ではない。自分が嫉妬するほどの存在ではないことはわかっている。ただ、せっか
くの掌中の玉を手に入れた主人が、ふさわしい賞翫の仕方を見失い、ただ傷つけ砕いてし
まおうとしているのは見ていられなかったのだ。
ラナにとっても、クラリスは宝石なのだから。
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