バラステア戦記

第十六話

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バレステア軍の副将・バランは別働隊を率いてアイルランガ王宮へ入った。クーデターを
起こして新たに王となったゼルがそれを出迎えた。
「バラン様、遠征ご苦労様です」
「おう、貴様が新しい王か。まあせいぜいカルノア様に忠誠を誓うことだ。ソード・ロッ
クのやつらも今頃クレファーにやられちまってる頃だぜ」
(ざまあみろアリアめ。これで完全にこの国は俺のものだ)
ゼルはほくそ笑んだ。
「ところで陛下所望の絶世の美姉妹はどこにいる」
「はい、捕らえて別室に控えさせております。ご覧になりますか?」
「おう、是非見たいものだ」
ゼルはリンスとリリーを閉じこめてある部屋へバランを案内した。妹のリリーは完全に脅
えてしまっているが姉のリンスは毅然とした態度でバラン達に対応した。
「あなたは誰です」
「ほう・・・・これが噂のアイルランガの美姉妹か」
バランは二人のあまりの美しさに一瞬怯んだ。それは今までに見たことのない輝きであっ
た。こんなに美しい女がいるものなのか・・・・そしてこの女達はこの後皇帝カルノアの
思うがままに陵辱されるのだろう。バランは一瞬、皇帝カルノアに刃向かってでもこの美
しい姉妹を自分のものにしてしまおうかと考えた。・・・だがそんなことができるはずも
ない。
「わしはバラステアの将軍・バランだ。おまえたちをバラステア皇帝の元へ連行する。自
害は許さぬ。もし自害をしたらアイルランガの国民はみな殺しに合うであろう。おまえた
ちは皇帝の女となるのだ」
「なんと卑劣な・・・私たちは捕らわれようとも心まではゆずりません。このような悪を
行うバラステアの皇帝にはきっと天罰がくだることでしょう」
「ふん・・・生意気な女だ。いくら美しい姫でも陛下の元へ行けばすぐにひいひい言って
泣きながら男を求めるようになる。・・・・出発は明日だ、今日中に荷支度をしておくん
だな」
バランはそう言うと部屋を後にした。
「そういうわけだ。この王宮も今日で最後というわけだ。本当ならこのわしがおまえたち
の体をいただくところだが相手がバラステア皇帝では仕方がないわい」
「ゼル・・・・あなたの事は決して許しません。地獄へ落ちなさい」
「そう言えばおまえたちの母君のマリーはわしの妻となったぞ。あの女の体は最高だ。ま
ったく淫乱な女でな、毎晩わしに犯られてイキっぱなしじゃ」
ゼルも笑いながら部屋を後にした。リンスは強がったが、あまりの悔しさに涙が止まらな
かった。大好きな父は殺され、優しかった母はゼルに汚されてしまった。
(リュウ・・・・)
リンスはリュウを想った。無事でいるのであろうか。ソードロック要塞ではきっと激しい
戦いが続いているのであろう。
(リュウ・・・どうかあなただけは無事でいてください。そして私のことはどうか忘れて
ください・・・・)
自害も許されぬ身のリンスはもはや運命に身を任せるのみであった。あまりに美しく、あ
まりに寂しいリンスの涙であった。


ソードロックでは激しい戦いが続いていた。奇襲に失敗し、主力を失ったアイルランガ軍
は、わずかに残った兵で必死の抵抗を続けた。
「みんな頑張れ!戦はまだまだこれからだ!」
スーチェンも獅子奮迅の働きを見せるが、バラステア軍は容赦なく昼夜攻撃を続けた。
救護班として部隊に参加しているルルは寝る間も無く負傷兵の治療にあたった。癒しの魔
法で傷を直していくが、ルルの魔法力も限界が近い。

奇襲攻撃の失敗から数日後、アリアとリュウが命からがら要塞へ帰還した。
「将軍!よくご無事で・・・・!」
「心配をかけた。だがもう大丈夫だ。私が帰ったからにはバラステア兵などここには寄せ
付けぬぞ」
大将軍・アリアの帰還でソード・ロックに籠城するアイルランガ軍の志気は一気に高まっ
た。
「リュウ・・・おまえもよく無事だったな」
「ああ。俺はバラステアを倒すまでは絶対に死ねぬ。あの敵将・クレファーは俺が倒す」
だがリュウには気がかりがあった。アリアのことである。要塞に帰還してからアリアは今
までのように剛勇をもって敵をなぎ倒していた。アイルランガの兵もアリアのことを慕っ
ている。・・・だが一日に一度、決まってアリアは例の発作を起こすのだった。
「・・・・・リュウ、来てくれ・・・・・!」
「将軍・・・・」
発作がはじまるとアリアはリュウを呼び、自室に入って淫らな自分を慰めさせた。どんな
に激戦のさなかでも発作がはじまるとそれどころではないのである。理性を失い、一匹の
雌となって雄を求める。リュウはアリアに机に手をつかせ、後ろから激しく攻め立てた。
「あああ・・・いいいいい・・・・リュウ・・・もっと・・・もっと激しく・・・・」
アリアの部屋に男女が交わる淫らな音が響きわたる。クレファーに妙な魔法をかけられた
為をはいえ、アリアの淫らな姿にリュウは興奮をかくせなかった。美しく可憐な女将・ア
リアが淫らに男を求めて秘部を濡らす・・・。リュウは後ろからアリアを突きながら豊か
な乳房と剥き出しのクリトリスを同時に攻め立てる。・・・そしてリュウがアリアの中に
精を放ち、アリアがぴくぴくと痙攣しながら2度ほど絶頂をむかえると発作はおさまるの
である。

「そうか・・・落ちたか」
クレファーの元へバランからの報告が届いていた。アイルランガ王宮は陥落し、王は殺害
された。カルノアの求める美姉妹は捕らえて監禁しているとのことである。
「お遊びもこれくらいにするか」
クレファーは騎馬へ跨ると陣を出てソード・ロックへ向かった。そして抵抗をつづけるア
イルランガ軍へ呼びかけた。
「アイルランガ王宮は我らの手に落ちた!おまえたちの王はもはやこの世にはいない!こ
こで抵抗しても時間の無駄だ!素直に投降すれば命までは取ることはない!」
(何だと!?)
(まさか・・・・!)
ソード・ロックのアイルランガ軍の中に動揺が広まる。王宮が落ちたとはどういうことか。
「騙されるな!王宮へは我らも別働隊を派遣してある!奴の言うことなど信じてはならん!
」
アリアが兵の動揺をおさえようとするが疲労しきった兵たちは絶望の表情を浮かべている。
「信じずとも良い!それならば地獄よりの使者をここへ召還するまでだ!」
クレファーは暗黒の剣を天にかかげ、短い呪文を唱えた。空は突然黒い雲に覆われ渦をま
くように流れている。雷鳴が鳴り響き、やがて恐ろしい魔物の鳴き声が戦場にこだました。
「地獄の使者、ブラック・ドラゴン!あわれなアイルランガ兵たちを地獄の火炎で焼き尽
くすのだ!」
「・・・・な・・・・!!!」
魂をとられるほどの恐怖の咆哮と共に巨大な暗黒竜がアリア達の前に姿を現した。



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