ネイロスの3戦姫


第7話その.3 エリアス地獄からの脱出  

 同時刻、ダルゴネオスの宮殿近くに設置された黒獣兵団のキャンプ地では、スタン副団
長率いるネイロス攻略部隊がデトレイド民兵軍に攻撃されている事など知らない兵達が、
惰眠を貪っていた。
 「ふあ〜あ・・・暇だな・・・俺も攻略部隊に参加すればよかったぜ。」
 残留組の兵は、あくびをしながら暇を持て余している。
 黒獣兵団の3分の2が攻略部隊として参加しており、残っている兵はダルゴネオスの宮
殿を警備する役目を担っていた。
 無論、警備などは形だけのものであり、今現在の時点ではダルゴネオスの宮殿を襲って
くる輩などいない。
 居残っている兵全体が士気散漫しており、強姦目的で捕らえているエリアスを見張って
いる兵も居眠りをしていた。
 「逃げるのは今しかないわね・・・」
 牢獄である小屋から外の状況を見ていたエリアスは、今こそ脱出のチャンスと判断した。
 だが、彼女が囚われている小屋には厳重な施錠が成されているため、そのまま脱出する
事は出来ない。
 早く逃げ出さねば、ネイロス攻略を終えた兵達が、我先に彼女を犯しにくるであろう。
それに・・・同じ様に囚われている妹達や、彼女等を助ける為に宮殿に潜伏しているライ
オネットとアルバートの事も気がかりだ。
 「みんな無事かしら・・・」
 エリアスは思案にくれていた。
 とにかく、今は自分の自由を確保する事が先決だ。
 「あ〜あ・・・よく寝た・・・」
 扉の向こうで、見張りの兵が伸びをしながら起きあがった。
 「よし・・・」
 意を決したエリアスは、わざと見張りの兵に聞こえる様に甘い声を発した。
 「あン・・・そこの兵隊さん・・・こっちに来てくれないかしら・・・」
 エリアスの声を聞いた兵は、眠い目を擦りながら小屋の中をうかがった。
 「どうしたんだ?」
 「んん・・・おねがい・・・こっちに来てよ・・・遊びましょうよ・・・」
 手招きするエリアス。その姿を見ていた兵は、ゴクリと唾を飲んだ。
 「へへ、何かと思えば、体が疼いて困ってンのかい?」
 切なそうに声をあげるエリアスに兵は、いやらしく笑った。
 「そうなの・・・もう我慢できないのよ・・・はやくぅ、来てよ。」
 体をくねらせ、兵を挑発する。
 「判ったぜ。他に・・・ジャマする奴はいねえな。」
 周囲を見まわしながら懐からカギを取り出した兵は、小屋の扉を開けて中に入った。
 「えへヘ、慰めてやるよ。」
 ズボンを下ろし、怒張したイチモツをさらけ出してエリアスに近寄った。
 「ここがね・・・疼くの・・・早く舐めてちょうだい・・・」
 足を広げ、大事な部分を弄る仕草をするエリアス。
 「よしよし、気持ちよくしてやるぜ。」
 エリアスの足を掴んだ兵は、金髪に覆われた秘部に顔をうずめた。
 「あン・・・もっとやさしくぅ・・・」
 「へへ、この淫乱女神様がよ、もう濡れてるじゃねーか・・・ん?鎖が外れてる・・・」
 兵はエリアスの足を拘束している鎖が外れている事に気が付いた。その瞬間、悶えるよ
うな顔をしていたエリアスの目が鋭く光った。
 「えいっ!!」
 開かれていた太ももが閉じられ、兵の顔が太ももに挟まれた。
 「うぶ!?」
 「ひっかかたわねっ。」
 エリアスは素早く体を反転させる。そして仰向けに転がされた兵の上に馬乗りになった。
 「誰が淫乱女神ですって!?、このドスケベめっ!!」
 マウントポジションを取ったエリアスは、満身の力を込めて兵の顔面を殴打した。
 「んげっ、痛てっ、あぎっ、気持ちいい・・・ぐげっ、いでっ!!」
 太ももで顔を挟まれたまま、兵は苦痛と快楽に翻弄される。
 「このっ、この・・・」
 ゲンコツの連打を浴びせ、とどめとばかりに太ももで兵の首をギリギリ締め上げた。
 「むぐぐ・・・あう〜、天国が見えるぅ、んぎゅう・・・」
 白目を向いた兵は、至上の悦びに包まれて悶絶した。
 「ふん・・・気持ちよかったわよ、最高にねっ。」
 エリアスは、(しあわせそうな顔で)伸びている兵に蹴りをお見舞いした。
 エリアスの両手足を束縛していた手錠と足枷は、ライオネットにもらった鉄製のヤスリ
によって壊されていた。
 ようやく自由を手に入れたエリアスは、兵の持っていた警棒を奪って扉に目を向けた。
 「なんだあ?扉が開いてるぞ。」
 「見張りはどうしたんだ。」
 外から他の兵達の声が響く。
 「あの野郎・・・見張りサボってエリアスと遊んでやがるな。」
 文句を言いながら小屋の中に入ってきた兵は、床に伸びている見張りの姿を見て仰天し
た。
 「う・・・エリアスはどうしたんだ。」
 小屋の中を見まわすが、肝心のエリアスはいない。
 「逃げやがった、がっ!?」
 呟く兵の後頭部に、警棒の一撃が炸裂した。
 「おい、どうし、ぐぎっ。」
 後から部屋に入ってきた兵の鼻柱にも、警棒が叩き付けられる。
 物陰に隠れていたエリアスは、速やかに兵達を倒すと小屋から飛び出した。
 「早く妹達の所に行かなくては・・・あ。」
 外に出たエリアスは、自分が全裸である事を思いだし、慌てて小屋に戻ろうとした。し
かし・・・
 「おいっ、エリアスが逃げてるぞっ!!」
 小屋の脇にいた兵がエリアスを見つけて喚いた。
 周囲から声を聞きつけた兵達がワラワラと出現する。
 「しまった・・・」
 エリアスは声を詰まらせた。普段冷静な彼女らしからぬ失態だった。
 もっと隠密に行動すべきだったが、妹達を助けようと焦る余り、安直に行動を起こした
事を悔やんだが、すでに遅かった。
 「このアマ・・・逃げられると思うなよっ!?」
 エリアスを取り囲んだ兵達が一斉に襲いかかってきた。
 「でああっ!!」
 警棒を振り回し、数人の兵を薙ぎ倒すエリアス。
 「お、お〜いっ、え、エリアスが逃げたぞーっ。」
 倒された兵の1人が、声を振り絞って叫んだ。その声に呼応するかの如く、新手の兵が
駆け付ける。
 「くっ・・・」
 唇を噛み締めたエリアスは、警棒を手に全裸のまま逃げて行った。
 「追えーっ、逃がすんじゃねーぞっ!!」
 怒声を上げて迫る兵達。
 「ハアハア・・・もうダメ・・・」
 連日連夜、兵達の慰み者にされていたエリアスは疲労が著しく、先程戦った時点で体力
は底をついていた。息は荒くなり、足元はふらつく。おまけに素足なので足の裏が酷く痛
む。
 そして、エリアスはついに食料倉庫の手前で兵達に追いつかれてしまった。
 「さあ、観念しな子猫ちゃん。」
 「うう。」
 逃げ場の無い裸のエリアスに、陰湿な目付きで迫る兵達。
 「・・・エスメラルダ・・・ルナ・・・」
 エリアスが妹達の名を口にしたそのとき、
 「グオ〜ンッ!!」
 背後の倉庫の屋根から白い狼が飛来し、兵達に飛びかかった。
 「ぎゃっ!?」
 「なんだこいつ・・・のわっ。」
 突然の事に兵達は混乱した。
 「あ、アルバートッ!!」
 エリアスは喜びの声を上げた。彼女の窮地を救ったのはアルバートだったのだ。
 「グワオンッ。」
 武器を持った兵達相手に奮戦する白き狼。
 「アルバート、避けなさいっ。」
 エリアスの声にアルバートは、すぐさま横に飛びのく。そして兵達の顔目掛け、エリア
スは小麦粉の入った袋を投げつけた。
 「ぶわっ!?ゴホゴホ・・・」
 白い粉が四散し、兵達は視界を失って咳き込んだ。
 「いまよ、逃げましょうっ。」
 「グオンッ。」
 エリアスとアルバートは速やかにその場を去っていった。
 「ゲホッ・・・くそ〜、あいつら・・・」
 真っ白になりながら、悔しそうに地団駄を踏む。
 「どこだーっ!!エリアスーっ!!」
 激怒した兵達は、逃げたエリアス達を追って走り回った。







次のページへ BACK 前のページへ