魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫12)
第50話 最終修練の完了。最強の技ハイパードライブ習得
原作者えのきさん
一カ月と言う時間は早々に過ぎ、ガルダーン軍の最終攻撃の日まであと僅かになった。
その時を間近にし、アリエルは最後の修練をむかえた。
修練場での特訓は一カ月間休みなく続けられ、アリエルの表情には精悍なる面持ちが宿
っていた。
魔戦姫として生まれ変わった彼女は、疲れや肉体的疲労などに苛まれぬ身体になってい
るため、休み無き修練においても、その肉体には限りない生気が満ちている。
特訓を課していたリーリアは、修行の成果を試すべくアリエルと向き合った。
「アリエル姫、この一カ月にわたる厳しい訓練によくぞ耐えましたね。後はその成果が
どれだけ習得されているかです。」
神妙な顔で佇むアリエルは、無言で頷いた。
そしてリーリアが手を翳すと、地面から黒い光が発せられ、巨大な鉄の檻が出現した。
檻の中には、いずれも凶悪な面構えの獣人が数頭閉じ込められており、唸りをあげてリ
ーリアを睨んでいる。
再びアリエルに向き直ったリーリアは、最後の修練の事をアリエルに告げた。
「修練の結果をこれで見極めます。これよりあなたは、この獣人達と戦ってもらいます
わ。よろしいですね?」
「は、はい・・・」
アリエルは固唾を飲んだ。
始めて見る凶悪な魔界の獣人ども・・・この強そうな奴らを相手に、どこまで戦えるか・
・・
(人間)であった頃はとても相手にできるものではなかったが、今のアリエルは無敵の
魔戦姫。必ず勝利できるはず。
後は彼女の度胸次第だ。
リーリアが指をパチンと鳴らすと、強固な鉄の檻が消滅した。
解放された獣人どもが、すさまじい憎悪を込めて牙を剥く。そして自分達を束縛したリ
ーリアめがけて飛び掛かってきた。
「グァオオンッ!!」
残虐な殺気が迫る!!
しかしリーリアは微動だにせず獣人どもを睨んだ。
「誰が今襲ってこいと命じましたかっ!?」
その一喝で獣人どもの動きを一瞬にして封じる。まさに落雷に撃たれたが如く、獣人ど
もは怯えたじろいだ。
見た目、獣人どもより矮小なはずのリーリアに、凶悪な獣人どもは尾を巻いて怯えてい
るのだ。それほどまでに、リーリアの存在は強大であると言える。
鉄の檻より強固な(恐怖の呪縛)を施したリーリアは、微笑みを浮かべてアリエルに向
き直る。
「では、見事獣人達を滅殺し、修練の成果を見せなさい。」
その瞬間、獣人達の殺意はリーリアからアリエルに向けられた。
「ガァアアアオオオ〜ッ!!!!!」
雄叫びをあげ獣人どもが襲いくるっ!!
そして意識すらも超越した反応でアリエルは動いた。
「ハイパードライブッ!!」
その刹那、アリエルの身体が消え去り、幾千もの残像を残して後方に立つ。
勝負は瞬間に決まった。
「グォロ?グギャアアアーッ!!」
絶叫が響き、獣人どもは粉みじんになって四散した。
瞬間移動能力によって多数に分身し、獣人達を切り刻んだのだ。
その攻撃は閃光の如く・・・まさに無敵の者しか成し得ない所業であった・・・
獣人達の断末魔を背に聞き、数秒間身動きしなかったアリエル。
彼女は、自分の成し得た戦いの成果を驚愕と共に知り得た。
「わ、わたし・・・獣人達を倒せたの・・・?」
余りにも超高速で、そして余りにも圧倒的な自身の力・・・
自分は(最強の戦士)に生まれ変わったのだと知った。
沸き上がるは歓喜の津波・・・底知れぬパワーを目の当たりにし、全身を喜びに震わせ
た。
「り、リーリアさまっ。わ、私・・・やりましたわっ!!」
無敵の最強者となった喜びをリーリアに告げる。そしてリーリアは満足そうに頷いた。
「見事ですわアリエル姫。あなたは今、最強の魔戦姫としての力を得たのですわ。」
祝福の拍手と、そして抱擁がアリエルに手向けられる。
それにアリエルも歓喜にて答えた。
「ありがとうございますリーリアさまっ。私は今・・・最高に感激しておりますわっ!!
」
溢れる涙が頬を伝う。そんな激情をリーリアは制し、アリエルが成すべき事を諭した。
「あなたの本当の戦いはこれからです。この力で、祖国を救うのです、良いですね?」
「はいっ・・・」
喜びの激情は静かなる決意に変わり、戦いの情熱へと移行する。
そしてリーリアは、最強者になり得た者の洗礼を促す。
「力の他にもうひとつ、あなたに授けねばならない事があります。私についていらっし
ゃい。」
授けねばならない事・・・アリエルは戸惑ったが、それを心に隠し、リーリアの後に従
った・・・
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