魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫4)


  第8話 レッカードの憂鬱
原作者えのきさん

 拷問室に連れ込まれたレッカードは、早速2人に袋叩きにされている。
 欲求不満になっていたガルア達は、ここぞとばかりにフラストレーションを発散させて
いた。
 「おらおらっ、話ってなんだよっ!?こちとら気が立ってンだっ。さっさと言いやがれ
〜っ!!」
 「早く言わないと罪人どもと一緒にネンネさせたげるわよっ。」
 顔中青アザだらけになっているレッカードが、鼻血を出して呻いている。
 「だ、だ、だから今言うって・・・の、ノクターン軍をゲバルドのアホが壊滅させて・・
・でもって・・・俺がフォルテを攻略して、その〜、ふんぎゃっ!?」
 いきなりガラシャがレッカードの頭を踏みつける。
 「あんたの自慢話なんざ聞きたくないよっ!!用件を言いなっ、用件をっ。」
 「は、はひ〜。ぢ、ヂツはその〜、マリシア王妃とアリエル姫を捕らえたから、あ、ア
リエル姫を凌辱する適任者を連れてこいって帝様が・・・」
 アリエル・・・その名前を聞いた途端、ガルア達は目を輝かせた。
 「おいコラッ、今アリエルを捕らえたって言ったよな?本当かっ!?」
 「アリエルを凌辱する適任者って私達の事よね!?そーよねっ!?」
 「そ、そ、そーれふ。そのとおりッス、うをっ?」
 レッカードを床に投げ出し、狂喜乱舞するガルアとガラシャ。
 「わ〜はははっ!!ザマーみろアリエルッ。とうとう借りを返せる時が来たぜっ!!」
 「そうねっ、これであいつを痛めつける事ができる・・・このムチでズタズタにしてや
るわよ〜っ!!」
 大喜びするガルアは、床に伸びているレッカードに訪ねた。
 「ところでよ、俺達がアリエルを凌辱する見返りってのはあるんだろーな?」
 「み、見返り?そんな話は聞いてないけど・・・ひえっ。」
 鉄の爪がレッカードの眼前でキラリと光る。
 「だったらおめえが帝様に進言するんだ。帝様が御満足する凌辱を見せるから、俺達を
将軍職に復帰させてくれってな。」
 「な、なんれ俺が言わなきゃならないンだよお〜。」
 「言われた通りにすりゃあいいんだよボケがっ!!」
 さらに鉄拳一発。
 こうしてガルア達は、アリエル凌辱の適任者となったのであった。
 
 拷問室の前では、レッカードの手下が心配そうに待っている。
 「大丈夫かな〜。急に静かになったし、まさか・・・本当に殺されちゃったんでわ・・・
」
 すると、ギィィ〜と鉄の扉が開き、ガルアにネコのように釣り上げられたレッカードが
拷問室から出てきた。
 「将軍、大丈夫ですかあ?」
 「あうう〜、大丈夫じゃねえええ。」
 風船のように腫れた、青アザだらけの顔のレッカードはボロボロ状態で、(大丈夫)と
か言う以前の問題だった。
 そして、やたら機嫌の良い口調でレッカードの肩を叩く。
 「がっはっはっ。なあ、レッカード大将軍殿。俺達が将軍職に復帰したら、前みてえに
仲良くやりましょうぜ?わっはっはっ。」
 「こ、こんな生活、もういやだ〜。ひとおもいに殺してくれーっ。」(涙)
 そんな悲惨なレッカードを、部下は哀れな顔で合掌した。
 「ご、御愁傷さまです〜。」
 
 そしてガルア達に引っ張られたレッカードは、適任者を選んだ事を報告するため、グリ
ードルの自室に訪れた。
 自室の前には、参謀のズィルクが立っている。
 「おお、随分と派手にやられたな。交渉はうまくいったと見えるが・・・」
 嫌味ったらしく訪ねるズィルクを、ボロボロの顔で睨むレッカード。
 「あ、あんたなあ〜っ、俺がこうなるのを知っててガルアさん達を推薦したなっ!?」
 「あン?なんの話だ?わしはあの2人が良い人材だとしか言っておらんぞ、連れてこい
と言った覚えはない。」
 「くぉのクソジジィ〜ッ。」
 悔しがるレッカードの後ろから、ガルアとガラシャが現れる。
 「久しぶりだなズィルクさん、やっぱりあんたが俺達を選んでくれたのか。」
 「うむ、お主達しかアリエルの凌辱に適した者はおらんからな。帝様がお待ちかねだぞ、
早く行くが良い。」
 「すまないわね、感謝するよ。」
 ニッと笑いあうガルア達。
 部屋に入るガルア達の後ろから、レッカードがヨロヨロと続く。
 そして、贅を尽くして飾られた自室の中では、グリードルが玉座に腰掛けてガルア達を
迎えた。
 「良く来たなガルアにガラシャ。話は聞いてると思うが・・・アリエルを地獄に堕とす
役目、存分に果たすが良い。」
 「ははっ、必ずや帝様の御満足なされる凌辱で、アリエルを地獄に堕としてみせましょ
うっ。」
 一礼して述べるガルア達に、グリードルは満足げだ。
 「先の戦いでお前達が負けた時、俺は死刑を宣告したが・・・俺とした事が、それは間
違いだったな。今更ながら、ズィルクの配慮に感謝せねばなるまいて。」
 敗北者の背任を与えた暴君に、ガルア達はためらいもなく頭を下げている。
 両者の心には、宿敵アリエルを辱め、奈落に叩き落とすと言う共通の感情だけが燃え上
がっていた。故に、過去の経緯など問題外なのだ。
 そんなグリードルとガルア達の成り行きを、ソワソワしながらレッカードは見ている。
 優柔不断なレッカードは、ガルアとガラシャに睨まれた。
 「あ、あの〜帝様。ガルア、さんとガラシャさんはその〜、今回の凌辱で帝様を御満足
させる事ができたら、将軍職に復帰させてもらいたいと言ってまして・・・その・・・」
 その言葉に、グリードルは喜んで答える。
 「おお、いいともっ。ガルアにガラシャ、お前達が俺を満足させてくれたら、将軍職の
復帰などとケチな事は言わん。元帥の地位を授けてやるぞ。」
 グリードルの返答に、目が点になるレッカード。
 「へっ?適任者を連れてきたら、俺を元帥にしてくれるはずじゃ・・・んわっ!?」
 戸惑うレッカードを突き飛ばしたガルア達は、喜々とした声で平伏する。
 「ありがとうございますっ!!帝様っ!!」
 「フハハッ、今日の俺は最高に機嫌が良い。マリシアを捕らえる事もできたしな。前祝
いだ、酒を飲ませてやるぞ。」
 ガルア達に酒を振舞うグリードル。
 その光栄なる宴に、レッカードが加えてもらえる事はなかった。完全に無視され、蚊帳
の外に放り出されている。
 「あの・・・帝さま・・・俺を元帥にしてくれるって約束は・・・」
 虚しい言葉がレッカードの口から漏れる。しかし、その言葉は誰の耳にも入らない。
 ガルア達を推薦した手柄もズィルクに横取りされるだろうし、将軍の地位も、いずれガ
ルア達に奪われ元の主従関係に逆戻りだ。
 これでレッカードの元帥昇格の夢は、永遠に閉ざされた。
 いや・・・彼の全てが崩壊したのだ・・・
 呆然とするレッカードを、ハエのように追い払うグリードル。
 「何見てるんだ?お前に用はない、さっさと失せろ。」
 「・・・失礼します・・・」
 力なく呟いたレッカードは、入り口でニヤニヤ笑っているズィルクを横目に、自身の敗
北を背負って出て行った。
 
 1人孤独に歩くレッカードは、ノクターンの後継者であるアリエルの首を取るための準
備しているゲバルドと手下達を見た。
 哀愁漂うライバルを、ゲバルドは嘲笑する。
 「よう、なに腐った面してんだよレッカード。てめえより先に手柄をたてて、必ず元帥
になってやるからな〜っ。その時はてめえを俺の家来にしてやってもいいぜ?ぎゃはは〜
っ!!」
 自分をバカにする下賤なゲバルドを、ジロリと睨むレッカード。
 「・・・元帥の地位だ?そんなもん、貴様にくれてやるよ・・・」
 もはや、今のレッカードに地位も名誉もなかった。
 自分はただの捨て駒であった事を思い知らされ、敗北感を憎しみに変え、ガルダーンの
城を見据えた。
 「・・・俺がフォルテを潰したのに、アルタクスとマリシアを捕らえたのに・・・バカ
にしやがってっ!!見てろよ、帝もガルア達も・・・俺は、いつか必ずお前達を土下座さ
せてやるっ!!ガルダーンもノクターンも、全て俺が手にしてやる〜っ!!」
 自分を蔑ろにした連中への怒りと、自身の脆弱さへの歯痒さを呪い、彼はガルダーンを
去った・・・
 今は脆弱な存在かもしれない・・・だが、彼はずっと後に再起する事になる。成長した
マリエル王子を脅かす存在として・・・


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