魔戦姫伝説(ミスティーア・炎の魔戦姫)第一話4
闇の正義、魔戦姫現る!!
ムーンライズ
部屋に残されたミスティーア達は、1時間近く手下達から蹂躙された。
ガスターク達に責められたのと同様、激しく、そして狂おしく責めたてられ、3人はサ
ディスティックな仕打ちで全身傷だらけになっている。
やがて、1人の手下が、ミスティーアから離れて床に座り込んだ。略奪行為や陵辱行為
で疲れているのか、少しだるそうにしている。
「あー、疲れた・・・」
「なんだよ、もうお疲れモードかい?体力ねえな。」
「うっせえ、俺はデリケートなんだよ。」
仲間に中傷され、床に座っている手下はうっとうしそうにボヤく。
「後はヨロシクやってくれ、俺は寝るぜ。」
そう言いながら手下は床で眠り始めた。
まだ疲れていない他の手下達は、ひたすら強姦に励んでいる。強姦に夢中になっている
彼等は、部屋の天井に暗い影が出現した事に気が付かない。
その影は・・・始めは小さな黒い影だったのが徐々に大きくなり、半径1m程になった。
そして、その影の中から人影がスッと出現し、床に降り立った。手下達の背後に立って
いるその人物は女であった。
その女性は、森色のミディドレスを着ており、床まで届く長さのリボンを腰と肩から下
げている。
身長は150p程で、左程大きな体躯ではないが、ミディドレスの下から鍛えぬかれた
肉体の躍動が感じられる屈強な女戦士である。
手下達は、出現した女がすぐ後ろにいるのに全く気付いていない。強姦に夢中になって
いるのもそうだが、闇と一体化して気配を消している彼女の存在に気付く事は出来ないの
だ。
その女の肩に付けられているリボンが、ヘビの様に鎌首をもたげて動き始めた。それは
ミスティーアを犯している手下の後ろに音も無く近寄ってくる。
「オラオラッ、もっと気持良く悶えろや。」
意識を失い、糸の切れたマリオネットのようになっているミスティーアを、夢中になっ
て犯している手下。
その手下の背後に迫ったリボンが、素早い動きで手下の体に巻き付いた。
「むぐっ!?」
手下に絡みついたリボンが手下の体を高く持ち上げた。
仲間の異変に気付いた他の2人が、強姦していたエルとアルを投げ出して飛び退いた。
「な、なんだぁ?げっ!!」
そして飛び退いた手下達にもリボンが絡みつき、3人まとめて空中に持ち上げる。
「ぐがっ・・・あぐぐ・・・」
声すら上げれぬ状態の手下達の体を、リボンがエモノを仕留める大蛇のように締め上げ
た。そして、そのリボンの淵が鋭利な刃と化し、手下達の体に食い込み始めた。
「い、いでえ・・・あ、ぐあ・・・」
手下達がいくらもがいてもリボンからは逃れられない。リボンは手下達の体を切り裂き、
バラバラになった手下の手足が床に落ちた。
「がああ・・・」
苦悶の声を残し、手下達は微塵切りになって果てた。
それを全く表情を変えずに見ている闇の女。
「障害物排除完了。」
リボンを元に戻し、女は床に倒れているミスティーアに近寄り、安否を確認する。
「ミスティーア姫、大丈夫?」
女はミスティーアに声をかけて覚醒させようとする。だがミスティーアは中々目を覚ま
さない。
何度か試しているうち、部屋の隅で寝ていた手下が女の声に目を覚ました。
「んん〜、うるせえな・・・って、げっ!?」
手下は部屋の有様を見て驚愕した。仲間が全員微塵切りになっており、その犯人であろ
う女がこっちを見ているのだ。
「あわ、あわわ・・・」
腰を抜かしている手下に、女は無表情で歩み寄ってきた。
「お前も悪党の仲間ね。」
そう言い放つや否や、手下の襟首を片手で掴んで持ち上げる女。その怪力は人間離れし
ている。
足をバタバタさせる手下を睨んだ女が口を開いた。
「答えなさい、ミスティーア姫を何回辱めたの?」
女の質問に、手下は目を白黒させて戸惑った。
「えっ?な、何の事だ?」
「何回、行為をしたのか聞いているの。」
「あ、そ、その・・・に、2回だ・・・あはは、い、言ったから助けてくれるよなあ?
ナハハ・・・」
女に仲間と同じ目に合わされると思っている手下は、命乞いする目で女を見た。
だが、女には手下を助ける気など全く無かった。
「お前、何か勘違いしてないかしら。」
「へ?」
「ミスティーア姫の痛み、思い知りなさい。」
冷たく言い放った女は、手下の顔面に強烈なパンチを2発お見舞いした。顔骨がグシャ
ッ(×2)と音を立てて砕け、顔の形が無くなった手下は床に倒れる。
「フン。」
手下に一瞥をくれ、女は再びミスティーアに歩み寄ろうとした。その時である。
先程女が出てきた影の中から、もう1人女性が出現した。
闇のように黒いドレスを身にまとい、片手には魔術師が使うようなステッキを握ってい
る。
その女性の姿は、美しさと妖艶さを兼ね備えた闇の女王といった様相である。そして、
常人ならざる風貌から醸し出される怪しいまでの美しさは、見る者を捕らえて離さない魅
力があった。
黒く艶やかな長い髪は首の後ろでまとめられ、白く整った顔には血のように紅い瞳が輝
いている、その瞳の奥には、どこか悲しげな優しさが潜んでいる。
「これはリーリア様。」
手下を始末した女が、恭しく頭を下げて一礼した。
新たに出現した女性リーリアは、部屋の中を見回して状況を確認する。そして、静かに
口を開いた。
「始末はついたのですねレシフェ。」
リーリアが頭を下げる女レシフェにそう尋ねると、レシフェはコクリと頷いた。
「はい、邪魔者は全員片付けました。しかしミスティーア姫の容態が思わしくありませ
ん。」
「そう・・・」
レシフェの言葉に、リーリアは改めてミスティーアに向き直った。そしてミスティーア
の傍らに膝をつくと、彼女の体の上でステッキをかざした。
リーリアが小さな声で呪文を唱えると、ステッキからボンヤリした光が溢れ、ミスティ
ーアを包み込む。
「さあ、目覚めなさい、哀れなる姫君よ・・・」
リーリアの声を受け、ミスティーアの固く閉じられていたまぶたが開かれた。その瞳に、
美しきリーリアの姿が映し出される。だが、その妖艶なる姿はどう見ても神や天使とは言
えなかった。
「う、うう・・・あらたふぁ、だふぇでふ?も、もひかひれ・・・あふふぁ・・・」
・・・あなたは誰です?もしかして悪魔・・・そう言おうとしていたのだが、舌がもつ
れて声にならない。媚薬の影響と強姦された苦痛のため、体を動かす事はおろか、喋る事
も間々ならない有様だ。
だが、リーリアはミスティーアが何を言いたいのか即座に理解していた。
「安心なさい、私はリーリア。貴方の味方よ。」
澄んだ声でそう告げるリーリア。
私は貴方の味方・・・それは俄かに信じがたい言葉であった。
悪魔的容姿のこの女を単純に信じていいのか?疑惑の晴れぬまま、リーリアを見つめる
ミスティーア。そんな彼女の心を察したのか、リーリアは再び語り始める。
「悪魔・・・貴方は私の事をそう思っていますね。そうですわ、私は闇の者。人は私を
悪魔と呼ぶわ。でも、真に悪魔たるのはあの悪党どもの事です。私達闇の者の生業は、闇
に身を置き、悪党から全ての罪なき者を守る事なのですよ。判ってもらえますか?」
静かに語るリーリアの言葉は、密やかにそして強くミスティーアの心に刻まれた。
「ろうひれ・・・ここひ・・・?」
「どうしてここに?と、言いたいのですね。その問いに答えましょう。私達は貴方と侍
女の悲しき声を聞いて参じたのです。私達は魔戦姫・・・闇の正義を司り悪を滅する者。
そして・・・貴方は新たなる魔戦姫として選ばれたのです。」
魔戦姫・・・それは如何なる存在なのか?闇の正義を司りし者・・・それはどういう事
なのか?闇は悪ではないのか?
様々な思考がミスティーアの頭を駆け巡った。
「今はその全てをお話する暇はありません。」
リーリアは戸惑うミスティーアを悲しみの篭った目で見ている。そして、少しだけ間を
置いて、右手をミスティーアの胸の上にかざした。
「貴方は決断しなければなりません。もし、貴方が悪党の魔の手から罪無き人々を守り
たいのであれば、ご両親やご兄弟の仇を討ちたいと願うなら・・・私の手を取りなさい。
そして我等の同士となる事を誓うのです。」
我等の同士となる事を誓う・・・それは悪魔と契約を結ぶ事に他ならない。
悪魔ことリーリアは尚も話を続ける。
「あの悪党どもをのさばらせておけば、この街の人々が、いえ、全ての罪無き人々が毒
牙にかかり果てるでしょう。でも、貴方が我等の同士となり、悪党どもを成敗すればそれ
を未然に防ぐ事が出来ます。無論・・・同士となる事については、強制は致しません。悪
党の横行を無視し、平穏無事に生き長らえるのであれば、それもいいでしょう。」
ミスティーアは究極の選択を迫られた。
悪党の横行に目を背け平穏な人生を歩むか、悪魔に魂を売り罪無き者を守るか・・・ミ
スティーアは迷った。
だが、彼女の脳裏に焼き付いたガスターク一味の悪行の数々への怒りと、無残に果てた
家族、そして愛するアドニスを奪われた悲しみが、平穏に生きたいと思う彼女の意思を凌
駕した。
そして、ミスティーアの右手が、無意識のうちにリーリアの手に向かって動いた。
「う、うぐ・・・うう・・・」
苦悶の声を上げ、力を絞って手を上げるミスティーアを、リーリアは無言で見ている。
そして・・・彼女の手は、悪魔の手を掴んだ。それは、ミスティーアが悪魔と契約を交
わした証であった。
ニッコリと微笑み、ミスティーアの手を握り返すリーリア。
「契約は成立しました。たった今より、貴方は闇の同士となったのです。」
そしてリーリアのドレスの裾が人の腕の様に動き、全裸のミスティーアを抱え上げた。
「そうだわ、あの子達も連れて行かなければ・・・」
リーリアは、気を失っているエルとアルの2人に目を向け、手をかざした。
すると、床に倒れている2人の周囲から、無数の絹糸が出現し、シュルシュルと音を立
てて2人を包んだ。絹糸が固まったその形は、蚕の繭そのものであった。
リーリアが手を反転させると、2人を包んだ2個の繭が宙に浮き、天井の影に吸い込ま
れて行った。
傍らに控えるレシフェはリーリアに一礼をし、影への行く先を促した。
「さあ、参りましょう、闇の世界へ。」
そう言ったリーリアは、影の下へと歩み寄る。そしてミスティーアを抱えたまま、影の
中へと姿を消した。その後にレシフェも続いた。
彼女等の去った後には、もの言わぬ手下達が残されるのみであった。
部屋には施錠がされており、中に入る者はいない。外にいるガスターク一味は、自分達
の天敵が出現した事になど気付かず、狂乱の宴に酔いしれていた。
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