『魔戦姫伝説』
魔戦姫伝説〜鬘物「ふぶき」より〜第1幕.11
恋思川 幹
三人の中で唯一武装を解いていなかった若葉は、取り押さえる側の僧兵達がもっとも慎
重になった相手である。
ましてや、くの一であれば、どんな武器を隠し持っているか、わかったものではなかっ
たからだ。
僧兵達は若葉がふぶきが捕まったのに気を取られた一瞬の隙をついて、薙刀の柄で若葉
の足を払った。
「く…ぅっ!?」
若葉が仰向けに倒れたところで、僧兵の一人が若葉の薙刀を蹴り飛ばし、その手を踏み
つける。他数名の僧兵もそれに習い、もう一方の手を踏みつけ、両足を踏みつける。
「こいつは着てる物を脱がすのに苦労しそうだな」
さすがのくの一もこれではどうしようもない。僧兵はそう思い、油断していた。
ふっ!
「ぐわぁっ!」
若葉が口から吹いた針が僧兵の目を刺し、刺された僧兵は身を仰け反らせた。
踏みつけられていた若葉の右手が自由になる。
右手で鎧通しを抜くと、左手を踏みつける僧兵の脛を切りつけ、上半身を起こすと脚を
踏みつけている僧兵に向かって鎧通しを投げつけた。
「ぐおっ!!」
「あぎゃっ!」
若葉は立ち上がりざまに近くに転がっていた僧兵の薙刀を手に取り、近くにいた僧兵を
切り伏せ、あるいは叩き伏せた。
「ふぶき様っ! 紅葉!」
若葉が周囲を見回す。
「……なっ!!」
しかし、若葉の見たものは、ふぶきが陵辱されている姿であった。
「……ふ、ふぶき様………」
若葉の頭の中が真っ白になって何も考えることができなくなっていた。
全身がガクガクと震え、心臓が早鐘を打ち、呼吸が荒くなる。
「安心しろ。お前もすぐに仲間に入れてやる」
僧兵の下卑た声が聞こえる。
「……!」
その声に若葉が振り向こうと首を動かした時……
「紅……葉……」
紅葉の陵辱される姿が若葉の視界に飛び込んできた。
若葉と紅葉は双子であり、その姿は瓜二つである。
陵辱される紅葉の姿は、まさにこれから陵辱される自分自身の姿に他ならなった。
「い……いやああああああぁぁぁぁぁっっ!!!」
戦意を喪失した若葉に僧兵達は飛び掛っていった。
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