愛天使ブランシェ!〜魔法少女リーゼの活躍〜

作:神光寺雅



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どこかの国どこかの小国ブランシェ。田舎の国なのに、側を流れる大河はこの国の大事な交通路。
そこにあるブランシェは、貿易の起点として栄えていました。

この国に、リーゼという一粒種のお姫様がおりました。え?いえいえ?どこかの国のお姫様のように
決して性格が破綻してる!とか、夜な夜な悪者退治と称して白タイツを履いて剣を振り回すような事はしておりません。だって、この国のお姫様は代々、古来より伝わる魔法を使えるというのですから。
この国の山間部で取れる赤い貴石は神秘の力を秘めていると言われています。
その神秘の力を使って、悪い奴らと戦うのです。

いえ?決して仲間を引き連れたり・・舞踏会で酒乱になったりはしませんから・・ご安心を。

このお話は神秘の力を引き継いだブランシェのお姫様リーゼのお話しです。

ファーストミッション:

ちゅちゅちゅ・・・

小鳥のさえずりだけが聞こえる森の中。
朝のさわやかな日差しが、木々の隙間からこぼれている。
若草が茂り初夏の面持ちを漂わせている。

かさかさかさ・・・・・

若草をかきわけて、ピンクのドレスの少女が飛び出してきた。

「いそがなきゃ!いそがなきゃ!」

まるで呪文のように繰り返して、森の奥へと入っていく。

がさがさ・・・・・

そのあとを数人の兵が追いかけてくる。
だが甲冑に身を包みんだ兵の足取りは重く、素早い少女をすぐに見失ってしまう。

「姫さま〜!そちらは危険です〜!」
「森の奥には魔物が〜!」

どうやら先ほどの少女のお付きのようである。
まるで戦にでも出向くような格好である。いったい何事だというのか??

かさかさかさ・・・・

「あった・・ここ!きっとそうよ!」

少女は森のはずれ、岩山の前で立ち止まった。そこにはぽっかりと穴が開いている。
少女は胸飾りを握りしめると洞穴を見詰めた。

それは一週間前のこと。この地方では珍しい地震が起った。幸いにして被害は少なかったのだが。
問題はそのあとからだ・・。

暗闇から魔物が現われ、夜な夜な家畜を襲い、田畑を荒らす。
ついには、堅固な城壁に囲まれた街の商店にまで入り込んでくるようになった。
魔物は土の中を進んでくるらしい。どんな城壁も、何ら阻止することは出来なかった。

それが毎晩続いたのである。毎晩の事件に、警備のものの手も追いつかない。
地中からやおら出現する敵に、なんら打つ手はなかったのだ。
活気のあった国は怯え、商店は店を閉めてしまった。

国の危機に、国王は守護巫女に魔物の正体を占ってもらうことにした。
占いの結果は恐ろしいものであった。

長き封印にあった魔物が、この度の地震で、封印が解け。暴れているのだと。

国の裏山には、古来より魔物が封印されていると伝えられた。

裏山の魔物。この国の誕生にまで話はさかのぼる。

かってこの地は、地底から現われる魔物達の住処であった。山を超えてくる人々を、川を下ってくる旅人を襲っては、喰らっていたとも伝えられる。

ある日、二人の旅人がこの地にやってきた。屈強な若者と、不思議な力を持つ巫女。二人は隣国の人々の難儀を聞き、魔物退治にやってきたのだ・・。
二人は力を合わせて魔物達を倒し、ここに住まうようになった。やがて、人々も集まり、豊かな国になっていった。
それが、この国の国王の一族であると伝えられる。

・・とまあ・・大概の国王ならこうした逸話の一つも持ち合わせているのだが。

問題は・・・。

「どんな魔物なのか、どうやって退治したのかはどこにも記録が残っていないのだ・・」

国王は巫女に嘆いた。国の成り立ちはともかく、現実に現われた魔物が国を危機に陥れようとしている。

「さよう・・ですが、巫女代々に伝わる宝珠であれば、その方法を導いてくれるやも知れませぬ・・」

守護巫女は代々伝わるという宝珠を国王に差し出した。

赤く黒ずんだ珠。そこには幾種類もの紋様が描かれている。古びた宝珠。だが、神秘の力を秘めているという。
そのときだ

「お父様!私にお任せ下さい」

澄んだ声が響いた。リーゼ姫だった。まだ幼顔の少女。巫女修行中のためだろう、ピンクの裾の短いドレスを着ている。すらっとした足が伸び、スカートの裾との間に、わずかながら素肌が覗く。
愛らしい衣装ではあるが・。その部分に目がいってしまう。

「リーゼ!お前まだ修行の身ではないか、危険すぎる」

国王は愛娘をいさめる。一粒種のリーゼになにか起ったら。そんな親心だった。

「それでは、下調べに行かせて下さい・それならば」

リーゼはすがるように国王と、守護巫女に愛らしい瞳を向ける。

その瞳に守護巫女が優しい微笑みを返した。

「わかりました。魔物の出現場所は既に突き止めてあります。無理はしないように・・」

「巫女様の言われることであれば・・・・だが、決して無理をするでないぞ!」

国王も渋々承知した。もちろん屈強な兵士をお付きに着けて・・・。

・・・・

「ここが魔物の巣ね・・妖気が漂ってるみたい・・・」

リーゼは洞窟の入り口に近づいていった。
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