クレール光の伝説ミッドランド編
第12話
その時ブライトの後ろに二人の人影が見えた。
「姫は・・・・」
「むこうだ!」
二人は短く言葉を交わすと隣の部屋に突入していった。
「・・・・え?」
エルはその声に聞き覚えがあった。しかし、さっさと着替えを済ますことにした。
「ブライトだって信用できないからな・・・」
一応後ろを向いているようだ。隣の部屋から格闘の音が聞こえる。
「助けに行かないのか?」
「さあね、俺には興味のないことだ・・・・」
エルは着替えを済ますと、そばに落ちていた剣を拾い上げる。愛用のスピアだ。
「あの二人は・・・・」
「・・・たまたま一緒になった」
エルの言葉にブライトは無表情に応える。
「なにも聞かないのか?」
「・・・・お前のことが心配だっただけさ」
エルはブライトの沈黙が逆にうれしかった。こんな男たちの姦計に二度も引っかかり、し
かも今度は汚されてしまったのだ。ブライトが逆に身体の様子を聞いてきたら泣き出して
しまうから・・・。
隣の部屋の格闘はあっというまに終わったようだ。姫の泣き声と、それをなだめる声
も聞こえら。
「・・・わたしだって泣きたいよ・・・」
「へ?」
エルのつぶやきに、ブライトが素っ頓狂な声を上げた。
とその時・・・。
「うぐううううう・・・」
血塗れになって倒れていた強力が妙なうなり声をあげて起きあがった。
「な、なんだあ?」
「!!!」
血塗れの強力の身体がむくむくと膨れ上がり。
化け物の顔へと変わっていく。
「うおおおお・・・・」
元々大男だったが、そのからだは更に巨大になっていく。そしてその顔は醜い怪物の顔に。
「オ、オーク!」
エルが叫んだ。人間だったはずの男が、オークになって二人をにらみつけた。
★第一章終わり★
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