みだら人形(第3話)
「ドリームドール・コッペリウス?」 かおりが看板を読んで叫んだ。 やっと英里子の目的地に到着した。そこは、住宅街の中の古びた洋風の家。 入り口には古びた看板が立っていた。 「コッペリウス・・・ってあの?」 ゆかりもぼそっとつぶやいた。 「そうなのよ!すごいでしょ・・・それでね」 そういうと英里子は塀越しにのぞき込んだ。塀の向こうにまどが見える。 「あれっ?今日は無いなあ・・・」 英里子の言葉にかおりがつっこんだ。 「まさか、そこのまどからコッペリアが見えた!なんて言うんじゃないでしょうね」 「あたりい!」 かおりはふうっとため息を吐くと、ゆかりを連れて帰り掛ける。 「ちょ、ちょっと!ほんとなのよ!ほんとだってば!」 慌てて引き留める英里子。すると、洋館の入り口がぎっと開いて館の主人が現れた。 その姿たるや、まるで死○博士(ご冥福をお祈りします)のよう。 3人ともその姿に驚いて目を見張った。 「ま、まじコッペリウス!」 館の主人は目をかっと剥いて。 「ウチの前で騒ぐんじゃないぞ!小娘どもが!」 ほんとに怒っている。すごい剣幕だ。 それでも英里子はひっしにおねだりのポーズで。 「あ、あのお、人形作ってるところ見学とかさせてもらえない・・・でしょうか」 「仕事の邪魔だ!さっさと帰らんと」 更にすごい剣幕で怒り出した。 「す、すいません〜」 かおりとゆかりは英里子を羽交い締めにしてその場から逃げ去った。 「まったく、これだから生身の女は嫌いなんじゃ!やかましいだけで・・・お」 ぷるるるるる・・・・・。仕事場から電話の音がする。主人はあわてて門を閉め家の中に 駆け込んだ。 かわって3人の男達の部屋。この部屋の主である太った男が電話をしている。 「あ?・・・以来の人形のモデルの子がきたあ・・・」 その声に他の二人も振り向いた。 「そうか、それは面白いことになったな。うんうん・・・・」 やがて小声になって何かを話し合っていた。 「そうか、本物が来るとは思わなかった」 「ほんとにコッペリアそのままってことだな」 「三人とも誘い出せないかなあ・・・・」 それぞれに勝手なことを行っている。 「そうだな上手く誘い出せるといいんだが。あの叔父も変人だからな、果たして上手くい くことやら・・・・」 コッペリアの主人だけなら怪しまれずに家の中に連れ込むこともできるだろうが、男たち がいれば怪しまれるかも知れない 「それに、どうやってやる?痩せぎすはゆかりって子に顔を見られてるんだろ?」 「そうだな、それに俺たちも顔を見られたくないしな・・・」 なんだかんだ行ってやっていることは犯罪の相談でしかない。 あれからもちょくちょくとコッペリウスに押し掛ける英里子。 だが、一向に取り合ってはもらえなかった。 だが、ある日突然人形師が英里子の前に現れた。 「まけたよお嬢ちゃん。」 「え!じゃあ見せてくれるの!」 「ああ、お嬢ちゃんそっくりの人形はもうすぐ完成だ。 今度の日曜日にお友達も連れていらっしゃい」 その言葉に英里子は飛び上がって喜んだ。 「ありがとう!必ず来ます!」 そういってコッペリウスをあとにした。 「やれやれ!甥っ子の頼みじゃ仕方ない・・・」 人形師はそうつぶやくと、家に入っていった。
「ねえねえ!今度の日曜日!またあそこに行こうよ!」 「え?また怒られるから嫌だよ!」 「大丈夫!今度は人形師のおじさんが着てもいいって言うんだから」 レッスン場、土曜日の半日授業を終えて、英里子達3人組がそろっている。 「わたしは・・・・いや」 ゆかりは遠慮したいといった。かおりも乗り気ではなかった。 「辞めた方がいいよ!いくらお年寄りだからって」 「そう!痛い目に遭ってからじゃ遅いんだから・・・」 二人が英理子に行かないように引き留める。 だが、聞くような子ではないことは判っていた。