大和古伝、桜花姫ヨシノの物語

ムーンライズ


(9) 荒れすさぶる猛き闘神、スサノオノミコト見参!!

 ひときわ大きな雷鳴を響かせ、闘神は雄々しき声で己が名を告げた!!
 「遠くにあらば伏して聞けっ、近くにあらば刮目して見よっ!!俺は荒れ凄ぶる猛き王っ、スサノオノミコトなるぞお〜っ!!」

 ---スサノオノミコト・・・

 天にも地にも、その猛き名を知らぬ者はいない。ヨシノ姫達を助けるべく推参した救世主・・・
 彼こそは、最高神アマテラスの弟神にして、大和神話最強の男、スサノオノミコトであった!!
 大和に住まう人々を、そして八百万の神々を震撼させた無敵の闘神が今、闇の世界に罷り来したのだ!!
 卑劣な悪漢どもは一斉に恐怖の悲鳴をあげた。
 「ひぃえええ〜っ!!す、す、スサノオノミコトだってえええ〜!?に、逃げろ〜っ、今すぐ逃げるンだああ〜っ!!」
 叫んだ禍神達が一斉に逃げまどう。無敵のスサノオに立ち向かおうなどと思う愚か者は1人もいない。格が違い過ぎるのだ、強さが違い過ぎるのだ!!
 卑屈にも闘神に背を向ける禍神達に、正義の裁きが下される。
 「フッ、腰抜けどもが。行けトドロキ、踏み潰してやれっ!!」
 闘神の命が下り、天馬トドロキは嬉々として嘶いた。
 「ブヒヒ〜ンッ、お任せくださいスサノオさま〜っ。」
 暴れ天馬が凄まじい蹴りを浴びせると、大勢の禍神どもが木端のように吹き飛んだ。
 (※黒○に乗って雑魚どもを蹴散らすラ○ウをご想像ください♪)
 辛うじて難を逃れた者達も、豪快に空を舞う天馬によってたちどころに退路を断たれ、袋のネズミ状態となる。
 「・・・・あ、あわわ・・・も、もう逃げられねえよおおお〜。(泣)」
 禍神達の前に、地響きと共に闘神が降り立つ。そして兎を狩るにも全力を尽くす百獣の王の如く、スサノオは禍神どもに真っ向勝負を求めた。
 「俺ぁコソコソ逃げる奴はでぇっ嫌いなンだよっ。生き残りてえなら正々堂々、俺と戦えっ!!」
 問答無用の怒声に気押され、顔面蒼白で立ち尽くす禍神達。
 前には闘神、後ろには暴れ天馬・・・もはや戦うしか方法はない・・・絶体絶命の禍神達は、ヤケクソになって突進して行く。
 「んがあああ〜っ、もうヤケだコンチクショ〜ッ。(泣)」
 最強の闘神に立ち向かう蛮行を、スサノオは良しと見た。
 「それでこそ漢(おとこ)ってもンだぜ。戦で散るのが男の華よっ、どおりゃあああ〜っ!!」
 正義の拳が唸りを上げて炸裂する!!

 ーーードゴオオオーンッ!!

 無敵の一撃が、立ち向かった蛮勇なる者どもに炸裂した!!
 その豪腕から繰り出される破壊力は凄まじい。拳圧だけで山をも吹き飛ばすほどだ。それを喰らった連中は苦しむ暇もなく、速やかに地獄へと送られた・・・
 後に残ったのは、戦う勇気の無いクズどもばかり。
 その中に、禍神達の大将オニマガツもいた。
 手下達の後ろに隠れ、コソコソ逃げようとするオニマガツを、闘神は見逃さなかった。
 「待ちやがれオニマガツ!!逃げられるとでも思ってンのかっ!?」
 怒声にビクッと怯えたオニマガツは、恐る恐る振り向く。
 「あ、あは、あはは・・・こ、こ、これわスサノオさま〜。ご健勝でなによりですうう〜。(大汗)」
 極限の恐怖に怯えながら愛想笑いするオニマガツを、スサノオは凄まじい眼光で睨む。
 「てめえ〜、姉貴に懲らしめられてから何やってるかと思えば、ま〜だ懲りてなかったみてえだな。よりによって春の宴を台無しにしやがるとはよ。この落し前、どうやってつけるつもりだ、あぁン!?」
 その闘神の眼には、悪を絶対に許さぬ正義の炎が燃え盛っている。
 覚悟を決めたオニマガツは、禍神最強の力を使う事を決意した。
 「うぬぬ〜。こうなったら我が最終奥義をもって立ち向かうしかあるまいっ、ぬおおお〜。」
 言うや否や、指で印を結び(怪しげな)呪文を唱えるオニマガツ。
 「禍神最終超奥義!!大魔道究極爆裂覇道大無限〜、水金地火木土天海冥!!我的無敵最強〜っ!!いでよ悪しき闇の戦闘魔獣どもっ、急ぎ来たりて我だけを守るのじゃあああ〜!!」
 その命令に応えて現れたのは・・・闇の魔術を集結して造り出された戦闘魔獣であった。
 見るも醜悪で残虐なバケモノが、幾千万も闇の中から出現し、狂ったように吠える。
 戦いにのみ特化した闇の魔獣・・・心も魂もない奴らに、恐れも躊躇いもない。ただ命じられるまま戦い、敵を屠るのみ。
 牙を剥き出して暴れる戦闘魔獣の出現に、禍神達は勝利の喜びに涌く。
 「おおっ、こんな奥の手があったのですか大将どのっ。これならスサノオに勝てるかも♪」
 浅はかにも勝利を確信する禍神達であったが、大将であるオニマガツが、自分達を見捨てようとしているのに気付いてはいない。
 オニマガツは戦闘魔獣と手下達を、自分が逃げるための捨て駒にしようとしているのだ。
 「これなら少しは時間稼ぎできるじゃろうて〜。今のうちにトンズラするのじゃ〜。」
 だが、悪党の姑息な思惑など闘神に通用するはずはない。
 フンと薄笑ったスサノオは、腰に下げた剣を手にして身構える。
 「アホが、せこい真似しやがって・・・その腐った根性もろとも叩っ切ってやるぜっ!!」
 鞘から抜き放たれた剣が鋭く光るっ!!
 眩い虹色の光が闇を照らし、襲い来る戦闘魔獣達を威圧した。
 「「ヴ・・・ヴおおおっ?」」
 恐れを知らぬはずの魔獣どもが、神々しい光に気押され後ずさりしている。
 魔獣を怯えさせるそれは、天空の神々が悪を討つ為に鍛え造った聖剣であった。
 光る聖剣を翳し、スサノオは猛き剛声を轟かせる!!
 「さあ、目ン玉開いてよーく見やがれっ。神の聖剣、アマノムラクモの威力をなあっ!!」
 スサノオが闘気を剣に込めると、虹色の光が一つに束ねられ、巨大な刃に変化した。
 そして光る巨大聖剣が、稲妻よりも早く闇を切り裂いた!!

 ---シュバアアアーッ!!

 剣戟が弧を描いて直撃したその瞬間、魔獣達が真っ二つになって弾けた。
 「「ヴぎゃあああ〜っ!!」」
 胴体を切り裂かれ、次々と吹き飛ぶ戦闘魔獣達。無数の魔獣が、聖剣の一払いで全て屠られたのだ。
 そのさまは正に、群生する草木を薙ぎ払うが如し。
 見事なほど豪快に、そして驚嘆するほど鮮やかに、スサノオは聖剣で魔獣どもを倒したのだった。
 真っ二つに切り裂かれた魔獣の胴体が、呆然とする禍神達の前にドサドサと落ちてくる。
 禍神達の誇る戦闘魔獣が一瞬で肉塊に変えられ、スサノオに勝てるかもなどと言う愚かな期待は、脆くも崩れ去ったのだ。
 もはや一切の勝機がなくなった禍神達は、恐怖と絶望に苛まれながら怯え震えている。
 「・・・あ、あわわ・・・お、お、お助け・・・」
 そんなドブネズミのように怯えている禍神達の前を悠然と進み、スサノオは荒々しき声で怒鳴った。
 「年貢の納め時だオニマガツ!!てめえも禍神の大将なら、根性あるとこ見せてみろや。手下どもの前で情けねえ真似はできねえだろがっ。」
 その声の先には、魔獣の下敷きになったオニマガツがジタバタもがいていた。
 「お、重〜い。は、はやくだずげで〜。」
 これが禍神の大将かと思えるほど無様な姿を晒しているオニマガツを、手下どもは大慌てで起こした。
 「た、大将どの〜。す、スサノオさまがお呼びですよお〜。」
 怯える手下どもの手で前に押し出されたオニマガツは、否応なしに闘神と戦わねばならなくなった。
 最強の闘神は、指をボキボキ鳴らしながら言い放つ。
 「てめえに最高の栄誉をくれてやる、この俺様とタイマン勝負できるってぇ栄誉だ。どーだ、嬉しいだろう。」
 オニマガツにとっては、なんとも横暴な栄誉であった。
 戦いに誇りを持つ戦士ならば、最強の闘神に一対一で戦う権利を与えられる事は最高の栄誉となろう。
 だが、姑息な悪行を重ねる者にとって、強者と真正面から戦わねばならないのは最悪の事態だ。
 元来、弱い者には容赦なく、しかも卑怯な手段を使ってしか事を成さないオニマガツである。闘神との一騎討ちなどもってのほかだ。
 戦いを逃れようと、懸命に無駄な足掻きをする。
 「いや、あにょ〜。わ、わしはそんにゃ栄誉いりましぇん〜。今日はカゼ気味でして、ゴホゴホ。」
 「遠慮すンじゃねえよ、俺は素手で戦ってやるぜ。武器がありゃ勝てるだろ。」
 そう言って矛を投げよこすスサノオ。だが、オニマガツにはハンデにすらならない。
 言い訳も見苦しい大将を、手下どもは不信の目で(じぃ〜)と見ている。
 ここで大将らしい所を見せねば、一生アホ呼ばわりされるのは目に見えており、矮小な自尊心に執着しているオニマガツは、自分の面子を保とうと虚勢をはった。
 「わは、わはは〜っ。わしの底力みせてやるわ〜いっ、にょおお〜っ!!」
 泣いて喚くなり、矛を振り回してスサノオ目掛けて振り下ろした。
 矛をぶつけた瞬間、凄い音が響くが・・・しかし、矛は呆気なくへし折れてしまう。
 「あ、ありゃ?」
 オニマガツがスサノオを見ると、闘神は頭を軽く叩いて不敵に笑っているではないか。
 「驚いたか、俺の頭は鉄より堅ぇンだよっ!!」
 叫ぶなり、強烈な蹴りの一撃を喰らわせた!!

 ---ドコッ!!・・・ぐちゃっ・・・

 鈍い音が響き、目を大きく見開いたオニマガツが七転八倒する。
 股間に炸裂した蹴りによって、オニマガツの急所は見事(!?)に粉砕されてしまったのだ。(^^;)
 「お・・・おおお〜っ。た、玉があああ〜。」
 「悪りィな、完璧にブッ潰れちまった。もう2度と女とはヤレねえなあ。」
 「んああ〜、む、むごい〜。(泣)」
 股間から脳髄へ直撃するものすごい苦痛。だが、男にしか判らぬ痛みであっても、純潔を汚された乙女の苦痛に比べれば微々たる事だ。
 怯えるオニマガツは、股間を押さえながら懇願する。
 「・・・な、なあ〜、あ、あんたもわしも同じ悪じゃろ?あんただって散々悪さしてたじゃないか〜。悪同士、仲良くしましょ、ね?」
 だがその懇願は、スサノオの神経を逆撫でした。決して触れてはならぬ逆鱗に触れてしまったのだ。
 スサノオの目が凶悪につり上がる!!
 「・・・同じ悪だと?てめえと一緒にするンじゃねえや・・・確かに俺は悪だぜ、(最強の悪)だ・・・だがてめえは違う・・・てめえは最低のクソ野郎だっ!!」
 オニマガツの顔面に怒りの鉄拳が炸裂っ!!
 頭骨の砕ける音が響き、盛大に鼻血が噴出する。
 「は、はがが・・・は、鼻が・・・はにゃが・・・あにょ・・・ゆるひて・・・あわ、あわわっ・・・」
 懸命に許しを乞うが、もう遅い・・・
 そしてついに、高天ヶ原を襲撃し、ヨシノ姫を・・・数多くの侍女や巫女達を辱めた悪漢に、天誅が下される時は来た・・・!!





次ページへ 前のページへ MENUへ