大和古伝、桜花姫ヨシノの物語

ムーンライズ


(8) 闇に正義の雷鳴轟く時、悪しき供宴は終わりを告げる

禍神に囚われ、地獄の陵辱を受けたヨシノ姫・・・
 身も心も汚され、闇に堕ちた桜花姫に助かる道などないと思われたが、しかし、天は罪なき姫君を見捨てはしなかった。
 虚ろな意識の中、ヨシノ姫の心に荒ぶる神の猛き声が届いていた・・・

 邪悪な欲望が沸き立つ闇の世界・・・
 ドロドロに腐れ果てたこの場所で、悪党どもは卑しき笑いをあげている。
 枯れた巨木には、うら若い大勢の巫女や侍女が股間を晒された状態で吊り下げられていた。
 それを(花見)と称し、堕落の宴に酔い騒ぐ禍神ども。
 「わ〜っはっは、じつに見応えのある花見だ。オマ○コの桜が満開だぜ〜っ♪」
 欲望で腐った輩の性根に、美しさを讃える感情などない。
 美しきを汚し、乙女の身体を貪るしか能はないのだ。
 巨木に荒縄で拘束されているヨシノ姫の前で、大酒を呑み干して高笑うは、禍神の総大将オニマガツだ。
 「がっはっは♪じつに楽しいっ。お前達ももっと飲めっ、もっとヤリまくって騒ぐのじゃ〜っ。」
 神々への復讐を遂げた悦びで浮かれるオニマガツは、我が世の春とばかりに騒ぎ立てていた。
 慢心しているオニマガツに警戒心など微塵もなく、勝ち誇ったようにヨシノ姫を弄ぶ。
 「どうじゃ〜、もっともっと綺麗な桜を咲かせてみせろ。ほーれほれ。」
 下劣に腰を振って責めてくるオニマガツに、ヨシノ姫は抵抗すらできず虚ろな瞳を涙で濡らしていた。
 そんな彼女の心に、再び猛き声が響いてきた。

 ・・・もう少しの辛抱だ、今助けに行くぞっ・・・

 それはヨシノ姫の心に強く、そして猛々しく轟く。
 ヨシノ姫は猛き救世主の声を耳にして、感涙を流した。
 「・・・ああ、猛き御方・・・わたし達を救ってくださるのですね・・・私の声が・・・聞こえますか?」
 微かに呟かれる喜びの声は、ほとんど聞き取る事すらできない。
 しかし、その微かな声は救世主の元へ明瞭に届いていた。

 ・・・聞こえるともっ・・・辛かっただろう、苦しかっただろう・・・でもこの俺さまが来たからには心配はねえっ・・・クソどもを蹴散らして、お前達の無念を晴らしてやるぜっ!!

 その声は、(救世主)の言葉とは思えないほど粗雑で乱暴だ。
 だが、その声には深い慈愛が宿っている。愛と平和を司る、太陽の女神アマテラスに引けをとらぬほどの優しさに満ちていた。
 救世主の声は、陵辱されている全ての巫女や侍女達の(魂)に響き渡っていた。
 「・・・ああ、われらが、きゅうせいしゅさま・・・わたしたちを、おすくいくださいませ・・・」
 辱められながらも、喜びに満ちた笑顔を浮かべている女の子達を見て、禍神どもは怪訝な顔をする。
 「なぁんだ、こいつら?イジメられてるのにヘラヘラ笑ってやがるぞ?」
 絶望で全てを失ったはずなのに、喜びの笑顔を浮かべているのは一体なぜ・・・?
 愚鈍な禍神が、ヨシノ姫や侍女たちの笑顔の意味など理解するはずもない。
 手下たちが呆れた顔で、大将のオニマガツに声をかける。
 「大将どの〜。ヨシノちゃんも巫女もみーんな、オツムがイカれちまったみたいですぜ。救世主がどうのとかほざいて笑ってやがるっす。」
 下劣なオニマガツは、手下の言葉に嘲笑を浮かべた。
 「ふふん。追い詰められた奴は、ありもしない妄想に逃避するわけじゃ。哀れなものだわい、助かる見込みなんか万に一つも無いのにのお〜。」
 尋ねられたオニマガツは、己に迫る危機に気付きもしていない。あいも変わらずヨシノ姫を執拗に責めたてている。
 「おおうっ♪ヨシノちゃんのアソコはメチャ締まりがいいのじゃ〜。もう20回もヌいてしまったぞぃ♪」
 ヨシノ姫を独り占めしてる総大将に、手下どもはブーブー文句を言っている。
 「少しは俺たちにもヨシノちゃんを回してくださいよおお〜。大将どの1人じめなんてズルイっすよおお〜。」
 「あ〜、わかったわかった。どいつもこいつも欲張りな奴らばっかりじゃのお。あと10回ほどヤッたらお裾分けしてやるわい。」
 卑しく言い返し、手下をシッシと追い払う。
 そして全裸のヨシノ姫を強制的に四つんばいにさせると、背後から怒張したイチモツを突き付けた。
 「美味しいとこは最後のお楽しみなのじゃ〜、手下どもにヨシノちゃんのオシリの穴はやらんわい。」
 なおも迫る危機に、ヨシノ姫の顔は恐怖で引きつる。
 「は・・・ああっ・・・もう・・・おやめ・・・くだ・・・はぁうっ・・・」
 「にょほほ〜、入れてやるぞ〜。オシリの穴にのおお〜♪」
 汚いモノが突き刺さろうとした・・・その時であるっ。

 ---ドッカ〜ン!!

 大爆音と共に、雷撃がオニマガツを直撃した!!
 「ふんぎゃおおっ!?」
 マヌケな声を上げて吹っ飛んだオニマガツは、尻からプスプス煙をあげて喚いた。
 「だ、だれじゃ〜っ!!こ、こ、こんな事する奴は〜!?お、お、お前か!?それともお前か〜っ!!」
 手下の仕業と勘違いして怒鳴りまくるが、手下達はプルプルと首を横に振る。
 「あにょ〜、お、おれ達ぢゃありませ〜ん。(汗)」
 「だったら他に誰がやったんじゃいっ、て・・・ん?」
 そして下劣な憤慨が、一瞬にして驚愕に変わった・・・

 ---カッ・・・ヴァラララ〜ッ!!

 凄まじい稲妻が暗闇を切り裂き、大地を揺るがせる雷鳴が轟いた!!
 それは愚劣な宴の終焉を告げる鍾鳴であった。
 禍神達は全員、惚けた顔で辺りを見回す。
 「・・・なんだ今のは。なんで闇の世界にカミナリなんか鳴ってるんだ?」
 暗く閉ざされた闇の世界に、雷光などありえるはずはない。
 だが、雲も無き天空に凄まじい稲妻が幾千も走り、あらゆる者を震え上がらせる雷鳴が立て続けに成り響く。
 うろたえる禍神どもは、恐怖に怯えながら天空を見る。
 そこには・・・狂ったように嘶く暴れ天馬に跨がり、猛き雄叫びをあげる闘神の姿があった!!
 「うわ〜っはっはっは!!腐れ禍神どもが〜っ。てめえら全員、一匹残らず地獄に蹴り落してやるぜっ!!覚悟しやがれ〜っ!!」
 岩山の如き屈強な体躯と、嵐を巻き起こす荒々しき風貌。そしてどんな悪鬼魔獣であろうとも、一睨みで怯えさせる獰猛な双眸を持つ闘神。
 雄々しき怒声が響くたび、怒濤の雷光が闇を切り裂く。
 稲妻を己が身に纏い、猛き闘神は一直線に禍神どもの元に向って来る!!
 それを見たオニマガツは・・・絶対的な恐怖に戦きながら呟いた。
 「あ・・・あれは・・・まさか・・・す、す・・・すさの・・・おわああ〜!!なんであいつがこんな所に〜!?」
 最強を自負するオニマガツが、まるで矮小なネズミのように怯えている。
 暴虐なる禍神の支配者を震撼させる闘神の正体とは一体・・・




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