大和古伝、桜花姫ヨシノの物語 (ヨシノ姫とアマノウズメの外伝♪)

ムーンライズ


 
(3) 果て無き紺碧の海に想いを懐いて・・・


「・・・きれい・・・こんなの初めてですわっ。海って・・・海って、最高ですわ〜っ!!」
 両手を組み、目を輝かせて歓声をあげるヨシノ姫。
 乙女のように汚れない真っ白な砂浜が三日月の形に広がり、その先には、果てなき紺碧の海が延々と続いている。
 海の広大さは例えようもなく、誰もが水平線の向こうに何があるのかと想像せずにはいられない。
 海を始めてみるヨシノ姫も然りであった。目の上に手を翳し、一生懸命に背伸びをして海の向こうを眺めていた。
 「・・・はあ・・・ものすごく広いですわね・・・向こう岸はどこですの?」
 なんとも純朴な疑問に、浜の侍女達がクスッと笑って答える。
 「向こう岸は見えませんわよ、海はずっとずっと遠くまで続いてますの。どこまで行けば向こう岸に辿り着くか、そこにどんな世界があるか・・・誰も存じません。」
 「そうですの・・・行ってみたいですわね、海の果てに・・・」
 驚嘆と感心の入り交じった声でヨシノ姫は頷く。
 海の彼方に何があるかは誰も知らない・・・未知の世界に想いを馳せるヨシノ姫はふと、海の神でもあるスサノオなら知っているかもしれないと思った。
 荒々しさと雄大さに満ちた海の印象はスサノオと重なる。大きな船に乗り、勇敢に海の果てを目指す闘神の姿を思い浮かべるヨシノ姫であった。
 そんなヨシノ姫の傍らで、とっても真剣な顔で水平線を見ているのはハルカであった。
 「うーん、きっと海の果ては大っきな滝になってると思うですぅ。でもってぇ、そこから海の水がいっぱーい下に落ちてるですぅ。」
 余りにも大まじめに説明するハルカに、ヨシノ姫もカレンも大笑い。
 「じゃあハルカ、下に落ちた海の水はどこへ行きますの?それに海の水が滝になって流れちゃったら、海は干上がってしまいますわよ。」
 ヨシノ姫のスルドイ突っ込み?に、ハルカは思わずたじろいでしまう。
 「え、ええ〜っと(汗)。た、たぶん〜。下には大っきな受け皿があってぇ、そこに溜まった水がお空に上って雨になって海に戻るですぅ。」
 その大げさな説明に、ヨシノ姫達は再び大爆笑。
 「あははっ、ハルカったら面白い事言うわね〜。」
 3人が笑いあっていると、浜辺の侍女達が恭しく声をかけてきた。
 「ではお屋敷の方に御案内致しますので、こちらへどうぞ。」
 侍女の後に着いていくと、浜辺から少し奥へ入った所に、大きくて立派な屋敷が建てられていた。
 屋敷は大和の古代建築に見られる高床式住居であった。高床式住居は貴重な米を貯蔵する蔵として、そして貴族の屋敷として主に用いられている。
 高級なヒノキ材を惜しげもなく用いて造られた屋敷は、高位の者が住まうに相応しい見事なものであった。
 「わあ、大きなお屋敷ですわね。ところで、お屋敷のご主人は御在宅ですか?」
 自分は客分として迎えられていると思い込んでいるヨシノ姫の質問に、浜辺の侍女は首を横に振って応えた。
 「いいえ、ここには誰も住んでおりません。浜辺での保養を目的として造られた屋敷ですので。」
 「そ、そうですの・・・はっ、もしかして・・・」
 屋敷は建築されたばかりらしく、シミ一つないヒノキの柱からは削りたての木の匂いがしてくる。ヨシノ姫は、屋敷を見ながら複雑な表情を浮かべた。
 今回の休暇のお膳立てをしたのは誰あろう聖桜母である。その聖桜母の決めた浜辺の保養地に建てられている、真新しくて豪勢な屋敷・・・
 その屋敷に聖桜母の(超過保護な愛)を感じ取った。
 「もしかして、その・・・このお屋敷は聖桜母さまが、私の休暇のためにわざわざ造ったものでわ・・・。(汗)」
 「ええ、その通りですが、聖桜母さまからお聞きになっておられませんか?」
 「やっぱり〜、聖桜母さまったら〜。」
 これだけの屋敷を建てるには費用も嵩んだであろう。それでもヨシノ姫が快適に過ごせるようにとの配慮であった。
 聖桜母の心使いに、呆れるやら嬉しいやら、顔を紅くして笑ってしまうヨシノ姫であった。

 こうして、なんとか無事?に海へとやって来たヨシノ姫達は、海での休暇を満喫すべく浜辺に繰り出した。
 ヨシノ姫同様、山育ちのカレンとハルカも、初めての海に大感激。
 「わ〜いっ、海です、海ですぅ〜。気持ちいいですぅ〜♪」
 「こらまてハルカ〜っ。水をかけちゃうわよ〜。」
 大はしゃぎの2人は、童心に返って戯れているのであったが・・・ところが肝心のヨシノ姫は、2人を尻目に浜辺の隅でモジモジしているのである。
 「え〜っと、あの〜。困ったですわ・・・どうしましょ・・・」
 どうも海に入るのを戸惑っているらしい。海に少しだけ足を浸けたかと思うと、打ち寄せる波に慌てて浜に上ったりしてる。
 そんな事をさっきからず〜っと繰り返してるヨシノ姫を見て、呆れた顔をするカレンとハルカ。
 「姫さま、どーしちゃったのですぅ?せっかくの海なのにぃ〜。」
 「これじゃあ何のために海に来たのかわかりませんわね。何をしておられるのかしら。」
 カレンとハルカは、コソコソ砂遊びなどしているヨシノ姫に歩み寄った。
 「姫さま、なにしてますの?一緒に泳ぎましょうよ。」
 「あ、あら、カレン。あにょ・・・砂がキレイだから砂遊びしちゃおーかなって・・・泳ぐのは、そにょ・・・」
 困った顔で愛想笑いをするヨシノ姫を見て、カレンはピーンときた。
 「ははあ〜、姫さまカナヅチなんですわね。」
 「はぁう!?な、な、なんでわかりましたの〜!?」
 図星を突かれたヨシノ姫は大焦り。実は彼女、全くもって泳げなかったのである。
 せっかく海に来たというのに、泳げなければ面白さも半減するというもの。
 そんなカナヅチで困ってるヨシノ姫を、海岸の散歩に誘うハルカ。
 「じゃあ、あちらの山までお散歩しましょう姫さま。山の上に登れば景色も良いと思うですぅ。」
 「う、うん。そーしますわ。」
 とりあえず3人で散歩する事となったが、これが思わぬ人物との出会いに繋がるのであった・・・





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