淫曝 第5話

隠者


 王女は馬飼いたちに布を被せら気絶させられると何処かへと連れ
て行かれた。目を覚まし、恐怖と不安に怯えながら、彼女の瞳が再
び光をとらえた時、その眼前には群衆が映った。その多くが男で、
みな目を血走らせて、王女の顔を凝視している。

「これは一体!?」

振り返ろうとした王女は、自分の首が後ろに回らない事に気が付い
た。いや、正確には首が回らないのではなく、丸くくり抜かれた板
の穴から首だけを突き出す格好なのだ。群衆に晒されてるのは、王
女の「顔」だけであって、その美しき裸体は、板の内側となる小屋
の中にあった。―身体は四つん這いで、首だけが外に出されている。

「くーくっく」

小屋の中にいる潰瘍の馬飼いが笑う。むろん、王女は声しか聞こえ
ない。彼は王女の尻を撫で回し、その滑らかさを楽しんでいる。恐
ろしいまでに優しく手慣れた動きだった。

「清楚な王女の顔と淫らな肉体が板によって見事に分れただろう」

そういうのは丸坊主の声。彼もまた小屋の中にいる。

「だが、顔と身体は簡単に切り離されるもんじゃねぇ。今からお前
さんの美体の価値を試すために、とある方をお呼びする」

「その方が気に入れば、お前は犯されるだろう。身体とリンクした
お前の王女という顔が犯されながらどれほど悶えるか、目の前の連
中はそれを期待していやがるのさ」

馬飼いたちは、小屋の中にある王女の肉体を犯させることで、小屋
の外にある王女の顔を淫らに乱れ狂わせ、その表情を群衆に見せつ
けようというのだ。

「ひ、ひどい…お願いやめて!」

王女は馬飼いたちへの懇願したつもりだが、板の穴から突き出た顔
から発せられる声は、自然と群衆に呼び掛ける形となった。

―うひひ、やめてって、もう始まったのか
―いいねぇ王女様。もっとその綺麗な顔をゆがめてよ

群衆の顔はどれも淫猥だ。彼らは王女がこれから何をされるのか知
った上で彼女の顔を取り囲んでいるのだ。

「お?お見えになったようだ」

小屋の中に三人目の男が現れたようだった。太っているのかゆった
りとした歩みで、四つん這いの王女の身体に近寄ってくる。逃げら
れないという境遇と、何をされるのか分からないという恐怖。穴か
ら顔を突きだしたままの王女には誰なのか。どんな男かも分からな
い。

「ささ、こちらでございます」

丸坊主の声。呼ばれたのは彼らより身分の高い人間らしい。

―ふむぅ。これは確かによだれが出るほど見事な身体じゃのう

「えぇっ!?」

三人目の男の声に女は聞き覚えがあった。毎日のように聞いている
声…。「そんな、まさか」心臓の鼓動が速い。胸が痛くなるほどだ。

「騒ぐなよ。バレたらつまらねぇんだ」

王女は群衆の中から近づいてきた若い男に、いきなり鉄の口輪をは
められた。柔らかな唇にごりりと押し当てられた鉄の口輪は王女の
声を奪った。もう彼女はうめき声しかあげられない。泣こうが叫ぼ
うが、許されない。

「…ふぐぅ…」

だが、王女の頭は冷たい口輪のことなどに構っていられない。今、
小屋の中で、彼女の裸体を眺めている三人目の男が誰なのか。四つ
ん這いで、さかりのついたメス犬のようなポーズを、その男はじっ
くりと眺めているのだ。「あの声は間違いない……お父さん…」

三人目の男は国王だ。彼は今、馬飼いたちと共に王女の裸体をゆっ
くりと撫でていた。自分の娘にであることにも気づかずに…。

(お父さんっ!やめてやめて!お願いっ)

王女がそう叫んだつもりでも、口輪から漏れるのは「うぅぅ」とい
ううめきだけだ。小屋の中にある身体をばたつかせ、逃げようとし
ても、無駄だった。抵抗はむしろ男の加虐心を増加させるだけ。

「ほぉ〜流石は国王様、立派な代物で…」

潰瘍の馬飼いの声だ。いやみではなく本当に感心している。何に?

─ふぉほ。そうか?まぁこれほど巨大なものはなかなかあるまいな

「左様でございますねぇ。あっしの腕ぐらいはありそうだ」

「しかもコレはなんでございますか?イボイボが至るところに」

─ふむ、コレは技師に入れてもらった宝石じゃ、ダイヤ、真珠、サ
ファイア、ルビー…確か三十個ほど入っているはずじゃ

「…素晴らしい!この女もよがり狂いましょう」

小屋の中から聞える会話に、王女はカタカタと震えだした。三人は
父であり国王である三人目のペニスの話をしていたのだ。─馬飼い
の腕ぐらいに巨大で、宝石が埋め込まれたいびつなペニス。
  どれほどグロテスクなのか?見えないことが余計に王女の不安を
掻き立てる。

「それほどの代物を突き立てたら、女が壊れるかもしれませんが、
献上したものです。構いません。さぁどうぞ国王様」

(いや!そんなのいや!)

父のグロテスクなペニスで犯され、「壊れる」なんて。王女の瞳か
ら大粒の涙がポロポロと零れ落ちる。

─おい、泣いてるぜ
─泣き顔もたまらんね〜

王女の顔だけを眺める群集は好き勝手なことをいう。

─さて、そろそろワシうずうずしてきおった。これほどまでに美し
い裸体はなかなかお目にかかれんのでな。

(やめてお父さん!お願い気がついて!)

「ささ、国王様!」

ばたつかせていた四肢が馬飼いによって強引に押え付けられた。馬
飼いの手が、王女の尻を左右に開き、ラビアを全開にする。まだ濡
れてない淫花の中央、王女のヴァギナに国王のペニスの先端がぴと
りと当てられた。

  美しい顔に仮面を付け、自分の本当の「価値」を求めた王女の絶
叫が今、響き渡ろうとしている。


(おわり)
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