淫曝 第3話

隠者


 墓堀りたちとの一夜を体験してからというもの、仮面の下にある
女の「王女」としての日常はますます平凡なものになった。
  自らの裸体の持つ魅力だけで男に抱かれること―。この事が、女
にとって肉体の美しさと価値を知らしめる。しかも今となっては王
女として既に敷かれたレールにあえて「抗う」という事に、背徳の
疼きをも含んでいた。

 貴族たちとの謁見を終え、自室に戻った女は、衣装箱の奧に隠し
てある銀仮面をそっと取り出してみる。
 王女の繊細な指に撫でられる銀仮面は、陽の光に照らされ、きら
きらと光り輝く。素顔の王女には人前で一糸纏わぬ裸体を晒す勇気
はない。だが「この仮面さえ被れば」男の鼻先に、脚を大きく広げ
咲き乱れる淫花を見せつけることもできる―。墓堀りに奪われたア
ヌスも今なら自ら腰を振って求めることができそうだ。

「…くぅンっ!…」

 仮面を付けた淫らな自分を想像しているだけで、王女の女芯は熱
くなった。氷のように冴えかえる美体は、欲望で内側から溶けだし
てしまいそうだ。―「か、仮面を!」
 
 王女は仮面をドレスの中に隠すと、自室を出た。幸い午後からの
予定はない。真っ昼間に城下を歩くことに不安もあったが、その不
安はかえって王女の羞恥心を淫らにくすぐった。
 ★
 
 城下に出ると、王女はとある馬小屋の中で、銀仮面を付けた。ひ
んやりとした金属の感触が、官能の旋律となって身体を駆けめぐっ
ていく。王女ではなく、性的な魅力に恵まれた完璧なる女。着てい
たドレスをゆっくりと脱ぎ始めた女を馬たちはワラを食べながらじ
っと凝視している。

 女にとっては、純粋な馬の瞳すら、自分を値踏みする男の欲望の
眼差しに思えた。視姦されながら裸体を晒していく。とろりとヴァ
ギナの奧で蜜の泉が揺れている。

 女はドレスをワラ山の中に隠すと、教会に向かって一歩を踏み出
した。行き交う人々は忙しそうに下を俯きながら歩いていたため、
なかなか全裸の女に気が付かなかった。が、一人の男が「お!?」
と声を上げると、裸体に突き刺さるような視線が一気に増えた。

―なんだぁこの女?!
―服を着てないぞ!!

 道の真ん中を歩いていく女を挟んで、道路わきに人の列ができた。
「視て、この美しく気高き肉体をもっと視て」仮面の下で女は頬を
紅潮させ、むずむずと沸き上がる羞恥心に酔った。「眼が、たくさ
んの眼が私の身体を貫き犯していく…」銀仮面を付けた女の出現に
驚きと困惑の声を上げていた群衆も女の裸体が放つあまりの美しさ
に次第に声を失い、その心に淫らな感情を生み出していた。  

 群衆に視姦されながら教会に近づくと、女は何の遠慮もなく礼拝
堂の扉を押した。アーチ状の天井からゆっくりと視線を降ろしてい
くと「十字架の殉教者像」に「迷える子羊たち」がひざまずき祈り
を捧げている。「王女」としては女も何度となく訪れている教会だ。

─天に召します我らが…!?

 女は祈り続ける信徒たちの間をすり抜け、「王国一の堅物」で通
っている神父と十字架の殉教者の間に立った。あたかも仮面の女に
祈りを捧げる格好になった神父は、銀縁眼鏡の奧で知的な目に困惑
を浮かべる。言葉の途切った神父を不審に思い、顔を上げた信徒は
殉教者に代わって眼前に立つ全裸の女に短い悲鳴を上げた。

「あ、貴女は一体?」

 動揺こそしているが、さすがに堅物と言われる神父。仮面を付け
た女の魅惑的な肉体を前にしても、己の性欲をコントロールしよう
と努めている。

「…こうしたいの」

 仮面の女は、しなやかな身体をゆっくりと後方に反らすと、燭台
を載せる壇上でブリッジの姿勢をとった。女の内股は神父の顔をち
ょうど挟み込み、堅物神父の目の前に、内股の奧から淫靡な薫りを
放つラビアが広げられた。ヴァギナから溢れ始めた濃厚な蜜に、陰
唇は既に濡れ、ぬらぬらと淫猥な輝きをたたえているのである。

―何て娘だ!
―神の罰が下るぞ!

 信徒たちの間から、嘆きのような怒号があがる。

「ふふふ」

 信徒のことなどまるで眼中にないのか?女は燭台から一本の蝋燭
を抜き取ると、火を消さないようにゆっくりとした動作で、ヴァギ
ナにねじ込み始める。薄紅色の柔らかな媚肉はいとも簡単に蝋燭を
飲み込んでいく。

「…あぅン」

 女は艶めかしい声を上げながら、ブリッジの姿勢からいよいよ背
骨を弓なりに反り返し、蝋燭の刺さったヴァギナをさらに高く突き
上げる。十字架の殉教者の前に誕生した美しく淫らな人間燭台―。
 
「あぁ…熱いっ!蝋が、蝋が垂れてくるわ!!」

 赤い淫花の真ん中にまるでめしべのように突き立てられた薄黄色
の蝋燭の先端から、液化した蝋がつぅつぅと零れていく。液化蝋は
柔らかくデリケートな陰唇やクリトリスに十分な熱さを持ったまま
ぼとぼとと落ちた。蝋が落ちる度に女はよがり、熱さに悶えて美脚
や腰を淫らにくねらせた。

「抜いて…神父様、お願いっ!」

 自ら淫猥な穴に差し込んだ蝋燭を神父に抜かせる―。「堅物と言
われる神父様が、こんな淫魔の誘いに乗るはずがない」信徒の誰も
がそう思った。
 しかし、女の目は仮面の下から、ヴァギナと対峙している神父の
目が異妖な輝きを帯び始めていることに気が付いていた。神父は肩
で喘ぐように息をし、何度も何度も唾を飲み込んでいる。耐えられ
るかしら?
 
 やがて堅物神父の手から聖書が落ち、震える指先が女の股間へと
向かった。女は自らの手で神父の指先を、焔ゆらめく蝋燭がぶっさ
りと刺さる淫花に導く。

「あふ…ふぁっン…!神父様ったらぁ!!」

 突然上がった女の嬌声に、神父はびくんと身体を硬直させる。神
父は「神に誓って」蝋燭を「抜こう」としたのだ。だが、指先が触
れた瞬間、蝋燭はまるでとろとろの液体に浸かっていくかのように
つぷつぷと膣中へと沈んだ。柔らかな媚肉は既にその火照りで固さ
を全く失っていたのだった。

―し、神父様!?

 信徒たちの目には神父が自ら蝋燭を女の子宮めがけて押し込んだ
ようにしか見えなかった。堅物と言われた神父が、女の股間に顔を
近づけ、そのヴァギナに蝋燭を突っ込む―。信徒の間にざわめきが
起きる。

「ち、違うっ!わ、私は断じて!」

 慌てた神父が信徒たちの誤解を解こうと振り返った。しかし、誤
解は解かれるどころか、確信へと変わった。―神父の股間が見事に
勃起し、聖職衣の下半身が円錐状にピンっと張っていたのである。
淫らな人間燭台は見事、堅物神父の「堅物」を呼び起こした―。

―残念です
―あんたは堕ちた…
―天国への扉は閉ざされましたね

 そういいながら信徒が一人、また一人と教会を後にしていく。堅
物という評判が王国内で確固たる地位を彼に与えたとすれば、信徒
の前で、女に戯れ股間を隆起されたことは、崩壊のプロローグだ。

  頭を抱え、十字架の殉教者の前にしゃがみ込む神父。そして、礼
拝堂には、仮面の女と堕ちた神父だけになった―。

「わ、私は終わりだ!!」

 眼を血走らせた神父は突然立ち上がると、仮面の女を猛然と押し
倒し、ヴァギナから蝋燭を引っこ抜くと、代わりに自分のペニスを
ぶち込んだ。

「お前の!お前のせいだ!こうしてやるこうしてやる」

 神の道に生涯を費やしてきた神父は、人生を狂わせた仮面の女を
力でねじ伏せながら、酷たらしく犯した。神聖なる教会の礼拝堂で
神父によって乱暴に犯されることに、女はぎゅうっと心臓が締め付
けられるような途轍もない快感を得ていた。このまま、何度もこの
堕ちた神父に犯されて何度も何度も昇天するだろう―。

 だが、女は仰向けのまま、その美脚をカエルのように無様に開か
れ、乳房を舐られながらも、その目は神父をとらえていなかった。

 女の視線は十字架の「殉教者」に向けられていたのだ。王国内は
おろか、世界の人々がこの殉教者像の前にひざまずき、幸せを願っ
ている。ブロンズ製の殉教者は、その眼前で自らの使いである神父
によって、女が犯される様子にも無表情だった。昔々、民の罪を背
負い、十字架で死んだ男…。死んだ哀しみと喜びをたたえた不思議
な眼差し…。
 
  女は殉教者に囁く。

「神父は崇高なあなたへの想いよりも、私の身体を選んだ」
「…私の勝ちね」
 
 やがて―。生涯で初めて射精したのではないのかと思えるほど、
大量の精液が女の子宮にぶちまけられた。仮面の女は、半ば精神が
崩壊した神父にもはや何の興味もなかった。
  女は、腰砕けの様子でおぼつかない足取りをしながら、ドレスを
隠してある馬小屋へ戻った。 

(つづく)
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