*A week・第4日目(5)

T.MIYAKAWA


その日の夕食は、食べ終わるのにいつもよりも時間がかかった。
 というのも、イザベラの部屋での出来事が忘れないでいたからだ。
「王子様?」
「え、どうかしたの!?」
 エスメラルダに声を掛けられた王子は思わず驚いてしまった。
「先程からお食事が進んでいませんが、お口に合いませんでしたか?」
 エスメラルダは王子の食事がまだ終わっていないのを見て心配していた。
「だ、大丈夫だよ。
 僕の事は心配しなくていいから…。」
 そう言い終えると、王子は慌てた様子で残りの料理を腹に詰め込んだ。

 夕食の後一息ついた王子だったが、その日に限って満足した気分にはなれなかった。
 夕食の時に食べた料理の味も満足に楽しめないくらいに王子は疲れていた。
 エスメラルダは後片付けをしながら王子のそんな様子を心配そうな顔で眺めていた。
 王子は俯きながら、イザベラの事を考えていた。
 イザベラとプラムはイザベラが作った薬を使って王子との一夜を楽しんでいだ。
 つまりそれは、イザベラが二人に関与しているようなものだ。
(イザベラはあの日僕がああなる事を分かっていたのだろうか?)
 王子の心の中ではこんな考えが浮かび上がっていた。 

やがて消灯時間になり、王子はベッドに入った。
 その日の王子はは疲れていたのか、すぐに眠気が襲ってきた。
 ベッドに入ってから1時間くらいの時間が経過した時だった。
 コンコンと、ドアをノックする音が王子の眠りを妨げた。
 このまま眠っていたいと思った王子はそのままベッドに潜り込んでしまった。
 しかし王子がいくら無視してもノックは止むどころか、うるさいくらい続いた。
 あまりにもしつこかったにあきらめた王子はベッドから起き上がって入り口へと
やってきた。
(誰なんだ?
 もう寝たいのに…。)
 そう思いながら王子はドアを開けると、目の前に1人の女性が立っていた。

「こんばんわ、王子様。」
 女性はそう言って、王子に微笑みかけた。
 目の前にいた女性はイザベラだった。
 イザベラの衣装は昼間の時とは違い、全身をフードの付いたローブを身に纏っていた。
「今度は何の用ですか?」
 王子は不機嫌な顔をしながらイザベラに尋ねた。
「フフフ…。」
 イザベラは妖しい笑顔を浮かべながら王子に近づくと、いきなり王子に抱き着いて
唇を奪ってしまった。

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