*A week・第3日目(5)

T.MIYAKAWA



 夜が更けて消灯時間となったが、王子の部屋を誰も訪れる事はなかった。
 この日は朝から色々あって、心身ともに疲れた王子にとっては嬉しい事でもあった。
(今日は昨日までとは違ってゆっくり眠れそうだ。)
 王子はベッドの上でこう考えていたものの、何か起きていいようにと、心のどこかで
警戒をしていた。
 しかし、その警戒心も王子がベッドに入って1時間も経たないうちに消えようとして
いた。

 王子がぐっすりと眠っている頃、ドアを開く音がした。
 王子が目を覚まさないようにドアを閉めると、その人影は王子のいるベッドの方へと
歩を進めた。
「……。」
 その人影は笑顔を浮かべながらベッドで眠っている王子を見下ろしていた。
 しばらくすると、そのままベッドの中に潜り込んでしまったのだ。

 王子はベッドの中で感じたこの異様な感触に目を覚ました。
 まだ寝ぼけた状態で首を動かして辺りを見回したが、部屋には誰にもいなかった。
 誰もいないことで安心して寝直そうとしたときだった。
「!?」
 王子はベッドから顔を覗きだす女性を見て言葉を失った。
 スカーレットが目の前にいたのだ。
 この突然ともいえるスカーレットの来訪に王子はさっきまでの眠気が一気に覚めて
しまった。

 スカーレットの鋭い視線に見つめられてか、王子は彼女から目をそらす事が
出来なかった。
「フフフ…。」
 スカーレットはこの怪しげな笑みを浮かべながら、両手を伸ばして王子の顔を自分の
方に向かせた。
「い、一体何を…っ!?」
 顔を合わせられた王子が言葉を言いかけようとした時だった。
 スカーレットはいきなり王子の唇を奪ってしまった。
 二人の口付けしばらく続き、口の中で何かが動いていた。
 スカーレットは口移しで何かを飲ませたのだ。
(な、何だ…これは?)
 そう思いながら王子はスカーレットを見つめていた。


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