*A week・第1日目(2)(改訂版)

T.MIYAKAWA



 メイドが食器を片付けている頃、王子は食後のお茶を
飲みながら一息ついていた。
 (…そういえば。)
 飲みかけのカップを置くと、そのまま黙ってしまった。
 王子は食事の時のプラムがとった行動が気になっていた。
 彼女がさっきの飲み物をやたらと飲ませようとしたからだ。
 そして、飲み終わった時に見せた不可解な笑顔も気になっていた。
 (どうしてあんな顔をしたのかな?)
 飲みかけのお茶が冷めてしまうのを忘れる程、王子はその考えに
夢中になっていた。
 王子のそんな様子を向かいで座っていたプラムはじっと見つめていた。
 「王子様、どこかに行こうか?」
 プラムが突然、こんな話を持ち掛けてきた。
 「え?」
 プラムの提案に、王子は思わず声を出してしまった。
 そんな王子の反応を見たプラムは、まるでそれを楽しむかのような笑みを
浮かべていた。
 王子はしばらく黙っていた。
 プラムはお茶を飲みながら、さっきの笑顔で答えを待っていた。
 その顔は明らかに面白がっているというようなものとも思えた。
 「答えは決まった?」
 プラムは王子が何も言わなかったので、声を掛けてみた。
 「…それでどこへ行くの?」
 王子はその声に一早く反応した。
 「そうね、まずは城の中を案内してあげる。
 王子様は城の中はあまり知らないからいいでしょ?」
 「そ、そうだね。」
 プラムのこの提案に王子は同意した。
 王子はこの城について知らない事があまりにも多かったので、この提案は
嬉しいものだった。
 「じゃあ、決まりね。
 早速行きましょう。」
 「ええ、今から?」
 プラムの言葉に王子は驚いた。
 「そうだけど、いつだと思ってたの?」
 「そ、それは…。」
 プラムは王子が戸惑う姿を見て、思わず笑顔を浮かべていた。
 「ホラ、行きましょうよ!」
 テーブルから立ち上がったプラムはそのまま王子の手を引っ張って部屋を
出て行った。

 城の中は王子に新鮮な光景ばかりだった。
 昨日は女王との謁見の為に玉座の間に連れてこられた時、そこの内装に目を奪われたの
だ。
 謁見の後、そのまま塔にある個室へと案内された後、そこで
一夜を過ごした。
 そんな王子に気をつかってか、プラムは城内のあちこちへと連れて
いってくれたのだ。
 大部分(プラムが入れる範囲)を見てきた二人は城の
屋上にあるテラスで休憩することになった。
 「どう、色々あってすごいでしょ?」
 そう言ってプラムは王子の顔を覗き込んだ。
 「う、うん。」
 外の風に当たりながら王子は小さな声で答えた。
 彼女の言う通り、王子はこの食事が気に入っていたのだ。
 「それじゃ、次は城下町へ行ってみようよ。」
 「ええ!」
 プラムはそう言って、驚く王子の手を引っ張って城下町へと向かった。


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