ネイロスの3戦姫


第8話その.3 エスメラルダ大乱闘!!  

同時刻、宮殿から脱出したエスメラルダ達は、兵の持っていた服を盗み出し逃亡を続け
ていた
 「もう・・・なんであいつ等はまともな服を持ってないのかなー。」
 マントとシャツを着ているエスメラルダが、愚痴をこぼしている。
 「仕方ありませんよ、裸で逃げるよりはマシです。」
 皮製のロングコートをそれぞれ着ているマリオンとパメラがエスメラルダをなだめてい
た。
 セルドックに丸裸にされていたエスメラルダ、マリオン、パメラの3名は、盗んだマン
トやロングコート、長袖のシャツを着ていた。それによりどうにか寒さは凌げるが、ズボ
ンの類を盗み損ねた為、下半身は靴以外、何も身につけていない状態である。
 ロングコートやマントで下を隠せるが、下手に動き回れば大事な部分が丸見えになって
しまう。
 「あー、お尻がスースーするよ。ライオネットのズボンをもらっちゃおうかな?どうせ
気絶してるし。」
 エスメラルダは、女狂戦士達に痛めつけられ気絶したままのライオネットを見てそう言
った。
 「そんな事したら悪いですよ。」
 「そーだね、パメラの言う通り。」
 パメラにたしなめられ、クスッと笑うエスメラルダ。
 だが、今彼女等に置かれている状況は笑い事では済まされない状態であった。
 彼女等が隠れているのは何と・・・火薬などを収納した弾薬庫なのだ。
 服を盗む際、兵達に見つかったエスメラルダは兵達に追い回された挙句、弾薬庫に逃げ
込んでいたのだ。
 その時点まではよかった。弾薬庫は再々使われる場所ではなく、危険極まりない弾薬庫
に近寄る者はいないのでエスメラルダ達は安心して身を隠す事が出来た。
 しかし・・・ネイロス攻略部隊を撃破された事が宮殿に伝わると、弾薬庫には数多くの
兵達が詰め掛けて、武器弾薬を運び始めたのだ。
 彼女等が隠れているのは、爆薬を入れた樽を積み上げている場所の裏である。まだ樽が
全て運び出されていないので見つかっていないが、次々運び出される爆薬の入った樽が無
くなれば、もはや身を隠せる場所は無くなり確実に捕まってしまう。
 「参ったな〜、ボク1人なら何とかなるんだけど・・・」
 「すみませんエスメラルダ姫・・・足手まといになってしまって・・・」
 申し訳なさそうにうなだれるマリオン達を見て、エスメラルダは首を横に振った。
 「ううん、そんな事言わないでよ。君達がいてくれたからボクは助かったんだ、気にし
ないで。」
 「はい・・・」
 「それに・・・ライオネットもね。」
 振り返ったエスメラルダは、床に伸びているライオネットの頭をそっと撫でた。
 自分を命がけで助けてくれたライオネットを必ず守ってみせる、エスメラルダは心に誓
っていた。そして、同じ様に逃亡している姉のエリアスと、今だ捕まっているであろう妹
のルナも助けなければ、と思っていた。
 しかし、自身の事だけでも手一杯なのに、姉妹やライオネット、そしてマリオンとパメ
ラまでも助けなければならない状況が彼女の双肩に重く圧し掛かっている。
 でも、エスメラルダは逃げようなどとは全く思っていない。
 悪烈なるダルゴネオスや黒獣兵団と刺し違えてでも、皆を助けるつもりだった。
 「黒獣兵団なんか・・・この爆薬で吹っ飛ばせたらいいのに・・・」
 「出来ればそうしたいけどね。」
 呟くマリオンに答えたエスメラルダは、急に兵達の動きが無くなった事に気が付き、樽
の隙間から弾薬庫を見回した。
 「やった・・・あいつらいなくなったよっ、早く出ようっ。」
 エスメラルダ達は歓喜した。兵達が弾薬を運ぶのを一時中断したのだ。今がチャンスだ。
 「待ってて姉様、ルナ。今すぐ助けに行くからね。」
 3人はライオネットを抱え、足音を忍ばせて入り口に近寄った。
 「!!・・・大変、早く隠れてっ。」
 突如エスメラルダが声を上げてマリオン達に隠れるよう促した。
 足音が聞こえてきたのだ。その音は確実に弾薬庫に向かっている。
 「来るなら来いっ、やっつけてあげるから・・・」
 足音から察するところ、相手は1人のようである。入り口でドラゴン・ツイスターを身
構えているエスメラルダは、固唾を飲んで相手が来るのを待った。
 そして、足音は入り口の前で止まった。
 「・・・後はここだけか・・・」
 入り口に立ち止まった男は、辺りを伺うような仕草をして弾薬庫に入ってきた。
 「多分いないだろうな・・・んっ?」
 男は只ならぬ気配を感じて振り返った。
 「でやあ〜っ!!」
 振り返った方向から、巨大な双刃の矛を振りかざした赤毛娘が襲いかかってきたのだ。
 「うわあっ。」
 間一髪、矛の一撃をかわした男は、アタフタと弾薬庫の中央に逃げた。
 「そーれっ。」
 今度は部屋の隅にいたマリオンとパメラが、男を目掛け樽を転がしてきた。
 「のわっ!?」
 樽に足を取られた男にエスメラルダが飛びかかり、男の腹に膝蹴りをお見舞いする。
 呻き声を上げる男を踏みつけたエスメラルダは、ドラゴン・ツイスターの切っ先を男の
顔に付きつけた。
 「参ったか、このっ。」
 「ぐえ・・・ま、まってくれ・・・あなたは・・・エスメラルダ姫か?」
 「そ−だよ、文句ある!?」
 目を吊り上げて迫るエスメラルダに、男は両手を上げて敵意が無い事を示した。
 「わ、私はデトレイド民兵軍のダスティンと言う者だ。ネルソン司令と一緒にあなた達
3姉妹を助けにきた。私は味方だ。」
 「みかたぁ?この格好のどこが味方よ、ふざけるなっ。」
 黒獣兵団の鎧を着ている男、ダスティンの股間に問答無用で蹴りを入れる。
 「のおっ!!お、おおお〜。」
 股間を蹴り飛ばされたダスティンは、声を詰まらせて悶絶した。
 「ふん、ボクを騙そうったってそうはいかないよ。」
 「あの・・・エスメラルダ姫・・・」
 「なに。」
 恐る恐る近寄ってくるマリオン。
 「その人・・・ネルソン司令がどうのと言ってましたよね?確か、ライオネットさんを
助けてくれた人がネルソンと言う人だとか・・・と、言う事は・・・その人、本当に味方
ですよ。」
 「えっ?」
 マリオンの言葉を聞いたエスメラルダの目が点になる。
 「どーするんですかぁ。この人、完全に気絶してますよ。」
 「いやあの、その・・・きゃ〜大変っ!!ごめんなさーいっ!!目を覚ましてー!!起
きろー!!」
 伸びているダスティンの肩を掴んで揺さぶるが、一向に目を覚ます気配は無い。エスメ
ラルダのバカ力で股間を蹴り上げられたのだ、目を覚ます以前に、キ○タ○が粉砕されて
いないかどうかを心配したほうがよさそうだ。
 「あーん・・・どーしよう・・・」
 「どーしようじゃありませんよ。」
 「ナハハ・・・」
 マリオン達に睨まれ、笑ってごまかすエスメラルダ。
 今だ目を覚まさないライオネットに加え、エスメラルダの早とちりの犠牲(!?)にさ
れたダスティンまで連れて逃げねばならないのだ。
 猶予は無い。すぐにでも兵達が武器弾薬を取りに来るはずだ。その前に弾薬庫から出な
ければいけない。
 「マリオン、パメラ・・・ゴメンね。悪いけど・・・」
 「・・・わかってますよ。この人を担いで行けって言うんでしょう?」
 渋々ダスティンの両肩を担いで歩き出すマリオンとパメラ。
 「よいしょっと・・・意外と重いな。」
 エスメラルダは、少しよろけながらライオネットを背中に背負った。
 ダスティンが入ってきた入り口から出てきた5人は、外に兵達がいないか確認する。
 「今のところ誰もいないね。」
 「・・・早く行きましょう。」
 歩き始めるエスメラルダの背中に背負われていたライオネットの目が、少しだけ開いた。
 「う・・・うん・・・」
 微かな声を漏らすライオネット。僅かに開かれた彼の目に、真紅の美しい髪が映る。
 「この髪は・・・エスメラルダ姫様の・・・ひめさ・・・ふぇ、ふぇっクションッ!!」
 髪で鼻腔をくすぐられたライオネットが盛大なクシャミをした。
 「!?・・・ら、ライオネット!!」
 びっくりしたエスメラルダが、慌てて振り返った。その反動でライオネットはエスメラ
ルダの背中から転げ落ちる。
 「あだっ、イテテ・・・あっ、姫様っ!!」
 尻餅をついているライオネットは、目の前に立っているエスメラルダを見て喜びの声を
上げた。
 「あ、ああ・・・姫様・・・元に戻られたんですねっ!?」
 「う、うん・・・それより君は大丈夫?」
 互いに見詰め合う2人・・・ライオネットの目に涙が溢れてくる。
 「もう・・・元に戻らないかと思ってました・・・よかった・・・本当によかった・・・
」
 流れる涙を拭おうともせず、ライオネットはエスメラルダの手を取って喜んだ。そして
エスメラルダも、ライオネットの傷だらけの手を握り返した。
 「ボクも嬉しいよ、ライオネット・・・だい・・・すき・・・だよ・・・」
 エスメラルダの口から、微かな声が漏れる。
 「ひめさ・・・」
 エスメラルダが今言った言葉は・・・ライオネットにとって最高に嬉しい言葉であった・
・・が、その喜びも、お呼びでない邪魔者どもの手で台無しにされた。
 「おい、何やってんだお前等っ?」
 突然の声に振りかえる一同。周囲に黒獣兵団の兵達が取り囲んでいるのだ。
 「あ、ああ・・・」
 ダスティンを抱えているマリオンとパメラが真っ青になる。
 「しまった・・・さっきのくしゃみで・・・」
 狼狽するライオネット。その前に、ドラゴン・ツイスターを身構え、エスメラルダが立
ち上がる。
 「お前達と遊んでいる暇は無いんだ、退かないなら容赦しないわよっ。」
 「ほう、誰かと思えばエスメラルダ姫様じゃねーか、探す手間が省けたぜ。」
 銃を構えた男が前に歩み寄り、エスメラルダを睨む。
 「こいつ、俺達の服を着てやがる。お姫様が盗っ人かい?いけないねえ・・・今すぐ返
してもらおうか、ああん?」
 横にいた兵が、パメラの着ているロングコートを掴んで引き上げた。
 「や、やめてっ。」
 「ほれほれ、さっさと脱ぎな。」
 パメラの服を脱がそうとする兵。
 「手を離せっ、このゲスめっ!!」
 パメラを引きずり上げた兵に、ライオネットが詰め寄った。
 「ゲスってのは俺の事かい?なめんじゃねーぞメガネ野郎がっ!!」
 ゲス呼ばわりされて怒る兵が、ライオネットの顔を殴る。
 「この!!」
 兵の眉間に、ドラゴン・ツイスターが叩きつけられた。顔中血まみれにして吹っ飛ぶ兵。
 「よくもライオネットを殴ったな!?ライオネットをイジメる奴はボクが許さない!!」
 エスメラルダが怯む事無く立ち向かう。
 「こ、こいつめっ、おわっ!!」
 「ひえっ。」
 鉄の刃が凄まじい勢いで空を切り、2人の兵が宙に舞った。
 「うわ・・・ちょっとまて・・・」
 仲間を全員倒され、銃を構えていた兵がヨロヨロと後ろに下がった。
 「残ってるのはあんただけだよ、文句があるんなら自慢の銃で撃てみなよ、さあ。」
 「うぎぎ・・・地獄に行きやがれっ!!」
 挑発された兵は、銃口をエスメラルダに向けた。そして指がトリガーを引こうとしたそ
の瞬間、背後から現れた白い影が兵に襲いかかった。
 「グオオンッ!!」
 白い影は凄まじい咆哮を上げ、兵の首筋に噛み付いて引き裂いた。兵は血飛沫を上げて
昏倒した。
 「アルバートッ。」
 踊り出た白い影を見たエスメラルダとライオネットが驚嘆の声を上げる。
 「ウォン!!」
 スタッと地面に降り立つ白い影。拷問室の警備兵に葬られていた筈のアルバートが、精
悍な勇姿を現したのだ。
 「アルバート、お前・・・生きてたのかっ。」
 親友を助ける為に駆け付けた白き狼を、ライオネットは歓喜で迎えた。
 「心配したんだぞ、僕を騙すなんて・・・でもよかった・・・お前が無事で・・・」
 「ワオン、ウォン。」
 敵を騙すには、まず味方からって言うだろう?アルバートは尾を振りながら答えた。
 「アルバート、無事だったのね?」
 マリオンとパメラ、そしてエスメラルダもアルバートの元に駆けより、愛しそうに頭を
撫でた。
 「う〜ん・・・何の騒ぎだよこれ・・・」
 背後から聞こえる声に、4人は振り返る。そこにはエスメラルダに股間を蹴飛ばされて
気絶していたダスティンが、目を覚まして起き上がっていた。
 「こ、これは・・・」
 地面に倒れている兵達の姿を見て、ダスティンは声を失った。これだけの騒ぎを引き起
こしたのだ、直に仲間の兵が飛んで来るであろう。
 「あ〜あ、隠密作戦が全部パァだ・・・」
 失意の声で頭を抱えるダスティン。
 「あの〜。さっきはゴメンね・・・」
 早とちりした事を心配しながら、愛想笑いでダスティンに近寄るエスメラルダ。
 「もういいですよ、まったく・・・突然現れた私も悪いんですから、いてて。」
 今だ痛みの残る股間を押さえ、ダスティンは渋々立ち上がった。
 「!?、伏せろっ!!」
 ダスティンの突然の声に、皆一斉に地面に伏せた。そして間髪入れず銃声と共に弾丸が
頭上を飛び抜けていく。
 弾丸が飛んで来た方向には、新手の兵達が銃を構えて立っている。
 「あいつら・・・」
 次弾を装填している兵達を見ながら、エスメラルダは無謀にも突進していった。
 「危ない姫様・・・ああ!?姫様っ、お尻が・・・」
 うろたえるライオネット。
 ヒラリと舞うマントの裾から、エスメラルダの白くプリンとしたお尻が丸見えになった
のだ。
 「おおっ!?」
 ノーパン状態のエスメラルダを見て、銃を構えていた兵達の動きが止まった。
 「でぇやーっ!!」
 鼻の下を伸ばした兵達に、ドラゴン・ツイスターの豪快な一撃が決まった。
 「どひ〜っ!!」
 不意をつかれ、銃を撃つ間も無く兵達は全員薙ぎ倒された。
 「さあ、みんな早く逃げよう。」
 ライオネット達の前に戻ってくるエスメラルダ。
 「わ〜、ひ、姫様っ、お尻が見えてますって〜。」
 目を手で覆いながら、ライオネットが声をかけた。
 「お尻?あっ・・・そー言えば・・・あああ・・・ボクったら・・・なんて恥かしい事・
・・」
 ノーパンである事を思いだし、慌ててマントでお尻を隠す。
 「ライオネットっ、ズボンちょうだいっ、早くっ!!」
 「は、はいっ、ただ今すぐに・・・あら、あわわ・・・」
 エスメラルダに言われ、ライオネットは自分のズボンを脱ごうとする。しかし、慌てて
脱ごうとしたため、よろけてエスメラルダの前で見事に転倒した。
 「わっ!?」
 「きゃあっ。」
 巻き添えでエスメラルダも転ぶ。
 「いたた・・・あ?」
 足を広げて尻餅をついているエスメラルダ。その前で倒れているライオネットの視線の
先が、大きく広げられたエスメラルダの股間に・・・そう、エスメラルダの大事な部分を、
ライオネットに直視されてしまったのだ。
 「!!」
 速攻で股間を隠すが、時、すでに遅し。
 「あ、あ・・・あの〜。」
 ライオネットの鼻から血が流れている。
 「ねえ、ライオネット・・・見た?」
 「いや、その・・・ピンク色の、その・・・」
 「バカーッ!!」
 エスメラルダの往復ビンタ炸裂!!
 「のお〜っ。」
 鼻血を噴出させ、ライオネットはぶっ倒れた。
 「何のん気に寝てンのよっ、さっさと逃げるわよっ!!」
 顔を真っ赤にしながらズンズン歩いていくエスメラルダ。ライオネットに見られた腹い
せに倒した兵を蹴飛ばした。
 「ズボン脱げっ。」
 「へっ?やらせてくれるの?」
 「あのなーっ!!ズボンよこせっ、このっ、このっ!!」
 「ひい〜!!」
 間抜けな返答をする兵を叩きのめし、全員のズボンを強奪する。フリチンにされた兵達
が泣きながら逃げて行った。
 「過激なお姫様だ・・・で、こいつはいったい何者だ?」
 呆れた顔のダスティンは、ライオネットを指差してマリオン達に尋ねた。
 「まあ、その〜、すっごく間の悪い人です、ハイ。」
 「だろうね。」
 頷き合うダスティンとマリオン達。
 「う〜ん、ひ、ひめしゃま〜。」
 「クオーン・・・」
 お前って本当に報われない奴だな・・・情けなく伸びているライオネットに、アルバー
トはそう言って鳴いた。
 「ダスティン班長ーっ。」
 エスメラルダ達の背後から、ダスティンの仲間が駆けつけてきた。その声に振りかえる
一同。
 「お、おお皆・・・よく来てくれた。」
 「エスメラルダ姫がみつかったのですね!?よかった・・・あれ?どうしたんですか、
股を押さえて。」
 「う、うん、ちょっとな。」
 股間の痛みを堪えているダスティンを不思議そうに見ている仲間達。
 「話は後だ、今すぐ逃げるぞ。」
 新手が襲ってくる事を察し、脱出を促すダスティン。
 「逃げるって、どうやって・・・」
 突然の事に、どう対処していいか迷っている救出隊のそばに、エスメラルダが寄ってき
た。
 「誰かライター持ってない?」
 「持ってますけど、何をするつもりですか。」
 「コソコソするのってボクの柄じゃないんだ、ようは逃げる事が出来ればいいじゃん?
ボクに任せてよ。」
 救出隊員からライターを受け取ったエスメラルダは、何を思ったかライターに火をつけ
て弾薬庫に投げ込んだ。
 「!!・・・ちょっとっ!!」
 「逃げないと火ダルマだよ。」
 「うわ〜っ!!」
 一斉に逃げ出す救出隊達。
 「何考えてるんですかっ、あなたはーっ!!」
 「もう私は知らんぞ・・・」
 血相を変えて走るダスティン達の後ろから、ズボンを履き終えたマリオン達とライオネ
ットも続く。
 「まってください姫様〜!!」
 ドタドタと走っていく一行の前に、黒獣兵団の兵達が立ち塞がる。だが、目の前の兵達
に目もくれず、エスメラルダ達は突進してくる。
 「止まれコラッ、逃げるんじゃ・・・お、おい・・・」
 「早く逃げなさーいっ!!弾薬庫が吹っ飛ぶよーっ!!」
 兵達の横をすり抜けながら叫ぶエスメラルダ。
 「へ?」
 突然の事に口を開けたまま唖然としている兵達。
 そして・・・
 ドオーンッ!!
 大音響と共に、弾薬庫が火柱を上げて大爆発した。



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