ネイロスの3戦姫


第7話その.5 エスメラルダ復活!!  

 セルドックの自室や拷問室がある場所は、ダルゴネオスの住む本館と区画が分かれてお
り、本館に通じる廊下にはセルドックの手下が集まって、逃亡しているライオネット達が
本館に逃げ込まないよう封鎖していた。
 さらに、セルドックの住む区画内では多くの手下達が捜索活動を展開している。
 宮殿内で大騒ぎが起きている中、女狂戦士の2人は宮殿の屋上に上がってその様子を見
ていた。
 「ふふん、がんばってるねぇ。」
 腰に手を当てた姿勢で立っているギルベロは、ライオネット達が逃げている区画を笑い
ながら見ている。
 「おい、こんな所で油売ってていいのかい?あたし達も探しに行かなきゃ・・・」
 「まあ、待ちなよラーガ。赤毛のボーヤとメガネ男達が宮殿内でウロウロしてるとは考
えられないね。あたしがメガネ男だったら、すぐに宮殿から逃げるルートを探して外に出
るさ。つまり、あの区画から外に出る場所を押さえれば、すぐに捕まえられるって訳さ。」
 「あ、なるほど。」
 感心した様に頷くラーガ。
 「あの区画から出る場所といえば・・・あそこだけだね。」
 ギルベロが指差す方向には、セルドックの住む区画から外に出るための非常階段がある。
 それは人1人がやっと降りれる程の幅の、簡素な階段だ。
 宮殿内を徹底捜査しろ。そう命令されている手下達は、宮殿内を探す事に没頭しており、
人目につかない非常階段を探す事にまで頭が回っていなかった。
 「もうじき手下どもに燻り出されて飛び出してくる頃だね、いくよ。」
 「あいよ。」
 2人は宮殿内を走り回っている手下達を無視し、非常階段を目指した。

 いち早く宮殿の非常階段に逃げていたライオネット達の耳に、宮殿内を走り回る手下達
の声と足音が聞こえてきた。
 「ライオネットさん・・・宮殿が騒がしいんですけど・・・」
 心配げに尋ねるパメラ。
 「脱走したのがバレたんだな、思ったより早かったな。」
 エスメラルダに肩を貸しているライオネットは、しばらく足を止めて宮殿に目を向けた。
 「でも心配は要らない。連中が非常階段に気がつく頃には、僕達は脱出に成功している
よ。」
 「やっと・・・帰れるんですね?家族の所に・・・」
 「よかった、おばあちゃん・・・」
 安堵の声を上げるパメラとマリオン。
 「さ、早く行こう、奴らがくる前に。」
 ライオネットがそう言って歩き出した時であった。
 「ヒャーッホウッ!!」
 鋭い掛け声と共に、パメラの首に鞭が巻きついた。
 「あうっ!?」
 悲鳴を上げたパメラが鞭に引きずられていく。
 「ぱ、パメラッ、きゃあ!!」
 助けようとしたマリオンを別の鞭が襲う。
 「ククク・・・甘いね、手下どもをゴマかせても、あたし達はごまかせないよ。」
 暗闇からサディスティックな笑い声が聞こえてくる。
 「だ、誰だっ!?」
 「黒獣兵団の女狂戦士、カマキリ女ギルベロ、推参!!」
 暗闇から鞭を構えたギルベロが姿を見せた。マリオンとパメラの首に鞭を巻きつけ、自
分の足元に引きずる。
 「お前は・・・あの時の・・・」
 「ヒヒ、覚えてくれてたのかい?うれしいねぇ〜。」
 凶悪な眼でライオネットを見据えるギルベロ。
 「お前達に逃げ場なんかないのさ、観念おし!!」
 ライオネットの背後から太い声が響く。声の主はムカデ女こと、巨漢の女傑ラーガだ。
 ライオネットは戦闘用のハンマーを身構えた。
 「フン、そんな物であたしと戦うつもりかい?」
 ふてぶてしい面構えのラーガの手には、エスメラルダの武器であるドラゴン・ツイスタ
ーがあった。
 「それは・・・」
 階段の上りはギルベロに、下りはラーガに塞がれている。4人に逃げ場は無くなった。
 「あ、あうう・・・」
 迫り来る女狂戦士達に、ライオネットの腕にしがみ付くエスメラルダ。
 「ククク・・・どーしたのさ、文句があるんなら反撃してみなっ。」
 ドラゴン・ツイスターを小脇に抱え、指をボキボキ鳴らしながらラーガが歩み寄ってく
る。
 「くっ・・・」
 逃げ道を塞がれたライオネットは、苦悶の表情で女狂戦士を見た。
 もはや絶体絶命であった。
 「さあ、セルドック殿下がお待ちかねだよっ。」
 ライオネットとエスメラルダを捕まえたラーガは、強引に2人を近くの部屋に投げ込ん
だ。
 「わあっ!?」
 「きゃあ〜っ!!」
 窓から部屋に放りこまれた2人は、ゴロゴロと床に転がった。
 「よう、てめえら・・・よくも俺様をコケにしてくれたな。この代償は高くつくぜっ。」
 2人が投げ込まれた部屋に、憎々しげに見下ろすセルドックが立っていた。
 「ひっ・・・あああ・・・」
 催眠術でセルドックに対する(恐怖)を刻み付けられているエスメラルダは、セルドッ
クを見て声を失った。
 「俺様から逃げられるとでも思ったかエスメラルダ。どこに逃げてもムダだぜ、お前は
俺様の可愛い奴隷なのさ、一生な。ヒヒヒッ。」
 勝ち誇った様に笑うセルドックを、女狂戦士達は呆れて見ている。
 「・・・なに言ってんだよ、あのサド殿下・・・あたし等が見つけなきゃ逃げられてた
クセに・・・」
 ギルベロとラーガのボヤキが聞こえないまま、セルドックはエスメラルダに歩み寄った。
 「あひっ・・・ゆるして・・・」
 「ケッ、いまさら遅せぇんだよ。お前みてえな悪い子はタップリお仕置きしなきゃなあ
〜。」
 「い、いやあ・・・」
 悲痛な声をあげ、恐怖に慄くエスメラルダ。
 「やめろ、このチビめっ。姫様に指一本でも触れてみろ・・・お前を叩きのめしてやる
っ!!」
 邪悪な眼で睨むセルドックからエスメラルダを守るため、ライオネットは勇気を振り絞
って立ち塞がった。
 「叩きのめすだぁ?ほざくなクソメガネッ!!」
 セルドックのパンチがライオネットの顔にめり込んだ。
 「ぐっ・・・う・・・」
 ライオネットの口から血が滴り落ちる。だが、ライオネットは怯まなかった。目を開き、
両手を広げてエスメラルダをかばう。
 「姫様の苦しみに比べたらこれぐらい何でもないぞ・・・お前なんかに負けるもんかっ、
悔しかったらもっと殴ってみろ軟弱チビッ!!」
 「そうかい・・・だったら地獄に落ちやがれっ!!」
 怒り狂ったセルドックがライオネットにパンチの連打を浴びせた。それでもライオネッ
トは倒れない退かない。
 「クソッ、さっさとクタバリやがれーっ!!」
 セルドックは何度も殴った。それこそライオネットの顔が歪むまで・・・
 「ハアハア・・・参ったかコノヤロウ・・・」
 疲労が限界まできたセルドックは、荒い息をついて両手を下ろした。
 「ぐぐ・・・ま、参ったのはお前だ、ろう?・・・お前の軟弱パンチなん・・・か、痛
くも痒くも・・・ぐふっ・・・」
 血反吐を吐きながら、ライオネットは尚も立っている。彼はもはや気力だけで立ってい
た。足元はふらつき、意識は朦朧としている。
 「見てられませんね殿下、こんなメガネ男、殿下の手を煩わせるもでもありませんよ。」
 セルドックの傍らにギルベロが姿を見せた。
 「つ、次はお前かカマキリ女め・・・お前なんか怖くないぞ・・・かかって来いっ。」
 ライオネットは声を振り絞ってギルベロを見据える。
 「ふうん・・・あたしが怖くないってかい・・・おなめでないよっ!!」
 鋭い鞭がライオネットに襲いかかった。
 「ぐあっ!!」
 激しい痛みがライオネットの全身を駆け巡る。
 「ああっ・・・らいおねっと・・・」
 エスメラルダが、よろめくライオネットにすがりつく。
 「ひめさま・・・」
 体を反転させたライオネットは、エスメラルダに鞭が当たらぬようにかばった。
 「こいつ・・・いいかげんにしろっ!!」
 鞭の雨がライオネットの背中を打つ。鞭の衝撃で倒れこんだエスメラルダの上に、ライ
オネットは自分の体を覆いかぶせた。
 「・・・何があってもお守り・・・します・・・エスメラルダ姫様・・・」
 激しい鞭の連打に耐え、エスメラルダを守るライオネット。
 日頃から根性の無い腰抜け男爵とバカにされていたライオネットだったが、エスメラル
ダを守るその姿は、腰抜けなどではなかった。彼にこれほどの根性があったなど、誰が想
像したであろうか・・・全ては愛するエスメラルダを守りたいが故であった。愛するエス
メラルダを守りたい・・・ただその一心で・・・
 「しぶとい奴だね、あたしが引導を渡してやるよっ。」
 不意に現れたラーガがライオネットを掴んで持ち上げた。そして自分の両肩にライオネ
ットを仰向け状態で抱え上げ、豪腕で背骨を捻じ曲げた。
 「うああーっ!!」
 ラーガの凄まじい背骨折りに、ライオネットは絶叫を上げる。
 「あーっ、やめてーっ!!この、この・・・」
 叫びながらラーガの体を叩くエスメラルダ。
 「あたしに逆らおうってのかい?ボーヤ・・・」
 「あう・・・」
 ジロリと睨むラーガ。その眼光にエスメラルダは尻ごみする。催眠術の恐怖はセルドッ
クのみならず、ラーガの姿にも及んでいたのだ。
 「ひめさま・・・早くお逃げ、くだ、さい・・・ううう。」
 苦悶の表情でエスメラルダを見るライオネットは、自身の危機をも省みず、エスメラル
ダに逃げるよう促した。
 「もうやめてーっ!!おねがいっ!!」
 部屋の隅で、背中合わせ状態で縛られているマリオンとパメラが叫んだ。
 「うるさいね小娘どもがっ。」
 「ひいっ。」
 ギルベロが鞭でマリオン達を黙らせる。
 「ざまーねーなクソメガネ。降参するなら許してやるぜ。」
 ラーガの背後に立っているセルドックが笑いながら苦しむライオネットに尋ねた。
 「うるさい・・・誰が降参するも・・・んか・・・クタバレ・・・チビ。」
 「へっ・・・そうかい。いいだろう。やれっラーガ、背骨をへし折ってしまえっ!!」
 「了解っ。」
 喚くセルドックに答える様に、ラーガは更に力を込めてライオネットの体を捻じ曲げる。
 「あが、ああ・・・」
 「おりゃーっ、これでもかっ。オラオラッ・・・らあ!?」
 不意にラーガの声が途切れた。ラーガの尻をエスメラルダが殴ったのだ。
 「あうう・・・や、やめろ・・・らいおねっとを・・・はなせっ。」
 震えるエスメラルダの手には、大型のハンマーが握られていた。先ほど拷問室から脱出
する際に、ライオネットが護身用にと持ち出してきた戦闘用のハンマーだ。
 恐怖に支配されながらもエスメラルダは、自分を庇ってくれたライオネットを救出する
べく、巨漢のラーガにハンマーの先を向ける。
 「・・・こいつ、よくもあたしの尻を殴ったね・・・」
 ラーガの目に、凄まじい憎悪が宿った。鬼のような形相でエスメラルダを睨むラーガ。
 「メガネ男の前に、お前から始末してやるよ。」
 ライオネットの体を投げ出したラーガは、指をボキボキ鳴らし、エスメラルダに詰め寄
った。
 「あう・・・あ、ああ・・・」
 エスメラルダの足は、狂おしい恐怖でガタガタ震えている。彼女の目に、ラーガと背後
に立っているセルドックの姿が恐怖の魔獣の姿となって映った。
 「そんなハンマーであたしを倒そうってのかい?それじゃ、あたしはこいつで相手して
やろうじゃないか。」
 そう呟くラーガは、エスメラルダの武器であるドラゴン・ツイスターを手にとって身構
える。
 「あの世に行きなっ、ボーヤ!!」
 ドラゴン・ツイスターを振りかざし、凄まじい勢いで突進してくるラーガ。
 「ひっ・・・わああーっ!!」
 エスメラルダの恐怖が頂点に達した。彼女の頭が真っ白になったその時、エスメラルダ
は信じられない行動に出た。
 ハンマーをブンブン振り回し、無謀にもラーガ目掛けて飛びかかって行ったのだ。
 「うがーっ!!」
 「ああーっ!!」
 2人が激突する瞬間、エスメラルダの持っていたハンマーが彼女の手からスッポ抜けた。
そして突進してきたラーガ目掛けハンマーが飛んで行った。
 「ぐわっ!?」
 ハンマーがラーガの顔面に直撃した。カウンターをモロに食らったラーガの体が、首を
90度曲げた状態で真後ろに倒れこんだ。
 「のわ〜!?」
 ラーガの後ろにいたセルドックが悲鳴を上げる。そのセルドックの頭上に、ラーガの巨
体が落ちてくる。
 「ふぎゅっ!!」
 ラーガの下敷きになったセルドックが踏み潰されたカエルのような声を上げた。
 顔の骨を折られ、泡を吹いて悶絶しているラーガ。そして手足をピクピク痙攣させてい
るセルドック。
 「う、あ?」
 倒れているセルドックとラーガの姿を見たエスメラルダの頭に、(プツン・・・)と音
が響いた。
 「あれ?・・・ボクはいったい・・・」
 放心状態のエスメラルダの口から、微かな呟きが漏れる。
 今まで何かに束縛されていたかのような感覚が失せ、エスメラルダの意識が徐々に覚醒
していく。
 その彼女の眼に、父王エドワードから賜った愛用の武器ドラゴン・ツイスターが映った。
 「ドラゴン・ツイスター・・・ボクの・・・」
 無意識の内に己の武器を手にするエスメラルダ。
 「ああっ、ら、ラーガあっ!!」
 エスメラルダの耳に、ギルベロの悲痛な叫びが聞こえた。
 「おいっ、しっかりしろ・・・ラーガッ。」
 倒れた相棒に駆け寄り、肩を揺する。しかし、頬骨を砕かれているラーガは意識を失っ
たままだ。
 「てめえ・・・よくもラーガをっ!!」
 相棒を倒され、鬼のような形相になったギルベロが鞭を構え、エスメラルダに向き直っ
た。
 「クタバレ小娘ーっ!!」
 襲い来るギルベロ。エスメラルダはユラリと立ち上がり、ドラゴン・ツイスターを身構
えた。
 「くたばるのは・・・あんたよカマキリ女!!」
 その眼は覇気と怒りに満ちていた。そして両手に構えられたドラゴン・ツイスターが唸
りを上げて大回転する。
 「トルネード・クラッシャーッ!!」
 エスメラルダの掛け声と共に、凄まじい衝撃と爆風が巻き起こり、ギルベロの鞭が八つ
裂きになった。
 「うわあーっ!!」
 最強技をまともに受けたギルベロの体が中に舞う。
 「ぐへっ!?」
 頭から、まっ逆さまに床に叩きつけられたギルベロが血反吐を吐いて転がった。
 「ハアハア・・・ボクは・・・何をしてたんだ?」
 倒したギルベロとラーガを見たエスメラルダは、自分の状況を把握しようと懸命になっ
ている。
 「あ・・・やだっ・・・裸じゃないかっ。」
 全裸である事を思いだし、両手で体を隠すエスメラルダ。その彼女の脳裏に、今まで起
きていた事の全てが走馬灯の様に映し出される。
 「確か・・・ヒムロとか言う奴に・・・それから・・・あっ・・・ああっ・・・」
 自分の頭とお尻に手を当てる。そこには犬の耳と尻尾を模した飾りがあった。
 そう・・・自分は催眠術で恐怖の虜にされ、狂おしいほどの辱めを受けていたのだ。そ
して・・・
 「ら、ライオネット・・・」
 エスメラルダを助けようとして、逆に痛めつけられたライオネットの姿が・・・
 「うぎぎ、お、重い・・・」
 ハッとしたエスメラルダは、声のする方向を見た。そこにはラーガの下敷きになってい
る忌まわしきセルドックの姿があった。
 「うにょれっ、やっと出られた・・・うぎっ!?」
 ドカッ。
 ラーガの下から這い出したセルドックの眼前に、ドラゴン・ツイスターの切っ先が突き
立てられた。
 「わは・・・なは、なは・・・え、エスメラルダ?」
 恐る恐る顔を上げるセルドックの目に、怒りに満ちたエスメラルダの顔が映った。
 「やあ、軟弱チビ助。元気だった?」
 「のお・・・」
 仁王立ちするエスメラルダに、声を失うセルドック。
 「今まで散々ボクをイジメてくれたよね?おまけにライオネットまで・・・今までの借
り、一億倍にして返してあげるよ。」
 ドラゴン・ツイスターを反転させ、セルドックを睨み据えるエスメラルダ。
 「わはは・・・ゴメンね・・・ゆるして・・・こ、今度は俺が犬になるからさ・・・そ
れで・・・」
 「許してあげるよ、なーんてね・・・ふざけるなっ!!このクソチビがーっ!!」
 最強技、トルネード・クラッシャーが再度炸裂する。
 「どひゃ〜!!」
 グワシャ〜ン!!
 ガラス窓が轟音をあげて四散し、セルドックの体が宮殿の外に弾き飛ばされた。
 「んわああ・・・」
 セルドックの絶叫が漆黒の闇に吸い込まれていった。
 バシャーン。
 水飛沫の音がこだまし、エスメラルダは窓に駆け寄った。
 窓の下では、月の薄明かりに映し出された池に、白目を向いた状態でプカプカ浮いてい
るセルドックの姿が見えた。
 「ちっ、運のいい奴・・・」
 そう呟いたエスメラルダは、部屋の中を振り返った。
 「エスメラルダ姫っ、正気に戻られたのですか!?」
 部屋の隅で背中合わせに縛られているマリオンとパメラがいた。2人に駆け寄るエスメ
ラルダ。
 「大丈夫?」
 「あたし達は大丈夫です・・・それより、ライオネットさんが・・・」 縄を解かれた
マリオン達は、床に倒れているライオネットに視線を向けた。
 「あ・・・ライオネット。」
 慌てて駆け寄るエスメラルダ。
 「う、う・・・ん・・・ひめさま・・・早くお逃げください・・・私にかまわずに・・・
」
 ライオネットの意識は、今だラーガに痛めつけられている状況だ。その顔は、セルドッ
クと女狂戦士達によって、アザだらけになっていた。
 「ライオネット・・・ボクを守ってくれたんだね・・・ありがとう・・・君は・・・ボ
クの守り神だよ・・・」
 エスメラルダの目から、大粒の涙が流れた。そして、自分を命がけで守ってくれたライ
オネットの顔を胸にうずめ、額に口付けをした。
 「エスメラルダ姫・・・」
 その姿に、マリオンとパメラも感涙を流している。
 「今の音はなんだっ!?うっ・・・」
 不意に部屋の扉からセルドックの手下達が雪崩れ込んで来た。そして、床の上で伸びて
いる女狂戦士達と、破壊された窓を見て絶句した。
 それを見た瞬間、全てを理解した。復活したエスメラルダによって女狂戦士とセルドッ
クが倒された事実を。
 「お、お前がやったのか?」
 「そうだよ、セルドックの仇をとりたい人、ボクが相手になるよ、かかって来いっ!!」
 「え、遠慮しまーす。」
 セルドックの手下達は、あたふたと逃げて行った。
 「エスメラルダ姫、早く逃げましょう。」
 「そうだね。」
 マリオン達に促され、エスメラルダはライオネットの肩を担ぎながら答えた。
 「ライオネット・・・今度はボクが君を守ってあげるよ。」
 気絶しているライオネットを見ながら、エスメラルダは呟いた。







第8話に続く

次のページへ BACK 前のページへ