ネイロスの3戦姫


第6話その.3 裏切りの代償  

 ライオネットがマリオンと共に宮殿内を歩いているころ、夕食を終えたマグネアが召使
いに食後のコーヒーを持ってこさせていた。
 「お待たせ致しました・・・」
 「ありがとう、そこにおいてちょうだい。」
 召使いはトレイに乗せたコーヒーカップをテーブルに置き、コーヒーを注いだ。
 「?・・・どうしたの手が震えてるわ。」
 「あ、いえ・・・慣れていないもので・・・」
 召使いは何故か怯えたような表情になっており、コーヒーを注ぐポットの注ぎ口が、カ
タカタとコーヒーカップに当たった。
 「まったく、ここにはロクな召使いがいないのね。」
 不機嫌そうに愚痴をこぼすマグネア。
 「もういいわ、さっさと下がりなさい。」
 「は、はい。し、失礼致しました。」
 深く頭を下げた召使いは、コソコソと部屋を出ていった。
 マグネアはコーヒーカップを手に取り、美味そうにコーヒーを飲んだ。
 「おいしいわ、良い豆を使ってるのね。」
 デトレイドの民が口に出来ない上等のコーヒーを味わいながら、至福の時を満喫してい
た。
 「ヒムロは今どこにいるかしら・・・明日の朝には着くでしょうね。」
 ダルゴネオスの宮殿からネイロスの城まで、普通の人間なら休み無く走っても丸一日か
かる距離にある。だが、俊足のヒムロなら一晩で走り抜ける事が出来る。
 「早く帰ってらっしゃい、私の可愛いヒムロ・・・」
 目を細め、愛するマグネアの為に暗闇を駆けているであろうヒムロを愛しく想うマグネ
ア。
 「さて、お風呂にでも入って・・・う・・・?」
 立ち上がろうとしたマグネアは、急に眠気を感じて床に膝をついた。
 「ねむい・・・疲れたのかしら・・・」
 眠る時間には早すぎる。睡魔を払おうと首を振るが、そんな事ぐらいで眠気は収まらな
かった。
 眠気がさらに増していく。体に倦怠感を感じ、手足を動かすのも億劫になる。
 これは単なる眠気ではない、明らかに薬物によるものだ。
 「まさか・・・さっきのコーヒーに・・・」
 マグネアの脳裏に、怯えた表情でコーヒーを注いでいた召使いの顔が浮かんだ。間違い
無い、あの召使いがコーヒーに睡眠薬を一服盛っていたのだ。
 怯えた顔をしていたのは、おそらく何者かがマグネアに睡眠薬を飲ませる様に強要して
いたからであろう。
 一体誰がこんな事を・・・
 睡魔に翻弄されながら、マグネアは必死に立ち上がろうとする。だが、その甲斐も空し
く、マグネアは床に倒れ伏した。
 「ひ、ヒムロ・・・」
 愛しい部下の名を呼びながら、マグネアは意識を失った。
 
 「おいっ、起きねえかっ!!」
 睡眠薬で眠っていたマグネアの耳に濁声が響き、マグネアは目を覚ました。
 「う・・・なんなのよ一体・・・」
 首を振りながら自分の状況を把握しようとするマグネア。
 「はっ、こ、これは・・・」
 マグネアは驚愕した。両手両足を荒縄で縛られ、身動きが取れないようにされていたの
だ
 しかも彼女の周囲には荒くれた黒獣兵団の兵が取り囲んでいた。
 「ククク、良い女だぜ・・・」
 「ああ、そうだな。3姉妹にも引けをとらねえぜ。」
 下卑た声で見下ろしている兵たちに、思わず体を強張らせるマグネア。
 「何ですかあなたたちはっ、わ、私を誰だと思ってるの!?早く縄を解きなさい、この
無礼者っ!!」
 甲高い声で喚くマグネアだったが、兵たちは相変わらずニヤニヤ笑いながら立っている。
 「私にこんな事をして只で済むとお思いっ!?助けてヒムロっ、ヒムロ・・・」
 マグネアはハッとした・・・そう、頼みの綱である忠臣ヒムロはここにいないのだ。自
分の出した命に従いネイロスに向かっているのである。
 孤立無援の自分に気がつき、恐怖に支配されるマグネア。
 「ご機嫌は如何かな?マグネア殿。」
 不意に声が響き、取り囲んでいる兵たちの背後からブルーザーが現れた。
 「ぶ、ブルーザー団長・・・これは一体どう言う事っ!?私に対するこの様な仕打ち・・
・説明してちょうだいっ!!」
 困惑するマグネアを見るブルーザーの目は、嘲りに満ちていた。
 「説明?あんたまだ自分の立場ってもんが判ってねえようだな。あんたにとってここは
敵国なんだぜ、その敵国にノコノコ出向いてきて無事帰れるとでも思ってたのかい。」
 「なんですって・・・」
 突然態度を変えるブルーザー。
 至福の絶頂から奈落の底に叩き落され、マグネアは呆然とした。自分は利用され、嵌め
られていたのだと言う現実が、彼女を打ちのめした。
 その悔しさが、そして空しさが、マグネアに激しい憤りを生んだ。そして烈火のごとき
怒りを露にした。
 「誰のおかげでネイロスを破る事が出来たと思ってるのっ、それなのによくも裏切った
わね、この卑怯者っ!!」
 鋭い口調でブルーザーを罵るマグネアに、卑劣な暴獣はゲラゲラ笑い出した。
 「卑怯者だって?3姉妹を罠に嵌めたあんたに言われる筋合いはねーよ。それにあの皇
帝が情報の見返りをもたらしてくれるとでも思ってたのかい、甘いねぇ・・・大人しく情
報だけよこせばよかったのに、つまらん欲を張るからこう言う事になるんだぜ。」
 「まさか、ダルゴネオス皇帝も・・・」
 「そーいう事、陛下は用無しのあんたを厄介払いする様、俺達に命令したってわけさ。
人を呪わば穴二つってのはこの事だ。覚悟しな、あんたを守ってくれるヒムロとか言うカ
ラス野郎はいねえ。じっくりいたぶってやるぜ、3姉妹みてえにな・・・」
 邪悪な眼光がマグネアを射抜いた。そして、激しい怒りが急激に冷め、代わりに狂おし
い恐怖がマグネアを支配した。
 「あひ、ひいいっ。た、助けて・・・」
 怯え、うろたえるマグネア。だが、いくら助けを請おうとも彼女を助けてくれる者はい
ないのだ。
 「おい、野郎ども、こいつを好きなだけ可愛がってやろうぜ。」
 「へいっ。」
 嬉々とした声で返答した兵達は、怯えるマグネアを取り押さえた。
 「いやあっ、やめてぇっ!!」
 バタバタ暴れ悲鳴を上げるマグネアの両手足を押さえ、ドレスを破る。
 「イヒヒ・・・年増のくせに良い身体してるじゃねーか。」
 「誰が年増よっ、私はまだ29・・・あひいっ!!」
 激しく抵抗するが、女の細腕では荒くれの豪腕にあがらえない。紺色のドレスが四散し、
マグネアの身に着けている物は下着だけになってしまった。
 「見ろよ、黒い下着だぜぇ。なあんてヤラシイんだ。」
 両足を縛っていた荒縄を解き、足を大きく広げる。
 「私は男好きだって言ってるようなもんだな。そんなに男が好きなら俺達が相手をして
やるぜっ。」
 兵達はそう言うなり、マグネアのパンティーを引き裂いた。
 「きゃああっ!!だ、だめっ!!」
 マグネアの絶叫が響き、猛り狂った兵達の前に大事な部分が露にされてしまった。
 「イヒヒ〜、丸見えだぁ〜。」
 兵達はいやらしい目付きで開帳された秘部を見入った。
 そして兵の1人が白い太ももに手を伸ばし、股間を弄った。おぞましく動く手が、内股
から陰毛に覆われた秘部をいじる。
 「はあ、うっ・・・」
 「もうこんなに濡れてるじゃねーか。感じまくってるぜぇ。」
 「ブラジャーも外してやれ。」
 別の手が胸元に迫り、黒い絹のブラジャーを外す。そして見事な巨乳が揺れる。
 「でけえ・・・牛の乳だぜこりゃ。」
 「以外だな、乳首がピンク色だぞ。」
 手を押さえていた兵が巨乳を揉んだ。
 「あ、ひ・・・いやあ・・・」
 力を失い、恥かしさに涙するマグネア。
 「なーにが嫌だよ、エドワードとヒムロの野郎に足広げて見せてたくせによ、ええっ?」
 嘲笑うブルーザーが卑劣な口調でマグネアを侮辱した。
 「やめて、お願い・・・もうやめて・・・」
 「ケッ、今更おそいんだよ、俺が本当の男ってやつを教えてやるぜ。しっかり足を押さ
えてろ。」
 ブルーザーの命令に、兵達はマグネアが動けない様に押さえつけた。
 「あ、ああ・・・」
 悲痛な声を絞り出すマグネア。その目に、大きく怒張したブルーザーのイチモツが迫る。
 「どーだ、立派だろう俺のはよ・・・老いぼれ国王や陰険カラス野郎のと比べ物になら
ねーだろう?こいつをあんたのアソコにぶち込んでやるぜ。」
 「ひあっ、ああっ!!」
 巨大なイチモツをねじ込まれ、マグネアは絶叫した。
 「そうら、そらそらっ、気持ち良いだろうがっ。」
 ブルーザ−が激しく腰を動かす度にマグネアの巨乳が大きく揺れた。その刺激はマグネ
アを狂おしいまでに翻弄した。
 「あ、ああ・・・」
 急激に意識が遠ざかる。そしてマグネアの中にブルーザーの精液が放出された。
 「フフ・・・気持ちよかったぜぇ・・・」
 満足げに薄笑いを浮かべるブルーザー。
 「団長、俺達もいいッスか?」
 「おう、楽しみな。」
 ブルーザーの言葉に、兵達は大喜びでマグネアを陵辱する。
 「グヒヒーッ、もっとイカせてやるぜーっ!!」
 「ひ、いやーっ!!助けてヒムローっ!!」
 次々襲いかかる兵達に、抵抗できぬまま悶えるマグネアは、必死になってヒムロの名を
叫んだ。
 
 「我が君?」
 その頃、ネイロスの城に向かっていたヒムロは、不意にマグネアの声を聞いたような気
がして立ち止まった。
 「・・・気のせいでござるか・・・」
 辺りは半月の淡い光が差し込む森の中である。こんな所にマグネアがいるはずもなく、
単なる空耳かと思った。
 だが、ヒムロの胸中には言い知れぬ不安が過る。
 「まさか・・・我が君の御身になにか・・・」
 暴君ダルゴネオスの宮殿に大切な我が君を一人残してきた事を心配し、宮殿の方向を振
り返るヒムロ。
 「ムッ!?・・・」
 ヒムロの目が険しくなる。周囲に異様な気配を感じたのだ。
 「2人・・・いや、3人か・・・」
 周囲の木々が僅かにざわめいた。そして、3つの影がヒムロ目掛けて飛びかかってきた。
それはヒムロを始末するためにブルーザーが差し向けた刺客であった。
 「くたばれっ、カラス野郎っ!!」
 剣を振りかざしヒムロに叩きつけた。しかし、そこにはヒムロの姿はなかった。
 「!?・・・いねえ・・・」
 突然消えたヒムロに刺客たちは呆然とする。
 「甘いわっ、流星乱撃っ!!」
 刺客達の頭上からヒムロの声が響く。そして空中に飛び上がっているヒムロの両手から
無数の手裏剣が放たれた。
 「ぐわっ。」
 「げっ!?」
 手裏剣の雨を浴びた刺客達が一斉に倒れる。
 「フン、何者かは知らぬが拙者を倒そうとは笑止千万。」
 地面に降りたヒムロは、鋭い目付きで転がっている刺客達を見据えた。
 「立て。」
 「う、うぐぐ・・・」
 呻き声を上げている刺客達の1人を無理やり立たせたヒムロは、刺客の胸倉を掴んで睨
んだ。
 「うぬら何奴だ。何ゆえ拙者を狙った!?言えっ。」
 「・・・へ・・・しるかよ・・・」
 顔を背け、口を閉ざす刺客。
 「ほう、喋らぬつもりか。良い度胸でござる。」
 ヒムロの目が鋭く光った。その光はエスメラルダに催眠術をかけた時と同じ光であった。
 「ひっ!?ぎゃあああーっ!!」
 ヒムロの眼光を浴びた途端、刺客は切り裂くような絶叫を上げた。催眠術によって刺客
の精神に狂わんばかりの(恐怖)が叩きこまれたのだ。
 「あぎっ!!ぎ・・・ぐぐぐ・・・」
 口から泡を吹いて失禁する刺客。
 「さあ言え、誰の命令でござるか。」
 「あぶヴヴ・・・ぶ、ぶるうざぁ・・・だだ、だん、ちょおおお・・・」
 震える刺客の口から、ブルーザーの名前が漏れる。
 「ブルーザー団長だと!?何ゆえだっ、全部喋れっ!!」
 「ぐあ・・・だるご・・・ねおすは・・・まぐ、ねあ、は・・・もう、ようなしだと、
いった・・・おまえらを・・・しまつしろ・・・と・・・だんちょう・・・おれたち・・・
めいれいした・・・ぐぐ。」
 そこまで言うと、刺客は悶絶した。
 「そ・・・そんな、まさか我が君は・・・」
 先程の嫌な予感が的中した事に愕然とするヒムロ。そして全ての策略を知り、ヒムロの
目に怒りが宿った。
 「お・・・おのれっ・・・謀かったなダルゴネオスッ、ブルーザーッ!!」
 刺客を放り出した怒りのヒムロは、マグネアを助けるべく、元来た道を駆けて行った。




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