ネイロスの3戦姫


第2話その1.悪の軍団、黒獣兵団

ネイロスの国王エドワードの崩御は、程なく隣国のデトレイドにも伝わり、一報を聞い
たデトレイドの皇帝ダルゴネオスは、すぐさまデトレイド軍にネイロス進撃の檄を飛ばし
た。
 エドワード率いるネイロス軍に何度も攻撃を退かされてきたダルゴネオスは、主を失っ
たネイロスを攻略する絶好のチャンスと考え策略を巡らせていたのだ。
 しかし、デトレイド帝国は、度重なる飢饉と重税の為、民も兵も貧窮の極みに達してお
り、突然の出兵は多大なる負担を要する事であった。
 兵の士気が低下している事に悩んだデトレイド軍総司令官のネルソン将軍は、進撃準備
の命令を無視し、皇帝ダルゴネオスに諫言するべく皇帝の宮殿へと出向いて来たのであっ
た。


ネイロス進撃の命令が下された次の日の正午、皇帝の宮殿の廊下を怪訝な顔で歩く1人 の男がいた。  デトレイド軍総司令官ネルソン将軍であった。  彼は30代前半と言う若さにして司令官にまで上り詰めた才覚溢れる軍人であり、部下 を思いやる誠実な性格の持ち主であった事から、多くの民や兵達に信頼されている。  普段は温厚な彼も、何故かこの日に限って怒り心頭といった表情で廊下を歩いていた。  そしてその歩みは皇帝のいる部屋の前で止まった。  「皇帝陛下にお会い願いたい、通してくれ。」  突然現れたネルソン将軍に、入り口を守る衛兵達は戸惑いを隠せない様子でうろたえた。  「あの・・・申し訳ありませんが将軍、陛下は御食事中であります。いくらあなたでも、 うわっ!?」  「火急の用件だっ!!いいから会わせろっ!!」  衛兵に詰め寄ったネルソンは、あらん限りの声を張り上げる。すると、ネルソンの怒鳴 り声に呼応するかのように扉の向こうから野太い声が聞こえてきた。  「ネルソンか、入って来い。」  その声にネルソンは振りかえり、衛兵を突き飛ばすと荒々しく扉を開いた。  「失礼致しますっ。」  オロオロする衛兵を尻目に部屋に入っていくネルソン。  その部屋は皇帝ダルゴネオス専用のダイニングルームで、幾多の装飾品で飾られた豪勢 な造りの部屋の中央には、大理石製のテーブルがおかれ、その上座に大きく肥え太った男 がステーキをムシャムシャと頬張りながら座っている。  ツルツル頭に、いかにも暴君と言った面構えのこの男こそ、国の内外を問わず非道の君 主として恐れられているデトレイド帝国皇帝ダルゴネオスであった。  その右手にはトカゲのような大きな目の痩せたチビ男が、ガチャガチャと皿を鳴らしな がら忙しなくナイフとフォークを動かしている。  このチビ男はダルゴネオスの息子で、名前はセルドックと言う。父ダルゴネオスに負け ず劣らず非道な精神の持ち主として知られている。  「何の用だネルソン。メシの最中に押しかけてくるとは礼儀を知らん奴だな。」  「ご無礼を承知で参りました。ネイロス侵攻の件について陛下に御話致したい旨があり ます。」  ネルソンは怒りのこもった目でダルゴネオスを見ている。  「ほう?なんだ、言ってみろ。」  「侵攻の日時が2週間後とは一体どういうことなんですかっ。いくらエドワード国王が 崩御したとはいえ、余りにも早過ぎますっ。2週間では準備もままなりません。それに・・ ・民達は連日の飢饉のため明日の食事すら事欠く有様、今はネイロス侵攻よりも民達への 支援が急務であります。民達の貧窮によって士気の低下した今の我が軍では、ネイロスと 戦えませんっ。」  興奮気味に話すネルソンを、ダルゴネオスと隣のセルドックは嘲笑した。  「フン、何を言い出すかと思えばそんな事か。決定は全て余が下す。お前はそれに従っ ておれば良いのだ。」  「そー言う事だぜ、ネルソン。父上の決定は絶対だってのはお前も承知の上だろーが。 文句を言う暇があるんだったら兵どものケツを叩いて士気をあげるこったな。」  スープを下品にすすっているセルドックがトカゲのような目を向けてそう言った。  「陛下は今の状況を無視されるおつもりですかっ!!国あっての民、民あっての国なの ですっ!!このままではデトレイドは滅びの道を歩まねばなりませんっ。少しは民の事を、 うっ。」  ネルソンの顔にバターの容器が投げつけられ、顔中バターだらけになった。バターの容 器を投げつけた張本人であるダルゴネオスは、忌々しそうにネルソンを睨んだ。  「貴様のような無能に四の五の言われる筋合いなどない。貴様を今日限りで司令官の職 から解任する。」  「えっ!?」  突然の通達に驚愕するネルソン。  「な、なんですって・・・い、今なんと・・・」  「聞こえなかったか?てめえはクビだとよ。」  不意にネルソンの背後から声が響き、振りかえったネルソンは自分の背後に立っている 人物を見てギョッとした。  「誰だ、貴様は・・・」  背後に、毛皮のベストを着た身の丈2mはあろう屈強な肉体の大男が立っていたのだ。 天然パーマの長髪に胸まであるモジャモジャの髭を伸ばしたその風貌は、強暴な不死身の 野獣と呼ぶに相応しい。  「おお、よく来てくれたな。待ちかねたぞ。」  「陛下の御招きに感謝致します。」  両手を広げたダルゴネオスは笑顔で男を迎えた。  「何者ですかっ、この男はっ!?」  うろたえるネルソンに、ダルゴネオスは平然とした表情で答えを返した。  「紹介しよう。今日からデトレイド軍の新司令官となる黒獣兵団のブルーザー団長だ。」  ダルゴネオスに紹介されたその男は、不敵な笑みを浮かべ、うろたえるネルソンを見下 ろした。  「グフフ、よろしくな。」  「黒獣兵団、まさか・・・」  ダルゴネオスの言葉に、顔から血の気が引いていくネルソン。  黒獣兵団・・・ネルソンら軍人達の間で、その名前を知らぬ者はいない。  紛争の絶えない周辺諸国において、ライフルや大砲などの銃火器で武装した凶悪な傭兵 軍団が暗躍しており、その武装集団の名が黒獣兵団であった。  「黒獣兵団を我が軍に引き入れたのですかっ?」  「そうだ。」  「へ、陛下っ、黒獣兵団の実態をご存知ないのですかっ!?奴らは血に飢えた地獄の軍 団なのですよっ!!そんな連中を引き入れるとは・・・お気は確かなのですかっ!?」  「ああ、知っているとも。だからこそ雇ったんだ、大枚をはたいてな。」  「なんてことを・・・」  呆然とするネルソン。黒獣兵団の名を聞いた彼は失望を隠しきれなかった。  ならず者や凶悪な無法者達で組織された黒獣兵団は、争いの起きる所ならどこへでも現 れ、大金を出す国には無条件で手を組み、雇われた側と敵対する国や組織を完膚なきまで に叩き潰し全てを奪って行く。大量の武器で武装した彼らは正に地獄の軍団であった。  その悪名高き黒獣兵団を束ねる団長こそ、目の前にいる強暴な面構えの男、ブルーザー 団長であった。  「そう言う事だぜ。今日から俺様がダルゴネオス皇帝陛下お墨付きの総司令官だ。そし てデトレイド軍は我々、黒獣兵団が取り仕切る。てめえみてえなカスに用はねえんだ、と っとと消えな。」  「なにい・・・」  侮辱の言葉に烈火の如く怒るネルソン。  「貴様などにデトレイド軍を好きにさせてたまるかっ、貴様こそ失せろっ!!」  ネルソンがそう言った瞬間、ブルーザーはネルソンの胸板に強烈な蹴りを食らわせた。  「ぐはあっ!!」  ネルソンは反吐を吐きながら床を転げ回る。  「フッ、負けイヌが吼えてんじゃねーよ。」  激しい嘔吐と苦痛に苦しめられながら全てを理解した。解任劇ですら、ダルゴネオスと ブルーザーとの間で取り交わされていた取引の一環に過ぎなかった。自分なぞ相手にすら されていなかったのだ。  「陛下・・・あなたは・・・始めから私を見限っておられたのですか・・・」  胸を押さえながら、ネルソンはダルゴネオスを見た。  「なーんだ、今頃気がついたのか?鈍感な奴だな、ヒヒヒッ。」  そう言ったのはセルドックである。  「お前は何かにつけ民の為、民の為とほざいていおったな。お前のつまらん正義感なぞ クソの役にも立たん。少しばかり出来るからと司令官に任命したが、ロクに戦績も上げら れん貴様にはとことん愛想が尽きたわっ、早々に立ち去れいっ!!」  ダルゴネオスの罵声を浴びながら、ヨロヨロと立ちあがるネルソン。  「はい・・・皇帝陛下の・・・ご指示に従います。それでは・・・」  失意のまま、部屋を後にするネルソン。扉が締まるのを見たブルーザーは、ダルゴネオ スに目を向けた。  「ところで陛下、ネイロス側に内通者がいると聞いたンですが、本当ですかい?」  「ああ、保身を願う奴がいてな。それもエドワードの後妻だ。ネイロスが我々に攻略さ れるのを読んでおったのだろう、自分の安全が保証されれば、見返りにネイロス軍の情報 を提供すると願い出てきた。」  「ほう・・・後妻がねぇ、エドワードも哀れな奴ですな、よりによって女房に裏切られ るとは。」  「そうだ、ネイロスの奴等は誰も気付いておらん。いかにネイロスが奮戦しようとも、 この戦は我等の勝利に終わる。」  「確実ですね、フフ・・・」  ニヤリと笑うダルゴネオスとブルーザー。  「それと、交換条件として情報提供の他に、国王の娘である3姉妹の身柄をこちらに引 き渡せと伝えておいた。」  テーブルに肘をつき、ダルゴネオスは話を続けた。3姉妹と聞いてブルーザーは興味を 示した。  「3姉妹・・・ネイロスの戦姫ですか!?それは自分も聞き及んでおりますよ。あの美 しさと強さを兼ね備えた3姉妹を手に入れるおつもりですね陛下。」  頷くダルゴネオス。  「後妻は3姉妹の事を良く思っておらんらしくてな、快く引き受けてくれたよ。特に長 女のエリアスは徹底的にいたぶってほしいと言っておったわ。そこでだ、戦で勝利を収め た暁には褒美として3姉妹の長女、エリアスをお前にくれてやろう。どうだ?」  エリアスの身柄を提供すると言う話に、ブルーザーは目を輝かせた。  「おお、それは、ありがたき幸せっ。誉れ高きネイロスの戦姫を手に入れることが出来 るとは・・・このブルーザーにお任せあれ。必ずやネイロスを完膚なきまでに叩き潰し、 陛下のご意向に沿うよう尽くします。」  「ふふ、ブルーザーよ、お前には期待をしておるぞ。ネイロスを必ずや攻略するのだ、 よいな。」  「ははっ。」  深く頭を下げるブルーザーの姿を、ダルゴネオスは満足げに見ている。  「3姉妹の内、三女のルナは余が頂く手筈になっておる。あの純情可憐な娘をこの手で 汚してやるのだ。」  ダルゴネオスは年端の行かない娘が好みで、3姉妹の身柄を提供するように画策したの はこの為であった。  「あーあ、乳臭い娘のどこが良いんだろうね、このロリコンオヤジ・・・」  セルドックが呆れたような顔をして小声で呟く。  「んんっ?何か言ったかセルドック。」  「あ、いやー、何にも言ってねえッスよ・・・それよりも父上、次女のエスメラルダは 俺にくれるって約束だったよねぇ。」  「おお、そうだったな、忘れる所だったぞ。確かお前は勇ましいエスメラルダを苛めた いとか言ってたよなぁ。」  「へへ、そりゃあもう・・・気の強いエスメラルダを捕まえて・・・あーして、こーし て、うへへっ。」  セルドックは変質的なサディストであり、美女を拷問で苛めるのを趣味にしていた。  チビで軟弱な体質故か、美しく気丈な女を屈服させる事が彼の一番の楽しみであった。  「そして私には長女エリアスでありますね。フフ・・・いたぶってやりますよ、徹底的 にね。」  陰湿な親子の話を聞きながら、美しき戦姫のエリアスを強姦する事を思い浮かべるブル ーザー。  3人の思惑が1つにまとまり、それぞれ3姉妹をいたぶる妄想にふけっている。  「あ、あの・・・食後のデザートをお持ち致しました・・・」  3人の耳に、怯えたメイドの声が聞こえてきた。  短いスカートをはいた2人のメイドが、今年取れたばかりの桃をトレイに乗せて運んで きたのであった。  「初物の桃か、美味そうだな。」  トレイの上の桃に喜ぶダルゴネオス。  デトレイドは気候的に恵まれた土地ではない為、桃などの果実は大量に産出されない。 初物の桃などは余程の金持ちか権力者でしか口に出来ない高嶺の華であった。  「美味いのう・・・初物以上に美味い物はない。」  高価な桃を惜しげも無く頬張りながら、悦楽に浸るダルゴネオス。  「フフ、こっちの桃も美味そうだな。」  桃を運んできたメイドの胸に邪悪な目を向ける。  「な、なにを・・・お、お止め下さい陛下・・・」  陰湿な視線に思わず身を引くメイド。ダルゴネオスの手が怯えるメイドの胸元を引き裂 いた。美しい乳房が露になる。  「き、きゃあっ!!」  「逃げるんじゃねーよ、このアマっ。」  メイドの背後から現れたセルドックが、メイドの両手を掴んだ。  「しっかり捕まえておれ。」  息子にそう言ったダルゴネオスは、長い舌を口から出してメイドの乳房をベロベロ舐め る。  「あ、ひいいっ、い、いやああっ!!」  ダルゴネオス親子に捕まったメイドが金切り声を上げる。抵抗することも出来ぬまま、 陰湿な責め苦を受ける羽目になった。  「うひひひ〜っ、さあもっと泣け、もっと叫べ〜っ。」  メイドの両腕を羽交い締めにして狂喜するセルドックと、泣き叫ぶメイドをニヤニヤと 見ているブルーザー。  「お前も桃が食いたいだろう?遠慮は要らんぞ、存分に堪能するがいい。」  ダルゴネオスはそう言いながら、もう1人のメイドをブルーザーに差し出した。  「ありがたく頂戴しますぜ。」  ブルーザーはもう1人のメイドの両足を掴むと、逆さまに吊り上げた。  「やめて・・・いやーっ!!」  メイドの履いていたスカートが捲れ上がり、ピンク色の尻と秘部が露になった。メイド は下着を着けていなかった。いや、下着を身に着けるのを許されていなかったのだ。  いくらあがこうとも、屈強なブルーザーの前では逆らう術は無く、空しく手を振るしか なかった。  「グフフ、いい匂いだ。」  逆さ釣りにされたメイドの太ももを嗅いでいるブルーザーは、舌で秘部を舐め始めた。  「はあっ、は、ひ・・・い、や・・・」  恐怖に震えるメイドは声も出ない有様であった。  「おお、最高に美味いですなー。」  グチャグチャと音を立てながら秘部をしゃぶるブルーザー。その長い舌で秘部をこね回 されたメイドは悲痛な叫びを上げる。  「た、たすけて・・・だれか・・・あひぃいいいっ!!」  メイド達の悲鳴がダイニングルームに響き渡った。メイドの悲鳴は、力無く廊下を歩い ているネルソンの耳にも入り、彼は思わず振りかえった  「くっ・・・なんてことを・・・」  ダルゴネオスの課した重税を払えずに、税のかわりに宮殿に連れて行かれた若い娘をネ ルソンは何度も見てきた。  おそらくは、今ダルゴネオス達にいたぶられている2人のメイドもそうであろう。  助けてやりたいと手を握りしめたが、今の彼には何もしてやれる事がない。ただ黙って 耐えるしかなかった。  「すまん・・・」  後ろ髪を引かれる思いでメイドたちの悲鳴に背を向けるネルソンだった。  「ケダモノどもめ、いつまでもいい気にはさせんぞ・・・デトレイドは民達は・・・私 が救って見せるっ。」  強い決意を胸に秘めたネルソンは、非情な主の住む宮殿を後にした。


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