アルセイク神伝


第4話その4.ヒルカスを倒せ!!

 「待ってただぞヒルカスっ、ここで決着つけてやるだっ!!」
 聖剣を手に、ヒルカスを睨むボーエン。
 「フッ、一端の剣士気取りかバカボーエン。そんな剣を振り回して何が出来る?てめえ
が俺に勝てるとでも思ってんのか?」
 「今のオラは今までとは違うべ。オラには姫様が力を授けてくれてるだ。おめえなんか
一捻りだべ!!」
 ボーエンは、聖剣の切っ先をヒルカスに向けて声を張り上げた。だが、そんなボーエン
をヒルカスは一笑した。
 「威勢だけはいいな。だがこれを見ても戯言をほざいていられるかな。」
 ヒルカスはそう言うと傍らの魔族を退けた。そしてヒルカスの背後を見た途端、ボーエ
ンの覇気が絶望に変わった。
 「ああ、ひ、姫様・・・」
 ヒルカスの背後には、一糸纏わぬ姿のルクレティアが触手で両手を捕まれた状態で吊る
されていた。その脇には槍を構えた魔族がルクレティアの乳房に槍の先を付き付けていた。
 白い肌には鞭で打たれたであろう無数のミミズ腫れが出来ている。うなだれていたルク
レティアは、ボーエンを見て震える唇を開いた。
 「ごめんなさいボーエン・・・」
 ルクレティアは涙を流しながらヒルカスに人質にされた事を詫びた。ルクレティアを人
質にされてしまった以上、ボーエンには打つ手が無くなってしまった。
 「どーしたぁボーエン、さっきまでの威勢はよ。所詮てめえは俺に勝つ事なんか出来や
しねーんだよ、ヒャハハ!!」
 「くっ・・・」
 勝ち誇り、嘲り笑うヒルカスにボーエンは悔しそうに唇を噛んだ。そのボーエンの背後
から、カルロスが姿を見せた。
 「待てっ。私がいる事を忘れてないだろうな。」
 カルロスの出現に眉をひそめるヒルカス。
 「んん〜?誰かと思えばボンクラ王のカルロスじゃねーか。ブタ公に掘られたケツの具
合はどうだ?」
 侮辱の言葉に、カルロスはキレた。
 「その臭い口を閉じろダニ野郎っ。2度と喋れないようにしてやるぞっ!!」
 カルロスはフィオーネを抱いたまま、ヒルカスに怒りをぶつけた。そんなカルロスを忌
々しそうに睨むヒルカス。
 「その言葉、そのままてめえに返してやるぜ。喋れなくなるのはてめえ等の方だ!!」
 ヒルカスはラスの紋章が刻まれた右手を翳し、呪文を唱えた。すると、カルロス達の背
後にいた女達が、ユラリと立ち上がり、操り人形の様にゆっくりとカルロスとボーエンに
近寄ってきた。
 「ヴゥ〜、アァ〜・・・」
 呻き声を上げ、ゾンビの様にカルロス達に纏わりつく全裸の女達。
 「うわっ!?なにをする・・・はなせ!!」
 「やめるだ、みんな・・・い、いててっ」
 ヒルカスの魔力によって操られている彼女達は皆、目付きがおかしい。獣のようなギラ
ギラした目になっている。そして女の細腕とは思えない程の力で、身動きの取れないカル
ロス達の首や腕をギリギリ締め上げた。
 相手が相手だけに、カルロスもボーエンも抵抗することが出来ない。ボーエンは手にし
ていた首飾りと聖剣を床に落としてしまった。
 「うーっ、ああーっ・・・へいかー!!」
 カルロスと引き離されたフィオーネは、泣きながらカルロスを呼んだ。そのフィオーネ
の背後から触手が伸びて、フィオーネの身体を巻きつけて持ち上げた。
 「フィオー・・・うう。」
 必死に手を伸ばすカルロス。その手を女達が掴んで引き戻した。
 「ワーッハハ!!どうだっ、てめえらが命がけで助け出した女達に自由を奪われる気分
は!?文句があるなら言ってみろっ、悔しかったら何とか言ってみろっ、ヒャハハーッ!!
」
 「ムググ・・・く、そ・・・」
 2人とも喉を締め上げられ、口を押さえられている為、声を出せない状態になっていた。
 動けなくなった2人の前に魔族達が殺到した。皆、手にした武器をカルロスとボーエン
に付き付けている。
 「このクソどもが〜、覚悟しやがれっ。」
 そして2人を押さえている女ごと串刺しにしようと身構えた。
 「待てっ、俺の楽しみを邪魔するんじゃねえ。」
 魔族達をヒルカスが制した。慌てて武器を引く魔族達を退けると、カルロス達の前に歩
み寄った。
 「このまま串刺しにしてもいいんだがな、それじゃあ面白くねえ。てめえ等には、あの
時の絶望をもう一度味わってもらってからあの世に送ってやるぜ。」
 ニヤリと笑うヒルカス。その不敵な笑みにカルロスとボーエンはうろたえた。ヒルカス
がこれから何をしようとしているか、背後で触手に囚われているルクレティアとフィオー
ネを見れば一目瞭然であった。
 「ううーっ、やめ・・・ううっ。」
 「ひめさ・・・うぐぐ・・・」
 カルロス達は、女達を振りほどこうと必死になった。
 だが、ヒルカスに操られている女達は、2人の抵抗を無駄なものにした。
 「さあ・・・まずはルクレティア、お前からだ。」
 薄笑いを浮かべるヒルカスは、触手に吊り下げられているルクレティアに近寄った。
 「いや・・・やめ・・・あっ!!」
 ルクレティアの足首に触手が巻きつき、力任せに両足を広げた。股間を広げられた為、
秘部が丸見えになってしまう。
 「い、痛いいっ!!ああ、ううああ!!」
 ルクレティアの身体中の関節がメキメキと悲鳴を上げ、凄まじい激痛がルクレティアの
全身を襲った。
 「ふふん、痛いか?じゃあ今度は気持ち良くしてやろう。おいっ、てめえ等。ルクレテ
ィアを思う存分いたぶってやれっ。」
 手下の魔族達に命令するヒルカス。
 「へへ、遠慮なく頂きます。」
 手下の1人が、大きく開かれたルクレティアの股の下にもぐり込むと、秘部を舌でベロ
ベロと舐め始めた。
 「お豆ちゃんをナメナメしてやるぜぇ。」
 「だめ・・・そこは・・・」
 クリトリスをしゃぶられて喘ぎ声を上げるルクレティア。
 「じゃあ、俺はおっぱいだ。」
 別の魔族は豊かな胸に手を回して、乳房を揉み始める。
 「俺、足フェチなんだよね〜。イヒヒッ、綺麗なアンヨだぜ〜。」
 さらに別の魔族が足を舐める。3人の魔族達に身体中をいじられたルクレティアは、首
を激しく振って悶えた。そして、おぞましい責め苦に耐えかね、悲鳴を上げた。
 「あひっ・・・いやーっ!!」
 悲鳴が辺りにこだまし、いたぶられるルクレティアをヒルカスは、陰湿な目でニヤニヤ
しながら眺めた。
 「もうやめるだヒルカ、ぐっ!?ふがーっ!!むがーっ!!」
 女達に口を押さえられ、空しくもがくボーエン。
 「あっ・・・も、もう・・・だ、め・・・」
 魔族達に責められたルクレティアは絶頂に達し、全身をビクビク痙攣させて気を失った。
 「ククク・・・フィオーネ、次はお前の番だ!!」
 フィオーネに向き直ったヒルカスは、触手を操って、フィオーネを自分の前に運ぶ。フ
ィオーネはラスに犯された時と同じように両手両足を広げた状態で床に寝かされた。
 「あうーっ!!あっ、あーっ!!」
 恐怖に慄くフィオーネは、激しく首を振って泣き喚いた。大きく開かれた股間に指を弄
らせるヒルカス。
 「ひいっ、あいーっ!!」
 「んん〜、いい声で鳴くじゃねえか・・・もっと鳴け、さあ、鳴くんだ!!」
 狂ったような声で激しくフィオーネの秘部を責め立てるヒルカス。指が動くたび、フィ
オーネは身体を震わせて悶えた。
 「ぐうっー!!フィ・・・うーっ、うーっ!!」
 女達に捕まっているカルロスの悲痛な声がヒルカスの耳に届いた。その声を聞き、ヒル
カスは満足げに笑う。
 「クックク、悔しいだろうがクソカルロス。あの時と一緒だ。何も出来ないままラス様
にフィオーネを奪われたあの時とな・・・てめえは、もう一度絶望するんだ。今度は俺に
フィオーネを奪われてな!!」
 フィオーネのふとももを掴んだヒルカスは、猛り狂ったイチモツをフィオーネに挿入し
ようと身構えた。
 その時である。
 「!?」
 フィオーネの脇から眩いばかりの光が煌いた。
 女達に捕まった際に、ボーエンが落としていたルクレティアの首飾りが光を発したのだ。
 「ぐあっ、なんだこれは!?」
 思わずヒルカスは飛び退く。フィオーネの手足を捕らえていた触手が光を浴びて消滅し
た。その瞬間、フィオーネは無意識のうちに首飾りを手にし、ヒルカスに付きつけた。
 「ぎ、ぎゃああー!!」
 光を浴びたヒルカスの顔がジュッと音を立てて焼けた。
 「うわああーっ!!」
 カルロス達に武器を付きつけていた魔族達からも悲鳴が上がった。
 全ての魔を滅する神の光が魔族達を貫いたのだ。ルクレティアを捕らえていた触手も消
滅し、ルクレティアの身体が床に投げ出された。
 「あうっ。」
 床に投げ出された衝撃で目を覚ますルクレティア。
 光はヒルカスに操られていた女達の呪いを解いた。そしてカルロス達は女達の呪縛から
解放された。
 「うおおおー!!」
 床に落ちた聖剣を手にしたカルロス。そして、背中の袋から戦斧を取り出したボーエン
が、声を張り上げて魔族達に切りかかった。
 「ぎゃっ。」
 「ぐえっ!!」
 光を浴びて怯んだ魔族達は、カルロスとボーエンによって次々と打ち倒された。瞬く間
に全ての魔族が2人に倒された。
 「うお・・・くそ・・・はっ!?」
 起きあがったヒルカスは、先ほどまで操っていた女達が、今度は自分に向かって歩いて
きているのに気が付いた。
 「なんだてめえらっ、う・・・何しやがるっ!?」
 女達は皆、正気に戻っていた。そして、自分達を操った悪烈なヒルカスの手足を押さえ
て身動きが取れないようにしたのだ。
 「は、離せーっ!!この・・・」
 ヒルカスは必死に女達を振りほどこうとした。だが、女達は満身の力をこめてヒルカス
を取り押さえた。
 「さあ、はやく!!」
 女達の声を受け、ボーエンが焼け爛れたヒルカスの顔面目掛け、怒りの鉄拳を放った。
 「姫様の仇、思い知れー!!」
 バキッという音を立てて、ヒルカスの身体が吹っ飛ぶ。
 「ぐああっ!!」
 床にたたきつけられるヒルカス。そのヒルカスにボーエンが怒りの篭った目で歩み寄っ
た。
 「い、いてえ・・・」
 「痛えだかヒルカス。でもな、おめえに痛めつけられた人達はもっと痛かったべ。おめ
えに苦しめられた姫様はもっと辛かっただっ!!」
 再度ヒルカスの顔面にボーエンの鉄拳が炸裂した。
 「ぐぎゃあ!!」
 血反吐を吐いて倒れるヒルカス。
 「さあ、もう観念するだ。今のおめえに勝ち目はねえべっ。」
 ヒルカスの前に立ち塞がるボーエン。そのボーエンをヒルカスは憎悪の篭った目で睨み
返した。
 「てめえ・・・この程度で勝ったつもりかあ?・・・この俺をナメるんじゃねえ・・・
見せてやろうじゃねえかっ、俺の本当の力をよっ。」
 叫ぶヒルカスの身体がメキメキと音を立てて変化した。
 「ぬおおお!!」
 ヒルカスの周囲に出現した触手がヒルカスの身体に融合した。そしてヒルカスはおぞま
しく、そして醜悪な怪物へと変貌を遂げた。
 「ヒルカス、おめえ・・・」
 ボーエンは変わり果てたヒルカスの姿に呆然とした。
 「こ、これは・・・」
 思わず絶句するカルロス。ヌメヌメとした灰色の身体に無数の触手を全身から生やした
その姿は、巨大なイカかクラゲを連想させた。その身体の先に、首飾りの光によって醜く
焼け爛れたヒルカスの顔があった。
 「グヒャヒャヒャーッ!!てめえら如きが魔導師たるこのオレに勝てやしねえンだァよ
ッ、テメエ等全員地獄行きだァー!!」
 凄まじい雷撃の一撃が襲った。床が大音響と供に破壊され、衝撃で逃げ遅れた女達が宙
に舞った。
 「きゃああーっ!!」
 女達の悲鳴が辺りを揺るがす。
 止まる事無く打ち出される触手と雷撃の攻撃は辺りの形ある物を打ち壊した。部屋の中
にあったオブジェが瓦礫と化し、破片がカルロス達に容赦なく降り注いだ。
 「イ〜ッヒヒーッ!!クタバレッ!!クタバレッ!!」
 狂ったように触手を乱打させるヒルカス。理性を失ったヒルカスは己の破壊本能の赴く
まま暴走した。
 「なんて奴だ・・・」
 ルクレティアとフィオーネを守っているカルロスとボーエンはヒルカスに立ち向かう事
も出来ず、防戦一方だった。
 「私達はカルロス王やボーエンの足手纏いになる・・・」
 ルクレティアは何とかフィオーネだけでも助けなければと思いながらフィオーネを見た。
 「あれはっ。」
 ルクレティアの目にフィオーネが握り締めた首飾りが光っているのが見えた。
 「・・・フィオーネ姫っ、手をっ。」
 「あ、あう。」
 フィオーネに駆け寄ったルクレティアは、彼女の手を取り、首飾りを高く掲げた。
 「グヒャヒャーッ!!くたばりやがれー!!」
 2人めがけ、狂ったヒルカスが猛然と襲いかかってきた。目を開き、ヒルカスを見据え
るルクレティアとフィオーネ。
 「父なる神王っ、我等を守り給えっ!!」
 掲げられた2人の手から光が発せられた。そして光は半円形のバリアとなり、カルロス
達や逃げ延びた女達を覆った。
 「ぐあっ!?」
 バリアに跳ね返されたヒルカスはもんどり打って転倒した。
 「今ですっ、カルロス王、ボーエン!!」
 ルクレティアがそう言った瞬間バリアが消滅した。そして、起きあがろうとしたヒルカ
スに向け、カルロスとボーエンが飛びかかった。
 「でやああ!!」
 掛け声を上げ、2人は渾身の一撃を振るった。カルロスの聖剣が胴体を袈裟懸けに切り
裂き、ボーエンの戦斧がヒルカスの脳天に叩きつけられた。
 「うぎゃあー!!」
 ドス黒い血を撒き散らし、バケモノと化したヒルカスは絶叫した。そして灰色の肉体が
バラバラに四散し、肉隗と化したヒルカスが床に崩れ落ちた。
 「ヒルカスっ、お前の負けだべ!!」
 ボーエンの声が響いた。ルクレティアを、そしてボーエンとカルロスを苦しめた宿敵ヒ
ルカスはついに倒された。

アルセイク神伝第5話に続く

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