アルセイク神伝


第一話その4.微かな希望

  「お前は魔族となった。そしてこの俺様に忠誠を誓うのだ。ルクレティアに誓ったよう
にな!?ワハハ!!」
 「だれがおめえになんか・・・どんな姿になってもオラは姫様を見捨てたりしねえだ!!
」
 「そうか・・・だったら死ぬがいいっ。」
 ヒルカスの手から再び雷撃がほとばしった。
 「ぎゃあー!!」
 ボーエンは絶叫をあげて転げまわった。その声を耳にしたルクレティアが触手にいたぶ
られながら目を開けた。その目に電撃に苛まれながら悲鳴を上げるボーエンの姿が映った。
 「う、あう・・・ぼ、ボーエ・・・ン・・・」
 苦しむボーエンを助けようともがくが、両手足の自由を奪われ、秘部に触手をねじ込ま
れているルクレティアに、そんな余裕が有るはずは無かった。
 何とかしなければボーエンが・・・
 「そう、だ・・・あ、れを・・・」
 ルクレティアは胸に光る首飾りに目を移した。それは父である神王から授けられた大切
な首飾りであった。神の血を引くルクレティアの神力を高める重要なアイテムでもある。
 「う、くううっ・・・うっ。」
 首飾りを繋いでいる金の鎖をくわえたルクレティアは、歯で鎖を噛み切ると、首を振り、
転げまわるボーエンに向かって投げた。
 「さあ、これが最後だ。俺様に忠誠を誓うか、それとも死ぬかだ。」
 激しい雷撃をうけ、うつ伏せになって倒れているボーエンに、ヒルカスが詰め寄った。
 「何度も言ってるだ・・・オラは・・・姫様に・・・?」
 不意にボーエンが声を止めた。目の前に、青く光る宝石が落ちてきたのだ。
 「あ、あれは、姫様の首飾りだべ・・・」
 無意識のうちに首飾りへ近寄ったボーエンは、ヒルカスに見つからないよう首飾りを拾
った。その瞬間
 (ボーエン、ボーエン・・・。)
 頭の中に、ルクレティアの声が響いてきた。慌ててルクレティアを見るボーエン。彼女
が喋ったのではない。ルクレティアがボーエンの頭に直接思念を送ったのだ。
 (よく・・・聞いて・・・まだ・・・希望が・・・失われた・・・訳ではないのです・・
・)
 じっとしたままルクレティアの言葉を受け入れるボーエン。
 (私自身には・・・ヒルカスを倒す力は・・・ありません・・・でも・・・私の体の中
には・・・あらゆる暗黒の力を打ち破る・・・神聖なる・・・が・・・それを・・・使え
ば・・・)
 「!?・・・それは・・・」
 かすれるような言葉がボーエンの頭に響いた。その言葉に呆然となる。ルクレティアの
言葉通りなら、ヒルカスを、魔王ラスを倒せるかもしれなかった。だが今の現状を考えれ
ば、到底無理な事であった。
 「どうやったらいいだか、今のオラ1人じゃ無理だべ。」
 そう呟いたボーエンの頭に、再び言葉が響いた。
 (同士を・・・私達と共に・・・ヒルカスやラスに立ち向かってくれる・・・同士を探
しなさい・・・時間はかかるかもしれませんが・・・
それまで・・・決して希望を捨ててはなりません・・・生き延びるのです・・・たとえ・・
・どんな目に合わされても・・・この首飾りには・・・癒しの力が宿っています・・・こ
れを私と思って・・・肌身離さず持っていなさい・・・)
 ルクレティアの言葉が途切れた。だがルクレティアの意思を受けたボーエンは、姫様を
助けるまで、そしてヒルカスを倒すその日まで泥をすすってでも生き延びる覚悟を決めた。
 「わかっただ姫様。」
 ボーエンの決意はルクレティアにも通じた。少しだけ笑顔を浮かべてボーエンを見つめ
るルクレティア。
 「さっきから何をブツブツ言っている。お祈りでもしているのか?」
 ボーエンの頭上にヒルカスの姿があった。
 「・・・誓います、だ・・・」
 「ん〜!?何か言ったか?聞こえんぞ、もう一度言え。」
 「お、オラ・・・ヒルカス・・・様に忠誠を誓いますだ・・・」
 ボーエンの声に、ニヤリと笑うヒルカス。
 「聞いたかルクレティア!!お前の可愛いボーエンが俺様に忠誠を誓ったぞ。お前もつ
くづく哀れな奴だ。信頼していたクソ虫にまで見捨てられるとはな!?これでお前の希望
は全て絶たれた訳だあっ!!」
 ルクレティアに復讐をとげるという長年の野望を達成し、勝ち誇ったように高笑いする
ヒルカス。
 「さあ、アルセイクの愚民どもを残らず連れて来いっ。この地に巨大な魔城を築き上げ
るのだっ!!アルセイクの新たなる王である俺様に逆らう奴には容赦はいらん。徹底的に
やれ!!」
 集結した魔族に激を飛ばすヒルカス。魔族達は、おうっと気勢をあげた。
 「ルクレティア。お前にはまだ利用価値がある。お前の持っている神力を全て俺が頂く。
それまでは生かしておいてやろう。ありがたく思うんだな。」
 ヒルカスはそう言うと、右手を上げて指をパチンと鳴らした。すると、後ろに控えてい
る手下の魔族達が、人間1人が入れるくらいの大きな瓶を抱えて現れた。
 「フフ。」
 邪悪な目で瓶を見たヒルカスは、ルクレティアに向き直った。ルクレティアの秘部に食
い込んでいた触手が先端を残して切り離され、手足に巻き付いていた触手がルクレティア
を解放した。だが、触手から解放されたのも束の間、今度は荒縄を手にした魔族が、ルク
レティアの裸体を縛り始めた。
 「ううっ。」
 荒縄が肌に食い込み、呻き声を上げるルクレティア。
 魔族は、ルクレティアの両腕を後ろに縛り、股を広げた状態で太ももとふくらはぎを荒
縄で巻いた。強制的に広げられた股間には、触手の先端が秘部に食いこんだままビクビク
と蠢いていた。
 ダルマ状態で身動きが取れないルクレティアを抱えた魔族達は、大きな瓶の中に彼女の
身体を入れた。
 「あ・・・な、なにを。」
 苦悶するルクレティアに、ヒルカスが片手に塩を持って近寄ってきた。
 「お前は塩漬けの刑を知っているか?」
 「しお、づけ?」
 「そうだ、裸の人間を瓶に閉じ込めて塩漬けにする拷問だ。塩漬けにされた奴は塩に身
体中の水分を吸い取られて悶え苦しむってわけさ。」
 「わ、わたし、を干物にでもするつも・・・で、ですか・・・」
 「フッ、干物になんぞするつもりはない。この塩は俺様特製の塩でな、水分ではなく、
お前達神族の力を吸い取る代物だ。」
 そう言い終わるや否や、傍らに控えていた魔族が大きな袋から大量の塩を瓶に流し込ん
だ。
 「ああっ、こ、これは、ああっ!!」
 悲鳴を上げるルクレティア。塩に触れた部分から順に力が急速に奪われていく。塩は見
る見るうちに瓶を満たし、ルクレティアは首まで塩漬けにされた。
 「どうだ、身体中の力が抜けていくだろう。お前達神族にとって、この塩は正に悪魔の
塩って訳だ。」
 ヒルカスはそう言いながら瓶の口に手をあてた。すると、瓶の口が巾着袋の様にキュッ
と閉まった。
 「はうっ!?」
 ルクレティアは瓶から首だけ出した状態で閉じ込められてしまった。固まった塩によっ
て完全に身動きが出来なくなり、彼女に許された自由は、口を動かす事のみとなった。そ
して動けないルクレティアの裸体から、悪魔の塩が容赦なく力を奪い取っていった。
 「あ、ああ・・・あうう・・・」
 ルクレティアの目から生気が失せていく。それと共に気力も削ぎ落とされていった。塩
には誘淫の作用もあり、ルクレティアは力を奪われながら、落ちるような快楽に翻弄され
た。
 「これでも俺に抵抗したいか、どうなんだ、あン?」
 「こ、こんな事で私があなたに屈するとでも・・・くうう・・・ううっ、あっ・・・」
 秘部に食いこんだ触手の先端が激しく振動し、唇を震わせて悶えるルクレティア。
 「いくら強がっても意味は無いぞ。全身の力を吸い取られた上にアソコを触手でいじら
れ続ける、耐えるだけ無駄ってもんだ、もう諦めな。」
 瓶の外に出ている長い髪を掴みながらニヤニヤしているヒルカス。
 「あ、あきらめませ・・・あ、あひいいっ!!」
 触手の責めによって再び絶頂に達したルクレティア。
 悪魔の塩に全裸の肌から力を奪われ、秘部に食い込んだ触手がもたらす狂おしい快楽に
よって理性をズタズタに引き裂かれていく。もはや抵抗など出来ない。
 「いいぞ、いいぞ、もっと悶えろ。その快楽に身を委ねるんだ。
そして・・・お前の全てを、この俺様がいただく!!」
 ヒルカスの声と共に、瓶から吸い取られた神力がほとばしり、ヒルカスの全身に吸い込
まれていった。
 「おおう・・・力が、力が湧いてくる!!うわぁははーっ!!」
 ルクレティアの力を奪ったヒルカスは、恍惚とした表情を浮かべて高笑いした。
 「も・・・もう、いや・・・やめて・・・こんなこと、ひ、ひとおもいに、ああ・・・
うあ・・・」
 力を奪われ、おぞましい快楽の責め苦に耐えかねたルクレティアが、とうとう根をあげ
てしまった。
 「何を言うんだ、お前は永遠に俺様のものさ、そう、永遠にな。ククク・・・愛してる
ぜェ、ルクレティアァ・・・」
 ヒルカスはそう言うと、ルクレティアの唇を無理やり奪った。
 「んんっ、んーっ!!」
 強引なキスに抵抗しようとするルクレティア。だが、力を奪われ、身動きできない彼女
にとって、それは余りにも無駄な抵抗だった。
 「う、うう・・・」
 ヒルカスの口から残った力が吸い取られていく。口が離れた途端、放心状態となるルク
レティア。
 悪夢のような責めを受け続けているルクレティアには、もはや言葉を返す気力すらなか
った。
 「お前の神力は無尽蔵だ、どれだけ力を吸い取っても尽きる事は無い。その綺麗な顔が
朽ちる事も無い。ククク・・・最高だ。その力、その全て、この俺1人の物だ。」
 力を奪われ続け、いたぶられる。永遠の命と癒しの力を持つ彼女にとって、それは永遠
の責め苦を受けることを意味していた。
 「では後の事は任せたぞ。」
 「はい。」
 ヒルカスは、指揮官クラスの魔族に後の事を一任すると、ルクレティアを捕らえている
瓶を触手で持ち上げ、いずこかへと姿を消した。
 「ううぐ・・・姫様・・・」
 雷撃の苦痛からようやく解放されたボーエンが、よろけながら立ちあがり、ヒルカスに
連れ去られるルクレティアを悲痛な面持ちで見ていた。
 「おら新入り!!さっさとこっちにこいっ、仕事だ!!」
 「へ、へい・・・」
 魔族に呼びつけられたボーエンは、ルクレティアの身を案じながら、掌に残された首飾
りを見つめた。
 「姫様・・・待っててくだせえ。必ず、同士を見つけて助けに行きますだっ。」
 ルクレティアを助ける、それは余りにも無謀な事であり、無駄な行いであった。だが、
ボーエンは諦めてはいなかった。
 (・・・決して希望を捨ててはなりません・・・)
 ルクレティアの残したこの言葉だけを信じて。


アルセイク神伝第2話に続く


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