魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫13)


  第61話 振付師アントニウスの小心なる陰謀
原作者えのきさん

 ブレイズとその弟子達が凶悪な芸術活動を行っている頃、アトリエの外に1人の男が現
れていた。
 小心な風貌の男は、アトリエの門を見て戸惑っていた。
 「う〜ん、ここはいつ見ても卑猥だよなあ(汗)」
 アトリエの門は、脚を広げた女体の下半身を模しており、潜る者を全て戸惑わせてしま
う。中に入れば、ハレンチなる裸体像が並んでおり、男はめまいがしそうになるのを堪え
てドアをノックした。
 「ブレイズさーん、ぼくですよ、アントニウスですぅ。」
 アトリエに訪れたこの男・・・ノクターンを裏切って軍の情報を漏らし、王国を破滅に
導いた振付師のアントニウスであった。
 アントニウスの訪問を、快く向かえるブレイズ。
 「やあ、これはアントニウス君。良く来てくれたでやんすよ。」
 仲良く握手した2人は、ニコニコしながらアトリエに入って行った。
 ノクターンで振付師をしていたアントニウスは、同じ(芸術家?)という立場からであ
ろうか、ブレイズと馬が合って交友を深めていた。
 無論、淫乱な趣味を同一させる2人が、まともな事を論じ合うとは思えない。今日もア
ントニウスは、堕楽なる策略を話すために訪れているのだった。
 ワイングラスを片手に持ったブレイズが、アントニウスに酒を勧める。
 「ちょうど制作の段取りがついたとこでやんす。一杯飲むでやんすか?」
 奥に置かれている酒瓶からワインを注いでいるブレイズであったが、その(異様な形の)
酒瓶を見てアントニウスは驚く。
 「ぶ、ブレイズさん・・・そ、その酒瓶・・・」
 「ん?ああ、これね。アリエル姫をモデルに造った酒瓶でやんすよ、良くできてるでや
んしょ?」
 なんと、股間を大きく広げたアリエル姫を模して造った酒瓶であった。
 しかもクリトリスの位置に小さなボタンがついており、それを押すと秘部からオシッコ
のようにワインが注ぎ出てくる仕掛けになっているのだ。
 卑猥な酒瓶から注がれたワインを渡され、アントニウスは疑惑を浮かべる。
 「こ、これってワインすよね?出てくる場所が場所だし・・・」
 「だーいじょうぶ☆正真正銘のワインでやんす。遠慮なく飲んでくれたまえでやんす。」
 その時、ワインを飲んだアントニウスの頭に(イヤな)予感が過った。
 「もしかして、こーゆーのを他にも造ってるの?」
 すると変態芸術家は自慢げに笑った。
 「もちろんでやんす♪これなんか、口の所からお肉を入れる仕掛けのミンチ製造機でや
んす。冗談半分で造ったけど、その道のマニアから注文がきてて売れ行きは上々でやんす
よ。」
 アリエル姫を模したミンチ製造機のハンドルを回すと、アナルから挽き肉が捻り出てく
る。目が点になっているアントニウスの口からワインが(だ〜っ)と流れた。
 「そ、それってキツすぎます〜(大汗)」
 とてもじゃないが、このミンチ製造機で造ったミートボールは食べる気がしないアント
ニウスだった(笑)
 そんな彼に、ブレイズは訪問の理由を尋ねる。
 「今日は何かオイシイ話を持ってきてくれたのでやんすか?」
 「お、おいしいミートボールとハンバーグを・・・えっ?あ、わはは。じ、じつはです
ね〜、ミュージカルのチケット持ってきたんですよ。これ。」
 ポケットから出したのは、(汚されし天使の淫舞)と題されたミュージカルのチケット
であった。
 この題名からして、まともなミュージカルではない事が明白である。アリエル姫の公開
凌辱で淫乱な舞いを演出していたアントニウスは、アリエル姫の逃亡後も、奴隷の娘達に
同様の事を強いていた。
 ブレイズの変態的芸術がまかり通っているように、アントニウスの演出する淫乱なミュ
ージカルが好評を得ていた。邪な淫欲の渦巻くガルダーンの首都では、こうした事が平然
と行われている。
 その行為によって、多くの罪無き者が餌食にされているのも事実だ・・・
 チケットの内容を見て、変態的な笑いを浮かべるブレイズ。
 「汚されし天使の淫舞とはオイシイそうでやんすね〜。やっぱりアリエルちゃんの時み
たいに、あーんな事や、こーんな事を演出するつもりでやんすか?」
 アントニウスは悦んで頷く。
 「そうなんですよ〜。今回は特に、ぼくと少々関わりのある子達が出演してくれる事に
なりましてね。まあノクターンで色々あったものですから・・・趣味と実益を兼ねた演出
になってるんですよ、ムフフ〜♪」
 その小心者らしい笑いに、ブレイズはミュージカルの裏側を察する。
 「と、ゆうことは・・・ノクターン出身の女の子に(あれ)を使って踊りをやらせるつ
もりでやんすか。君も随分とワルに磨きがかかったでやんすねえ〜。」
 「それはもう〜。お互い(芸術)の向上に邁進いたしましょうね〜☆」
 悪代官と悪徳商人の悪巧みのように、2人は邪笑いを浮かべるのであった。
 そんなアントニウスは、部屋の片隅から響く泣き声を耳にして振り返る。
 薄暗い床には、石膏の破片で薄汚れた美少女が横たわっていた。たった一つの希望を壊
され、立ち上がる気力すらないまま、悲しみに沈む美少女・・・
 「あの子は?」
 「モデルの子でやんすよ。少々イジメ過ぎて壊れてしまったでやんす。」
 ブレイズが事の成り行きを説明すると、アントニウスは深刻な顔で女の子の脇に駆け寄
った。
 「そんなっ、ダメですよブレイズさんっ、可愛い子をこんなにイジメるなんて。」
 それは、まるで美少女を庇うかのような言動・・・
 ブレイズは尋ねた。
 「君がそうゆう事を言うとは以外でやんすね。あの子が可哀そうになったでやんすか?」
 だが、アントニウスが口にした言葉は、慈悲とは遥かに縁遠いものだった・・・
 「可哀そう?まさか。幼い女の子をイジメるなら、もっと入念にしなきゃ。」
 口元に薄笑いを浮かべ、邪悪な策略を巡らせている。そう・・・アントニウスは可哀そ
うな美少女を、更なる地獄に蹴り堕とすつもりなのだ・・・
 振付師であるアントニウスは、ミュージカルなどの振り付けなども手がけており、演技
も得意だ。(良い人)の仮面で陰悪な素顔を隠すなど朝飯前である。
 傷つき横たわる美少女の視界に、優しい微笑みを浮かべる青年の姿が映った。
 少女は呆然と彼を見た。まさに地獄に仏、いや・・・神々しき後光を放つ救世主か・・・
 だが、現実には、温かき手を差し伸べるアントニウスの顔は、どう見ても救世主には見
えない。
 その偽りの救世主の手には、怪しげな香炉があり、禍々しい煙が立ち上っている。その
危険なる煙を嗅いだ美少女の心に、悪しき幻覚が襲いかかる!!
 香炉から立ち上る煙は、嗅いだ者に偽りの天国を見せる悪魔の香だったのだ。
 その影響により、卑屈で矮小なアントニウスの顔が、光り輝く(神)の顔に映し出され
る。少女は完全に(偽り)の救世主の虜になった。
 そして・・・絶対に掴んではならない悪の手に、美少女は縋り付いた・・・
 「あ、ああ・・・あなたはかみさまですね?たすけてください・・・どうか・・・」
 そして(偽りの)救世主は微笑む。
 「そうだよ、ぼくは君を助けに来た神様さ。可哀そうに、こんなにイジメられて。でも
安心して、ぼくの言う事だけ聞いていれば、君は天国に導かれるのさ。」
 「うれしい・・・なんでもいうことをききます。わたしのきゅうせいしゅさま・・・」
 美少女は一切の疑いもなく悪しきアントニウスの胸に顔を埋めた。
 絶望に叩き落とされた者は、藁にも縋る思いで助けを求める。それを逆手にとり、アン
トニウスは邪悪な策略で美少女を罠に嵌めたのだ。
 その行為を見ていたブレイズがアントニウスに告げた。
 「ムフフ、その子は君の手に堕ちたでやんすね。よければ、その子を君に貸してもいい
でやんす。」
 「本当にいいんですか?壊れても知りませんよ。」
 「あちきが欲しいのは、その子の身体だけでやんす。心はいくら壊れてもかまわないで
やんすよ。」
 「了解♪この子の魂を徹底的に壊してみせますよ、フフフ。」
 「楽しみでやんすね、イッヒッヒ。」
 善意や良心を利用して悪事を働く者・・・それこそは、一切の慈悲も優しさもない最悪
の外道・・・
 それを行うアントニウスの悪意をブレイズも賛同した。彼もまた、最悪の外道なのだ・・
・
 ブレイズに身体と純潔を壊され、そしてアントニウスに心を壊されようとしている美少
女。
 汚れ泣き美少女の魂は、2人の外道によって弄ばれるのであった・・・



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