魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫12)


  第56話 燃え上がる男と女の友情
原作者えのきさん

 出撃準備を終えた後発隊は、偵察に向かった先発隊からの報告を待っていた。
 だが、いくら待っても先発隊からの報告はない。
 痺れを切らしたガルアが、部下を調べに向かわせた。やがて帰って来た部下の報告に、
ガルアは怒りを露にする。
 「なんだと!?先発隊の連中は武器を置いてライザックに乗り込んだだと!?」
 「は、はい。重い装備を嫌がってましたから、横着して置いて行ったのでしょう。それ
に連中を指揮してた隊長もいません。たぶん、チンピラどもに唆されたと思われます。」
 「くそったれっ!!どいつもこいつもっ!!」
 怒声をあげるガルアだったが、部下の更なる報告が彼を驚愕させた。
 「それと、武器を置いて行った場所から隊の進んだ後がないんです。まったく、どのル
ートを通ってライザックに向かったのやら。」
 ガルアは報告を聞いて顔を引きつらせる。何か、嫌な予感を感じたのだ。
 「・・・まさか、そんな・・・」
 「どうしました将軍?顔色が悪いですけど。」
 「いや、なんでもない。もう下がれ。」
 部下が一礼して去った後、ガルアは深刻な顔で呟いた。
 「・・・どうやって進んだかじゃねえ、そこから進んでねえんだ。誰も・・・」
 その言葉を聞き、ガラシャは不可解な眼で尋ねた。
 「待ってよガルア。それって先発隊が消えたって事?冗談言わないで、100人からい
るんだよ。」
 「冗談なんかじゃねえよ。消えたんだ、いや・・・消されたんだ・・・」
 余りにも突拍子もない言葉にガラシャは戸惑ったが、ガルアの勘は今まで外れた事がな
い。もしガルアの勘が当たっていたとして、100人の兵を(消した)のは何者だ?
 進軍の後も、戦闘の後もない。まさに神隠し状態・・・
 事態に戸惑い、ガラシャも突拍子もない事を言い出した。
 「本当に(神様)に消されちゃったのかもね。連中の悪行に怒った(神様)にさ・・・
なーんてね。」
 冗談半分だったが、ガルアはまともに受け入れた。
 「それだったらマシだぜ、なんせ(神様)はお優しいンだからよ。もっと・・・ヤバイ
奴に消されたのかもな・・・」
 「ガルア・・・」
 2人は恐怖を堪えきれず足を震わせた。
 やがて・・・ヤバイ奴の正体が2人の脳裏に過る。
 「あいつかも・・・」
 その名を口にはできなかった。それは自分達を激しく憎悪している奴だから・・・
 このまま2人は絶望に沈んでしまうかに見えた、が。
 激しい恐怖に苛まれていたガルアは、己に喝を入れるべく立ち上がり、上半身裸になっ
た。
 「これくらいでビビッてちゃあ、猛将ガルアの名が泣くぜっ!!ガラシャ、俺をムチで
打てっ!!」
 仁王立ちするガルアを前にして、ガラシャはムチを手に頷く。
 「ええ、いいわよ。歯を食いしばってちょうだいっ!!」
 ムチが鋭い唸りを上げ、激しくガルアを打つ。その打撃に一切の手加減はない。
 鍛えられた男ですら一撃で根を上げる猛打を、ガルアは鬼の形相で耐える。精神を蝕む
恐怖を克服するためだ。
 皮膚も肉も裂け、血が滴る。それでも一言の呻きすらあげなかった。
 やがて、ガラシャは荒い息を吐いてムチの手を止めた。
 「はあはあ・・・どう、気合が入った?」
 「ありがとよっ、ビンビンに入ったぜっ!!」
 「よかった。それでこそ、あたしの強いガルアよっ。」
 活力を取り戻したガルアを見て笑ったガラシャは、衣服を全て脱ぎ捨て、ガルアに向き
直った。
 「次はあたしに喝を入れてっ!!メチャクチャになるまで打って!!」
 「いいともっ、いくぜっ!!」
 ムチを掴んだガルアは、渾身の力を込めてガラシャの裸身を打った。
 ガラシャほどムチを使いこなせないが、その豪腕から打ち出される打撃は強烈だった。
 見事なプロポ−ションの裸体にムチが唸り、形の良い乳房が揺れる。白い肌と尻が赤く
染まる。強烈な打撃の全てを、全裸のガラシャは恍惚とした表情で受け止めた。
 「ああっ、最高よガルアッ!!もっと打って!!」
 激しい快感をもって、その心に巣くう恐怖と戦うガラシャ。
 やがて恐怖を制したガラシャは膝をついた。
 「あっ、うう・・・」
 「大丈夫かっ!?少しやり過ぎたかもしれん・・・」
 気遣うガルアを見て、ガラシャは微笑みを浮かべる。
 「大丈夫よ・・・これで十分気合が入ったわ。それに、あんたのここも気合入りまくっ
てるじゃないのさ、ウフフ。」
 傷だらけの美しい手でガルアの股間を撫でる。そこは、余りにも激しく怒張している。
 そして悦びに溢れる笑顔を浮かべたガラシャは、逞しい巨根を愛撫した。
 「ん、んく・・・今日はとっても燃えるわ・・・んんく・・・あたしのアソコが熱くて
たまんないよ・・・んんぐ・・・」
 「おお〜、俺もだぜ〜っ。大爆発しそうだっ。」
 激しく求めあった2人は、傷だらけの身体を抱き合い、そして何度も絶頂に達した。強
い恐怖が、更に大きな情熱となって2人を燃え上がらせている。
 その激しい情熱の愛は、まさに男と女の友情と呼べるものであった。
 男と女に友情は無いという方もいるが、この悪鬼と魔女には、修羅場を潜った者でしか
理解できない特別な友情があった。
 それを愛と呼べばいいのかわからない。ただ・・・2人は強い絆で結ばれている事は確
かだった。
 やがて恐怖を克服した2人は、静かな時を裸で抱き合って過ごした。
 「こんなに燃えたの久しぶりだわね、アバガルダの合戦以来かしら?」
 「そうだな、あの時が懐かしいぜ。俺とお前、周りを全部敵に囲まれて、もうこれで最
後だからって抱き合ってよ・・・そしたら妙に力が湧いてきて、敵陣を2人で突破したん
だよなあ・・・」
 「うん、あの時の敵兵の面ったらなかったね。でもって、素っ裸のあたし達に度肝抜か
れてる奴らを全員ブチのめしてさ、フフフ・・・」
 歴戦の思い出に浸りながら抱き合う悪鬼と魔女。やがて宿敵と戦うため、2人は立ち上
がった・・・
 
 テントから出てきたガルア達を見た部下達は、その異様な形相に驚いた。
 「あ、あの、お二人ともどうなさったんですか?ケンカでもしたンすか?」
 驚くのも無理はない。顔も身体も傷だらけなのに、その眼は覇気と悦びに満ちている。
 「決戦の前に気合入れてたんだよ。てめえらもガラシャに根性入れてもらうか?」
 「その間抜けた顔、ちょっとはマシにしてあげるよ。どう?」
 美しく残虐な魔女の言葉に、部下達は激しく首を振る。
 「け、け、け、けっこうです〜っ!!遠慮しときます〜っ。」(涙)
 涙目で逃げる部下達を侮蔑の眼で見ていた2人は、互いの顔を見つめ合った。
 「先発隊を消しやがった奴は、あいつに間違いねえ。絶対に殺ってやるぜっ。」
 「そうね。あの小娘、今度こそ引導を渡してやるわよ。」
 悪鬼と魔女の心に宿るは、宿敵を屠る悦びである。2人こそ、まさに地獄の戦士と呼ぶ
に相応しかろう。
 もはや迷いはなかった。全身を快楽で武者震いさせ、地獄の戦士達は兵どもに檄を飛ば
すのであった・・・



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