魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫12)


  第52話 決戦の前夜・・・いざノクターンへ!!
原作者えのきさん

 アンジェラの墓地から戻ったアリエルは、真っ先に魔戦姫の城の治療室へと向かった。
 一カ月に及ぶ修練の間、一度も見舞いに訪れなかったマリーの元に行ったのだ。
 告げねばならぬ事は山ほどある。魔界の詳細などは別に話してもらっているだろうが、
アリエル自身に関する事をマリーは知らない。
 だから大切な友には、自らの口で告白したかった。自分が戦女神アンジェラを受け継い
だ事を。
 そして、一度も見舞えなかった事を詫びたかった・・・
 
 治療室にいたマリーは、なぜか申し訳なさそうな顔でアリエルを迎えた。
 「姫様・・・も、もう修練は終わったんですか?う、うちもその・・・ケガが治りまし
たし・・・その・・・」
 ソワソワした口調のマリーだったが、アリエルは構わず抱きしめた。
 「ケガが治ったのねマリーッ、よかった・・・動けなくなってるって聞いてたから心配
してたのよ。もうどこも痛くないの?傷は・・・え?」
 抱きしめたマリーの身体が、どうもおかしい。
 なにか違和感があるのだ。
 どのようなと言われても説明できないが、何度も抱きしめてきたマリーの身体の感触が、
微妙に変わっているのだ。
 それに、背骨を損傷して立ち上がる事ができなかったはずなのに、もう普通通り歩いて
いる。
 その時点で、アリエルはマリーが自分に何か隠し事をしているのに気付いた。
 特別な治療をしてもらったぐらいでソワソワする必要はないはず。他にわけがあるのに
間違いない。
 「あなたはどう言う治療を受けたの?こんなに早く治ると聞いてないわ、どうなの?」
 「あ、いや・・・せやから・・・そんなにコワイ顔せんといてくださいよぉ。早よ治し
てもらおうと思うて・・・」
 「もらおうと思って、どうしましたの。答えなさいマリーッ。」
 強い口調で尋ねられ、マリーは辛い表情でアリエルから離れた。
 「姫さま、うちがどんな姿になっても、嫌いにならんといてくださいね・・・」
 そう言うと、マリーは胸の上で両手をクロスさせた。そして・・・
 「オーガメイド、武装変化っ!!」
 掛け声と共にマリーの身体が銀色に変色し、水銀のように滑らかな動きで全く別の形に
変わった。
 細い手足が手っ甲とレッグ・ガードになり、ふくよかな胸や腹部が頑丈なボディーアー
マーとなり、愛嬌ある顔を有する頭部が・・・強固な兜に変化した。
 そう、マリーは、戦士の身体を守る鎧兜に変身したのだった。
 「ま、マリー・・・あなた、いったい・・・」
 声を震わせるアリエルの眼前に、浮遊するかの如く鎧兜が浮かび上がる。
 (黙っててすみません姫様、うち・・・魔界の改造手術で、変身能力をもった戦士、オ
ーガメイドに生まれ変わったんです。)
 浮かぶ鎧兜から、マリーの声が響く。
 アリエルの驚き様はなかった。アリエルが無敵の魔戦姫に生まれ変わったと同様に、マ
リーは驚異の戦士に生まれ変わっていたのだから・・・
 愕然とするアリエルの前で、鎧兜に変身していたマリーは変化を解く。
 元の愛嬌ある姿に戻ったマリーは、恐る恐るアリエルに歩み寄った。
 「姫さま、うちは姫様のお役になりたかったんです。姫様を守りたかったんです、せや
から・・・」
 憤慨で身体を震わせるアリエルが、重苦しい声を発した。
 「だから・・・なに?私に黙って・・・こんな事を・・・あなたは自分が何をしたか・・
・わかってるのっ!?」
 「わかってますっ、でも、こんな事言うたら姫様は反対するから・・・」
 「言い訳しないでっ!!」
 鋭い叱責を受け、思わず目を閉じるマリー。
 ぶたれる・・・そう思って硬直したが、しかしアリエルの優しい抱擁がマリーを驚かせ
た。
 「マリーッ!!」
 「あ、あの・・・姫さま?」
 マリーに抱きついたアリエルが、謝罪の涙を流し、嗚咽を漏らした。
 「マリーのバカ・・・ごめんなさい・・・あなたには幸せな人生を歩んでもらいたかっ
たの・・・なのに・・・私のせいであなたは・・・こんな事しなくてもよかったのに・・・
私の事なんか忘れて、幸せになったらよかったのに・・・マリーのバカ・・・ごめんなさ
い・・・マリー・・・」
 憤慨と謝罪を繰り返し、アリエルはただ泣いた。
 最愛の友を再び戦いの場に引き込んでしまった苦悩と、そして自分の身体を投げ売って
でも応えてくれたマリーの友情に、アリエルは涙したのだ。
 そんな複雑な心境も、マリーの愛によって癒される。
 「うち、姫様と一緒にいられるのが一番の幸せですねん。せやから・・・堪忍してくだ
さい。」
 その言葉は、アリエルにとって最高の喜びであった。
 悲しみと憤慨が喜びに変わり、愛する友の友情に抱擁で応えるアリエル。
 「もうっ、絶対に許してあげないから・・・大好きよマリー、永遠に離さないから・・・
」
 「姫さま・・・うちも姫様が大好きですわ・・・」
 2人は互いの身上を、包み隠さず話し合った。
 アンジェラ伝説が史実であった事、アリエルが2代目アンジェラとなった事。主君であ
る友を助けるため、魔界の改造手術を受けた事。
 これぞ、主従を超えた至高の愛であった。
 それを見守るリーリアもまた、過去の思い出を胸に過らせていた。そんなリーリアの傍
らには、安堵の表情を浮かべる人物の(影)が佇んでいる。
 (・・・リーリア。あなたと共に悪と戦った頃の事が、昨日のように思い浮かびますわ・
・・)
 リーリアは傍らの人物を微笑みながら見た。
 「ええ、あの子達なら、必ずやあなたの意志を継いでくれるでしょう。かつての私達の
ように・・・」
 金色のロングヘアーをなびかせる美女。幻の如く佇む美女は、ノクターンの者なら誰も
が知っている人物だった。
 それはかつて、ノクターンを悪魔から救った戦女神なのであった・・・
 
 その晩、アリエルとマリーは久しぶりに2人で風呂に入り、互いの身体を美しく洗いあ
った。
 いつもと変わらぬ2人の営み。でも、2人の身体はかつてのものではない。
 闇の力を秘めた魔族の身体、そして機械改造を施された身体・・・外観はそのままで、
中身は全く別のものだ。
 だが、もうひとつ変わらぬものがあった。
 それは2人を繋ぐ愛だった・・・
 
 風呂から出た後、寝室で互いの裸体を隅々まで見つめ合うアリエルとマリー。
 暫しの沈黙を経て、アリエルはマリーを抱きしめた。
 「どんな姿になっても、私はあなたを愛するわ。だからあなたも私を愛してほしいの・・
・私が怪物になっても、ずっと・・・」
 怪物との言葉に、マリーは悲しそうな顔をする。
 「何を言わはるんです、うちは姫様を見捨てたりしません。うちは永遠に姫様の侍女で
す、大切な友達です。」
 唇を重ね、心を一つにする2人。
 やがてアリエルは激しい感情に身を焦がした。
 「マリー、私を慰めて・・・今までの事を全部忘れるくらい、激しく私を犯してっ!!」
 余りにも辛く悲しい出来事が重なり過ぎたアリエルは、今まで我慢していた感情の全て
をマリーにぶつけた。
 その激しい感情を、マリーは何のためらいもなく受け止める。
 「はい、御奉仕させていただきます。」
 そのマリーの股間に、大きく怒張したモノが現れる。アリエルを慰めるため、フタナリ
に変身したのだった。
 優しくアリエルを抱き、怒張したモノを挿入して激しく御奉仕するマリー。
 「ひ、姫さまっ。うちは姫様が大好きですっ!!」
 「ああっ、私もよマリーッ。もっと突いてっ、私をメチャクチャに壊してーっ!!」
 求めあう2人は、激情に身を焦がして求めあった。
 全ての苦しみと悲しみを忘れるほど、激しく、愛しき想いのままに・・・
 
 やがて眠りについた2人は夢を見た。美しい黄金のロングヘアーを靡かせる戦女神の抱
擁を受ける夢を・・・
 2人は、戸惑いながらも女神を見つめた。
 「あ、あなたは・・・もしかして・・・」
 優しく頷いた女神は、2人に一つの仮面を渡した。それは女神の顔と同じ造形の仮面だ
った。
 (・・・我が意志を継ぐ者達よ。ノクターンの、いえ、世界の平和はそなた達に委ねら
れています。全てを守るため、全力をもって悪と戦いなさい・・・)
 女神はそう言って光の中に消えて行った。
 やがて朝が訪れ、目覚めた2人はベッドの上に女神の仮面が置かれている事に気付いて、
それを手にした。
 「あれは夢じゃなかったのですわね。」
 「戦女神アンジェラが、うちらを守ってくれはるんですね。」
 アリエルは頷き、女神の仮面をかぶった。
 すると・・・
 
 ―――シュウウウ・・・
 
 黒いロングヘアーが金色に光り輝き、彼女は夢に現れた戦女神と全く同じ姿に変化した。
 そう、2代目戦女神アンジェラとして、アリエルは生まれ変わったのだ。
 「マリー、戦いの時が来ました。行きましょうノクターンへ。」
 「はい、姫様。」
 見つめ合う2人の瞳には、宿敵を打倒し、愛する者を守るための決意が漲っていた・・・


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