魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫9)


  第34話 ガルダーンからの脱出
原作者えのきさん

 夜も暮れ、ボロボロにされたマリーが小屋に戻されていく。
 両腕を掴まれたマリーは、引き摺られながらも満足そうに笑っている。
 「・・・これでええんや・・・今頃、女の子と一緒に姫様は逃げてはるやろ・・・姫様
のためやったら、うちはどんなになってもかまへん・・・これでええんや・・・」
 たとえこの身果てようとも、マリーはアリエルを守るつもりでいる。だが、もうアリエ
ルと会えないだろう悲しみは深かった。
 「姫さま・・・うちはもう・・・」
 そう呟いた、その時である。
 突如、道の端から2人の人影が飛び出し、マリーを引き摺っている兵士達に踊りかかっ
た。
 
 ―――ドカッ、バキッ!!
 
 飛び出してきた者達に、いきなり鈍器で殴られた兵士達が頭にコブを作って伸びた。
 そして兵士達を殴った者達を見てマリーは驚愕する。
 「あ、あんたらは!?」
 なんと、襲撃者は先ほどアリエルを連れていった筈の奴隷の娘達であった。マリーを助
けるため、まだ残っていたのだ。
 「マリーさんっ、大丈夫ですか。」
 「なんで・・・なんで逃げへんかったんよ!?うちのことは放っといて逃げたらよかっ
たのにっ。」
 「すみません、姫様がマリーさんの名前をしきりに呼んでましたから。何があってもあ
なたを助けなきゃと思ったんです。」
 娘の言葉に声を失い、マリーはアリエルの愛を知る。自分は、最後までアリエルと共に
いよう・・・それが自分の使命だと、マリーは実感した。
 「おおきに、みんな・・・姫さま・・・」
 意を決したマリーは、娘達と共に走り出した。
 アリエルは近くの人気のない場所で、他の娘と隠れている。そこへ急ぐマリー達。
 アリエルの隠れている場所に一台の荷馬車が置かれており、すでに逃走の準備もできて
いた。
 素早く乗り込んだマリー達は、馬の手綱を引いて街の外へと走り出した。
 しばらくして、背後から怒声が轟いてきた。
 「おおーいっ!!アリエルが逃げたぞ〜っ!!」
 その声を聞き、マリー達は更に馬を早く走らせる。
 荷台にうずくまるアリエルの傍に、マリーは身を寄せる。
 「姫様、うちはずっと姫様のそばにおります。絶対離れまへんで。」
 「あ、うう・・・マリー・・・わたしも・・・ですわ・・・」
 固く抱き合う2人・・・
 しかし、まだ逃走が成功した訳ではなかった。マリエルとへインズ提督達がノクターン
軍と合流する場所を目指し、マリー達は暗い夜道をひたすら進んだ・・・



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