魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫8)


  第24話 狂気の絶対権力者
原作者えのきさん

激しい陵辱によって、姫君として、そして人としての全ての尊厳を残らず砕かれたアリエ
ル姫・・・
 しかし、それでもなお彼女の悪夢は終わらなかった。
 情けなど一切ない凶悪な陵辱者達が、アリエルに容赦するはずがないからだ。
 その疲弊しきったアリエルに、更なる悪夢が襲い掛かる。
 陵辱者は、敵国ガルダーンの者だけではなかったから・・・

        
  
 グリードル帝によって狂気の責めを受けたマリシア王妃は、蜜油の副作用が元で正気を
失ってしまった。
 グリードルは、蜜油をズィルクから手渡された時に、その強い副作用の事を聞いてはい
たが・・・それを無視してマリシアに使用してし、挙句には自分で蜜油を飲んで行為に及
んだ末の結果だった。
 心が壊れ、もはやグリードルの存在すらもわからなくなっているマリシア・・・しかし
そんな姿になってもなお、彼女は家族の事だけは心に残している。
 ベッドに横たえられた全裸のマリシアは、虚ろな目で虚空を見つめ、夫や子供達の名を
呟いていた。
 「・・・あふ・・・うふふ・・・へいか・・・ありえる・・・まりえる・・・」
 そんな彼女を、失意のグリードルはなおも責めたてる。最後の最後まで拒まれ、意のま
まにならなかった。それはグリードルの完全なる敗北を意味していた。
 激しく腰を振り、涙と鼻水を垂れ流しながらグリードルは唸った。
 「うおお〜、マリシア〜ッ。なんでお前は俺を拒むんだ〜っ。お前の男はこの俺だけな
んだぞおお〜っ。コケにしやがってよおお〜っ、ちくしょおおお〜っ。」
 自らも蜜油を服用したため、錯乱状態となっているグリードル・・・やがてその怨みの
矛先がアリエル、マリエルへと及んだ。
 「このままじゃ腹の虫がおさまらねえ・・・小娘とクソガキを地獄に叩き堕としてやる
っ。おいっ、もっと酒持って来いっ!!」
 声を荒げ、部屋の外で見張っている手下に酒を強要する。
 そして、怯えた顔の手下が酒のビンを抱えて恐る恐る部屋に入ってきた。
 床には大量の空瓶が転がっており、手下はヤケ酒を飲んで荒れている暴君を見かねて忠
言する。
 「・・・み、帝さま・・・そんなに飲まれては身体に毒であります・・・どうか御自重
くださいませ・・・」
 「ああ〜っ!?てめえ誰に向ってほざいてやがるっ!!」
 喚いたグリードルは手下を殴り飛ばし、度数の強い酒をラッパ飲みで喉に流し込んだ。
 「んぐ、んぐ・・・ぶはあっ、ういい〜。このままじゃすまさんぞおお・・・おいっ、
今すぐズィルクを呼べっ。ノクターン占領の状況報告に来いと伝えるんだっ!!」
 「は、はいっ。今すぐに〜っ!!」
 血相を変えて部屋を飛び出した手下は、大急ぎでズィルク参謀を部屋に連れてくる。
 酒臭い部屋に入ったズィルクも、帝の異様な姿に息を飲んだ。
 その姿は・・・まさに地獄の悪魔そのものだった。
 極度の不摂生と蜜油の副作用で、顔色は土気色に染まり、だらしなく半開きになった口
から涎が垂れている。
 それでありながら、血走った目だけは異常にギラギラしており、凶悪な欲望が漲ってい
る事がわかる。
 このまま不摂生を続ければ命にかかわるだろう・・・
 そんなグリードルをズィルクも諌めようと思ったが、顔を殴られている手下を見て忠言
を飲み込み、ノクターン占領の報告をする。
 「・・・し、失礼致します帝様。ノクターン占領の状況でありますが、今の所6割まで
占領が完了しております。北方のライザック領は攻め難い山岳地帯でありますゆえ、西の
リケルト領と東のハリム領を先に攻略している最中であります。」
 その報告を聞いたグリードルは、マリシアを強姦しながら攻略の作戦を練った。
 「フン・・・西と東の領地なんぞ後回しにしろ。先にライザックを全勢力をもって落と
すんだ。ノクターンの残党どもがライザックに集結して反撃してくれば厄介だ、奴らの団
結力を甘くみるんじゃねえ。」
 窮鼠ネコを噛むと言うが、グリードルはノクターンの反撃を最も考慮していた。
 今まで多くの者を追い詰めて来たグリードルは、命がけで反撃する者の強さを熟知して
いる。
 それに・・・蜜油の影響で錯乱し、酒を浴びるほど飲んで泥酔状態なのに、極めて冷静
なる指示を下している。その狡猾なる頭脳は悪魔をも恐れさすほどだった・・・
 攻略の変更を受理したズィルクは、すぐさま軍勢に報告しようとした。
 「では帝様、各部隊の指揮官に報告をして参ります。」
 「おい待て、もう1つ聞きたい事がある。マリエルを捕えにいったゲバルドはどーして
る、クソガキ1人まだ捕まえられんのか?」
マリエルの身柄奪取に向かっているゲバルドは、今だ任務を果たせずにいる。グリードル
はかなり苛立った表情だ。
 「は、はい。ゲバルドはマリエルを探して右往左往しているようですが・・・お気に召
されますな、そのうちに吉報が・・・」
 そんなズィルクの報告を聞いてグリードルは憤慨する。
 「そのうちじゃあ遅いンだよっ!!1週間以内にマリエルの首を持って来れなかったら、
お前を八つ裂きにしてブタの餌にしてやるとゲバルドに伝えろっ!!」
 「は、はいっ。」
 凄い剣幕のグリードルに気圧されたズィルクと手下は、頭を深く下げる。そして・・・
グリードルは、恐ろしく邪悪な顔で薄笑った・・・
 「それと・・・アリエル陵辱を行っているガルアとガラシャにも命令を伝えろ。攻略し
たノクターン領内でもアリエルを辱めるようにとな。」
 そして・・・恐ろしい企みを口にする。
 「そうだ、ノクターンの連中にも嬲らせてやろう。自分が愛し、愛された国民に犯られ
るンだ・・・アリエルにとって、これ以上の苦痛はないだろうぜ〜、クックック・・・」
 ベッドに横たわるマリシアを、激しく腰を振って責め続けるグリードル・・・彼の邪悪
にして凶悪な目が光り、ズィルクと手下の背中に、ゾ〜ッと悪寒が走った。
 「し、招致致しました〜。」
 逃げるように部屋から飛び出した2人は、廊下を歩きながら深い溜息をついた。背中に
冷汗が流れており、暴君への恐怖を物語っている。
 ズィルク達は汗を拭いながら重い口を開いた。
 「ふう・・・まったく寿命が縮んだわい。わしもワルのつもりだが、帝様には及ばん・・
・」
 「え、ええ・・・あれだけ酒に酔っているのに、攻略の判断には全く問題がありません。
普通の者なら舌も回らないほどでしょうに。帝さまは・・・(暴君の鑑)とでも言います
か・・・」
 深刻な顔の手下に、ズィルクも同意する。
 「うむ、そうじゃ・・・帝様は骨の髄まで(暴君)であらせられるのだ。真に絶対権力
者たるに相応しい御方と言うべきかの。」
 絶対権力者・・・
 富と権力の全てを統べる存在に、誰もがなりたいと思う。しかし、そうなるためには全
ての者を畏怖させる(力)が必要だ。
 グリードル帝は(悪の力)をもってして、絶対権力者に成り得た。
 皇族の末席から成りあがった彼の(邪悪さ)が、どれだけ強大であるか判ろうと言うも
のだ。
 (力)があれば夢の権力者になれる・・・
 しかし手下はグリードル帝の姿を見て、権力者の狂気を知った。
 「俺だって、世界の支配者になって権力と金を手に入れて、いい女に囲まれて毎日ヤリ
たいっすよ。でも・・・」
 手下は口篭もる。その言葉の続きをズィルクが代弁した。
 「ああは、なりたくない・・・と言いたいのだろう?」
 「その通りっす。」
 「わしも若い小娘は嬲りたいが、体を壊してまでヤリたいとは思わんわい。」
 頷きあうズィルクと手下・・・
 いくら富と権力と女を手中に収められる権力者になれるとしても、あんな(狂った暴君)
になどなりたくはない・・・
 弱肉強食が常であるガルダーンでも、誰一人グリードルと存在を変わりたいと思う者は
おらず、反逆する者もいない。
 ガルダーンを統べるには、(絶対的な悪の力)を有する必要がある。しかし、グリード
ル以外にそんな恐ろしい力を持つ者もいない。
 だからこそ、権力の頂点に座するグリードルは絶対的に君臨できるのであった。
 富と権力への飽くなき欲望、敵に対する残虐な戦略、配下に対する冷酷な支配、神をも
欺く狡猾な頭脳、悪魔をも恐れさす邪悪な精神・・・
 全ての(悪)を背負ったこの男こそ、まさに絶対権力者なのだ・・・


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