魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫7)


  第22話 絶望からの脱出
原作者えのきさん

18年間の鬱憤を晴らすかのように、猛り狂った獣のように・・・暴君は吠えてマリシ
アを責め立てる。
 激しく動かされるピストン運動に翻弄され、マリシアの意識が遠のく。
 「うあっ!?あうっ、ああっ・・・へいか、ありえる、ま、まりえるううう・・・」
 愛する者達の顔が、凶悪な蜜油の副作用でノイズのように薄れ行く・・・
 それでもなお、マリシアは家族の顔を忘れまいと懸命になった。失うまいと、逆らった・
・・
 
 ――陛下、アリエル、マリエル・・・
 
 その懸命なる想いを破壊しようと、グリードルはさらに激しく責めたてた。
 「うおおお〜っ!!まだお前の口から最後のセリフを聞いてないぜ〜っ。俺を愛すると
言え〜っ!!永遠に愛すると言え〜っ!!」
 責め苦が頂点に達していく。このまま果ててしまえば、確実に全てを失ってしまう・・・
 「わ、わ、わたしは・・・わたしは・・・」
 「んん〜っ!?私がなンだあっ、どうしたオラアアッ!!」
 頂点に達する寸前、マリシアの目がカッと開かれた!!
 「だれがあなたなどあいするものですかああっ!!じごくにおちなさいグリードルッ!!
」
 叫ぶや否や、渾身の力を込めてグリードルの股間を蹴り飛ばしたっ!!
 ――グシャッ!!
 「ぐおおおっ!?」
 潰れるような鈍い音が響き、泡を吹いて悶絶するグリードル。余りの激痛に、股間を押
さえたまま動けなくなった。
 「のおお〜っ、よぐもやりやがっだなああ〜っ。」
 そんなグリードルに目もくれず、マリシアは真っ直ぐに召使いに捕まっている男の子の
元へと走り出した。
 母は強しとは良く言ったものだ、マリシアは鬼気迫る勢いで召使いに迫った。
 「さあっ、マリエルをはなしなさいいっ!!」
 「ひっ、ひえええ〜っ。」
 その勢いに気圧された召使いは、男の子を投げ出してアタフタと逃げていく。
 速やかに男の子を抱き上げたマリシアは、一目散に部屋を飛び出した。
 「はあはあ・・・まりえる・・・あなたをかならずたすけますわ・・・」
 蜜油で意識を失いかけている彼女は、気力だけで走っていた。
 どこへどう逃げて良いかもわからず、ただ夢中で廊下を駆け巡る。
 蜜油の影響は視力にまで及んでおり、マリシアは廊下の先にある階段に気がついていな
い。
 「・・・はやくにげないと・・・はやく・・・はっ!?」
 不意にマリシアの足が空を切った・・・
 大きな音をたてて、マリシアは男の子を抱いたまま階段を転げ落ちていった・・・
 
 しばらくして、ようやく起き上がる事ができたグリードルは、股間を押さえたままヨロ
ヨロとマリシアの後を追った。
 「うおおお〜っ、どこだマリシア〜ッ。」
 血走った目で唸りながら歩くグリードルの姿は、まさに狂った悪鬼であった。
 自ら蜜油を口にした影響で、我を完全に失っている。部屋の衛兵も、駆け寄って来た手
下どもも、殺気だった暴君を遠巻きにするしかない状態だった。
 手下の騒ぎを聞いた幹部達が、何事かと駆け寄って来た。
 「これは一体なんの騒ぎだ!?」
 「あ、これはズィルク参謀・・・じつは・・・」
 「なに?帝様がご乱心なされた?」
 話を聞いたズィルク参謀は、グリードルに手渡した蜜油の事を思い出して顔面蒼白にな
る。
 「まさか、帝様は蜜油を御自分で使用なされたのでわ〜。あれほど服用なさらぬよう申
しましたのに〜っ。」
 「ズィルク参謀、何か御存知ですか?」
 「いや、あの・・・わ、わしは知らんっ。蜜油の事などなーんにも知らんぞっ!?」
 その騒動を耳にし、階段の下で横たわるマリシアは意識を取り戻した。



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