魔戦姫伝説(アンジェラ・閃光の魔戦姫4)


  第7話 復讐鬼ガルアとガラシャ、地獄より復活!!
原作者えのきさん

 ガルダーン帝国の最深部、この国で最も地獄に近い場所と呼ばれる所がある。
 その場所からは、連日連夜途切れる事なく悲鳴が上がり、断末魔の叫びがこだましてい
る。
 阿鼻叫喚地獄とでも言おうか、地獄の鬼が亡者を責め苛むが如く、その場所で凄惨な拷
問が繰り広げられていた。
 「や、や、やめてくれっ!!私が何をしたと言うんだーっ!?」
 轟く罪人の叫びが悲鳴に、絶叫に、そして断末魔に変わる。
 悲惨なる罪人の罪とは何か?
 それは・・・(無実の罪)である・・・
  このガルダーン帝国では、濡れ衣を着せられ、処刑場に送られる者が後を絶たない。
 善を尊ぶ者は、策略を巡らす悪党の手で罠に嵌められ、言われ無き罪状を課せられて奈
落に堕とされる。
 無論、ガルダーン帝国に弱者を弁護する者など存在しない。
 悪しき強者の証言こそが真実・・・弱さこそ、最も重い罪なのだ・・・
 この場所は、そういった人々の辿り着く最終の場所と言えよう。
 その阿鼻叫喚地獄の名は・・・(ヘルズ・ゲート)。
 
 アリエルを凌辱する人材を連れてこいと命じられたレッカードが、部下を引き連れジメ
ジメした廊下を歩いている。
 「・・・あの陰険ジジィ、知ってるなら自分で行けばいいじゃないか。なんで俺が直接
説得に行かなきゃならないんだ?」
 人材の選出をしたズィルクに文句を言っているレッカードだが、帝の命令となればしょ
うがない。
 彼らの歩いている場所、陰気な地下室の最も奥・・・そこに強固な鉄の扉があり、錆び
た扉の向こうから、ドス黒い血の臭いが漂ってくる。
 その扉の向こうこそ、地獄に最も近い場所(ヘルズ・ゲート)。
 ヘルズ・ゲートを直前にしたレッカードは、自分の気弱な所を部下に見られぬよう、扉
の前で部下を待たせる。
 「俺が話をつけてくる、お前はここで待ってろ。」
 虚勢を見せつけて振り返ると、そこには(地獄の門)がある。
 (入る者は全ての希望を捨てよ)と言う地獄門の話を思い出したレッカードは、手をブ
ルブル震わせて扉のノブを握った。
 その時・・・
 「うぎゃあああーっ!!」
 地獄のフタをはね飛ばすような絶叫が扉の向こうから響いてきた。
 
 悲鳴の轟く部屋の中・・・そこは、まさしく(地獄)だった・・・
 恐怖極まる拷問道具が幾つも並べられ、そのいずれにもベッタリと血糊がこびりついて
いる。
 血糊は幾重にも拷問道具に塗り重ねられており、この場所で数多の(罪無き)罪人が断
末魔の末路を遂げた事がわかる。
 部屋の奥で、更なる犠牲者の断末魔が響いていた。
 「助けてくれえええーっ!!ぐわあああーっ!!」
 バキバキと枯れ木の折れるような音が響き、哀れな犠牲者が、また1人・・・餌食にな
った。
 血で染まった床には、数人の罪人が倒れており、そのいずれも首や手足の骨が変な方向
に折れ曲がっている。
 血溜まりに累々と転がる罪無き罪人の山。その上に、新たな犠牲者が乗せられた。
 犠牲者の山を築き上げた処刑人は、恐ろしく屈強な肉体を揺らしてのし歩く。
 その処刑人は、片方の腕が肘から先がない。代わりに、残虐な光を放つ鉄の爪がついた
義手を装着しており、鉄の爪以外にも、様々な拷問道具を装着できるようになっている。
 鉄の爪で虫の息の罪人を引っかけ、無理強いに釣り上げる処刑人。
 「ネンネするにはまだ早いぜっ、おらっ、もっと鳴きやがれっ!!」
 残虐に笑い、豪腕で罪人の体をねじ曲げる。罪人の苦痛を楽しむかのように、凶悪に・・
・
 哀れ罪人は、骨を砕かれ、最悪の苦痛に責め苛まれる。
 「ぐはあああっ!!や、やめ・・・がはあっ!?」
 苦痛の絶頂で悶死する罪人。
 その死体を投げ飛ばした(隻腕)の処刑人は、相棒に声をかけた。
 「おいガラシャ、小娘はお前に任せるぜ。」
 処刑場の暗闇から、処刑人の相棒が姿を現した。
 そいつは(女)だった。
 隻腕の処刑人に引けをとらぬ冷酷な瞳を輝かせ、美しき(女)処刑人は処刑場の奥に歩
み寄る。
 そこにはか弱い少女が囚われていた・・・
 年は14、5歳ぐらいか。こんな少女まで、容赦ない(無実の)罪状が課せられている
のだ。
 恐怖に怯える少女は、泣きながら助けを請う。
 「あああ・・・やめて・・・たすけて・・・」
 だが、女処刑人はサディスティックに笑う。
 「観念するのね。恨むなら、あんたを陥れた奴を恨みなっ!!」
 ――パシィーンッ!!
 女処刑人は、手にしたムチで鋭く床を打ち鳴らした。
 そのムチは・・・革に鉄線を縫い込んだ特注のムチだった。罪人を効率よく責めるため
に造ったものだ。
 女処刑人がニタ〜と邪笑いを浮かべる・・・
 「さあ、お嬢さん。このムチに耐えられた奴はいないよ。大の男でも、10発で泣きを入
れて、20発で気が狂って・・・30発で悶絶死する代物さ。あんたなら何発まで耐えられる
かしら?試してみようじゃない・・・」
 「ひっ、ひいいいっ!??」
 凶悪な言葉が少女を絶望へと駆り立てる。逃げる気力すらない少女を、縄で縛り上げる
女処刑人。
 縛り上げた少女をうつ伏せにし、服を引き裂いてお尻と背中を丸出しにした。
 顔を床につける少女の頭を踏みつけ、女処刑人はムチを振るう。
 「さあ〜っ、カワイイ声で泣きな〜っ!!」
 ――ビシィーンッ!!バシィーンッ!!
 凄まじい打撃が少女の尻と背中を襲うっ!!
 白く薄い肌が引き裂かれ、強烈な激痛が少女を苦しめた。
 「ひぃあーっ!!はあっ、あひっ、あっ、ぎゃあああーっ!!」
 その激痛たるは尋常ではない。絹を裂く悲鳴が轟き、狂乱のムチは雄叫びをあげて血を
啜った。
 鮮血が白い肌を染め、やがて少女は力尽きた・・・
 「あひいい・・・ひ・・・あひ・・・あへっ、えへっ・・・えへへ・・・」
 小便を漏らしながらケラケラ笑い、体をヒクヒク痙攣させている。
 白目を剥き、泡を吹いて悶絶する少女は、完全に壊れてしまっていた。
 汚物をひり出して悶える少女の尻を蹴り、女処刑人はつまらなさそうに呟いた。
 「チッ、もう壊れちゃったよ、面白くないね。」
 不満げな女処刑人は、隻腕の処刑人に向き直る。
 「ねえガルア。もっと生きのいいのはいないの?これじゃあ満足できないよ。」
 不満なのは隻腕の処刑人も同様だった。
 「まったくだ。毎日毎日、アホどもを相手に拷問ゴッコか・・・つまんねえよなあ〜。
なんで(将軍)だった俺達がこんな退屈なことしなきゃなんねーんだ。」
 ――(将軍だった・・・)
 そう、この2人こそ、先の戦いでアリシアに惨敗し、将軍の座から(拷問係)に格下げ
されたガルア、ガラシャの両将軍であったのだ・・・
 邪悪な参謀のズィルクによって処刑は免れていたが、拷問と処刑の係にまで降格させら
れていた2人は、ここヘルズ・ゲートで罪人の責めに明け暮れる日々を送っていた。
 生き長らえたとはいえ、こんな陰気な場所での生活は2人に極度のストレスをもたらし
ていた。
 処刑する罪人もいなくなり、不満げに少女を踏みにじるガルアとガラシャ。
 「けっ、クソまみれの小娘なんざ臭えだけだ。壊す前に犯っとけばよかったぜ。」
 「あんたが私に任せるって言ったんだよ?いまさら文句言わないでよ。」
 「クソッたれっ!!もう我慢できねえっ。それもこれも全部アリエルのせいだっ、畜生
っ!!」
 キレたガルアが大声で喚いたその時である。
 入り口の方から人の気配がして、ガルア達は振り返った。扉が半開きになっており、何
者かがコソコソ覗いている。
 「だれだっ、そこにいるのはっ?」
 ガルアが扉を強引に開けると、そこに怯えた顔のレッカードが立っている。
 「わ、わはは・・・ガルアさん・・・お久しぶり〜。」
 「んん?てめえレッカードじゃねーか、何しにきやがった。」
 「いやあの・・・じつはその・・・あんた達に話があってさ・・・」
 居丈高に訪ねるガルアと、ヘラヘラ愛想笑いするレッカード。
 この2人、かつては上司と部下の関係であった。しかし今は拷問係と(現役)将軍・・・
立場は逆転しているが、優位そのものは変わっていないようだ。
 なにしろ、レッカードはガルアの下で、下僕のような扱いを受けていたから・・・
 レッカードの胸についている将軍の階級章を見て目を釣り上げるガルア。
 「聞いたぜ、てめえ俺に代わって将軍になったそうだな?世も末だぜ、俺の後ろでヘコ
ヘコしてたカスが将軍とはよ〜。」
 ガルアの横に立つガラシャも、不服そうにレッカードを睨んでいる。
 「本当にね。ところで話ってなにさ、どーせ降格した私達を笑いに来たんでしょう?」
 その問いに、首をブルブル振って答えるレッカード。
 「ち、ち、ち、違うっ!!聞いてくれっ。俺はあんたらに良い話を持ってきたんだっ!!
」
 「ほ〜う、それは是非とも聞かせてもらいてぇな。ブチ殺す罪人もいなくて退屈してた
しよ、ちょっと面貸せやっ。」
 そう言うなり、ガルアはレッカードを掴んで拷問室に連れ込もうとする。
 (しかもレッカードの部下が背中を後押ししている。)
 「レッカード将軍、さっきあなたは俺が話をつけるって言いましたよね!?私は待って
ますから。ささ、遠慮なくどうぞ〜。」
 「わ〜っ!!なにするんだっ!?この薄情者〜っ!!」
 バタンと閉まる地獄の門・・・
 閉じた扉を見て、レッカードの部下は合掌している。
 「殺されたら骨は拾ってあげますから、お達者で〜。」


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