魔戦姫伝説(アンジェラ外伝) 初代アンジェラ編・ノクターンの伝説(3)


  第6話 壮絶!!魔族との激戦
原作者えのきさん

               
 魔族に襲撃されたノクターン国王の首都フォルテを救うべく、私達武神の兵団は悪しき魔族と戦い、勝利を収めたはずでした。多くの民を救ったはず・・・でした・・・
 しかし、それは偽りの勝利、泡沫の喜び・・・
 全ては魔族の仕組んだ策略でした。
 私とラムゼクスが敵の罠に気付いた時には、すでに遅かったのです。
 突如として安寧が引き裂かれ、闇より現れた真の敵!!
 驚愕する私達を嘲笑う、凶悪な笑い・・・その敵の名は、魔神バール・ダイモン・・・
 
 私達は、敵の大軍勢によって完全に包囲されてしまいました。
 武神の兵団は精鋭揃いの強き兵団でありますが、バール・ダイモン率いる魔族の軍勢は、武神の兵団を遙に上回る数で私達を圧倒しています。
 そして敵の数も然る事ながら、魔族の戦闘レベルも武神の兵団を超えていました。
 先に戦った敵は、腕力しか能のない雑魚のモンスターでしたが、眼前の大軍勢は魔術も使える戦闘魔兵だったのです。たとえ同数であったとしても苦戦は免れません。
 敵の罠に嵌まった私達は、絶体絶命の境地に立たされていました・・・

 バール・ダイモンと魔族の軍勢の出現によって、ノクターン王国が誇る美しく神々しいフォルテ城は、一転して恐ろしい伏魔殿に変貌し、その城内に凶悪な邪笑いが響きました。
 その声の主、魔神バール・ダイモンは、まさに悪の化身であります。
 邪な欲望の色に染まった屈強な肉体。ドクドクと流れる黒い血により、筋肉は凄まじい悪の覇気を滾らせて怒張しており、如何なる正義の刃をも弾き返す強固さを見せつけていました。
 でも長い修練で鍛え抜いた肉体と言うより、邪悪な魔力や妖しい薬物を駆使して筋骨隆々に造り上げた感じです。強さのみを固辞し、不気味なほど隆起した筋肉に健全さはカケラもなく、嫌悪感と禍々しさしか伝わりません。
 (※薬物投与のドーピングで、異常なほど増強させた肉体と言えば判りやすいと思います。)
 しかし筋肉バカと侮れません。列強の戦闘魔兵を束ね、自らを(魔神)と称しているからして、岩をも砕く悪の肉体だけでなく、魔術のレベルも極めて高い事がはっきりとわかります。
 魔力の強さを示すオーラは、他の魔族達より遙に強く発せられており、それは離れていても私の身体を引き裂くほどに激しく感じられました。
 恐れ戦く私達を見据えるバール・ダイモンは、侮蔑の籠もった眼で不敵に笑います。
 「ふっふっふ〜、先程の威勢はどーした。神族の実力はその程度か?」
 大軍勢に取り囲まれ絶体絶命の私達でしたが、武神のプライドは決して揺るぎません。
 激しい闘志を燃やし、老戦士ラムゼクスは魔神を睨みます。
 「だまし討ちなど姑息な真似をする奴に言われたくないぞっ!!我ら武神の誇りにかけて、正々堂々と貴様らを撃滅してくれるっ!!」
 怒りの声をあげ、怒濤の攻撃をするラムゼクス。その手から発せられる破魔の光が、目前の敵を怯ませました。
 「ぐわあ〜っ、ま、まぶしい〜っ。」
 「正義の光に敵は無しっ!!悪しき魔族ども我の名を確と聞けっ。我こそは武神の戦士ラムゼクスであるっ!!」
 次々と敵を粉砕するラムゼクスに続き、他の兵も魔族の軍勢に攻撃をかけます。
 「突撃槍兵前へっ!!弓隊は後方から援護っ。残りの者は姫様を護衛せよっ。総員一歩も退くでないぞっ!!」
 「了解っ!!」
 掛け声も勇ましく、果敢に突き進む兵達・・・その戦いは先程のモンスター相手の戦いとは比べ物になりません。刃と刃が火花を散らし、正義の光と悪の炎が激突する凄まじい戦闘となりました。
 大軍勢に対するは少数兵団であり、窮鼠猫を噛むと言いますが、追い詰められた私達は全員一丸となって猛反撃に転じます。
 無論、ヤケになって無謀な戦いをするわけではありません。大軍勢に囲まれた少数の兵が戦いを制するには、集中攻撃にて突破口を開き、敵の将を倒す事です。ラムゼクスも兵も、私を中央に守りながら敵将バール・ダイモンへと突撃しました。
 優位にあった魔族達は油断して、兵団の進撃を許してしまいます。
 岩を押し割るクサビの如く、兵団は壁のように立ちはばかる軍勢を貫いてバール・ダイモンに肉薄しました。
 そして、構えたラムゼクスの両手に、きらめく破魔の光が集約されました。
 武神族最強戦士の必殺技が出るのです!!
 「バール・ダイモンとやら、うぬの命運もここまでっ!!受けてみよっ、武神族奥義、神光波動砲ーっ!!」
 
 −−−ズドオオオーンッ!!
 
 全身全霊の気を込めた光の波動が、砲撃の如くラムゼクスの両腕から発射され、居並ぶ魔族を吹き飛ばしてバール・ダイモンに直撃したのです。
 バール・ダイモンは強固な肉体をもって光の波動を受け止めました。
 怒濤の爆音が轟き、眩むような閃光と衝撃波が周辺を激震させます。誰もが、木っ端微塵に砕け散る魔神の最後を考えたでしょうが・・・
 目を閉じていた私は、バラバラになった魔神を思い浮かべながら恐る恐る目を開きました、が・・・
 私の瞳に映ったのは、驚愕と絶望の表情で立ち竦むラムゼクスと武神の兵達だったのです。
 「ま、まさか・・・全くダメージがな・・・い・・・!?」
 愕然とするラムゼクスの顔・・・私はこれほどまでに戦意を喪失した最強戦士の顔を見た事はありません。
 舞い上がる砂塵の中、ユラリと立ち上がる魔神の体には掠り傷があるのみ・・・ラムゼクス渾身の必殺技が効かなかったのです!!
 しかも・・・魔神は不敵にもニヤリと笑いました。
 「ふふん、やるなオイボレ。せっかく(新調)した肉体に傷がついたではないか。この落とし前は高くつくぞっ!!」
魔神の怒声が轟き、その恐ろしい眼から魔の熱線が発射されたのです。

---シュバッアアッ!!

 鋭い熱線の矢は、ラムゼクスと先頭の兵を貫きました。
 「うわあああーっ!!」
 次々倒れる兵達。肩を撃ち抜かれたラムゼクスは、苦悶の叫びをあげて昏倒してしまいます。
 「ぐおおっ!!お、おのれ・・・一生の不覚!!」
 肩を押さえて苦しむラムゼクスを、私とミルミルが庇いました。
 「大丈夫っ!?・・・ああ、ひどい傷ですわ・・・」
 「ラムおじさーん、しっかりです〜っ。」
 「ご、御心配には及びませんぞ姫さま・・・なんのこれしき・・・ぐうああっ。」
 肩を熱線で貫かれたダメージは深刻でした。攻撃はおろか、腕を上げる事もままならないのです。
 この魔神の攻撃でラムゼクスを始め、突撃槍兵全員が負傷し、私達は完全に戦闘不能になりました。
 攻撃の主力を失った私達を見て、バール・ダイモンは余裕で高笑います。
 「ぐわっはっは〜。どーだ、わしの強さを思い知ったか。いくら強がっても、お前らは所詮その程度よ〜。」
 おそらく、自身の強さをアピールするためにわざと私達の攻撃を受けていたのでしょう。戦意喪失した武神の兵団を前にして、自信満々でふんぞり返っています。
 そして、私達を取り囲み、ジリジリと迫ってくる魔族達・・・その時、危機一髪の私達の頭上から希望の光が差し込みました。
 城の天井が破られ、その穴からウィルゲイトが手招きしています。
 私の顔に喜びが満ち溢れました。
 「ウィルゲイトッ。よかった、突破口を開いてくれたのですねっ。」
 偵察で敵の不意打ちを察知し、手を打ってくれていた・・・私は、単純にそう思っていました・・・
 手招きしている顔に、冷酷な笑いが浮かんでいるとも知らずに・・・




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