魔戦姫伝説(ミスティーア・炎の魔戦姫)第2話.伏魔殿の陰謀14


   狂気の陵辱とデスガッドの野望
ムーンライズ

  
 電撃魔人の兄に取り押さえられていたエルとアルが、突如現れた
2人の魔人達を見た。
 「あのロリコンゴリラ、生きてたですわ・・・」
 「ヒトデのオバケですの・・・」
 苦悶の表情の2人に、ヒトデ魔人と雪男の視線が向けられる。
 「よう、カワイ子ちゃんども。ご主人様を助けられなくて残念だ
な。」
 嘲る声のヒトデ魔人を睨むエルとアル。
 「うるさいですわヒトデ男っ!!」
 「姫様の仇を討つですのっ!!」
 怒りを露にしている2人に、今度は雪男がイヤラシイ声で迫った。
 「ウホホ〜、ご主人様の心配してる暇はねーど。」
 巨大な毛むくじゃらの手が2人の首筋を掴み、子猫のように持ち
上げた。
 「やめてっ、離すですわっ!!」
 「触るんじゃないですのっ!!」
 ジタバタ暴れるが、雪男の怪力には逆らえなかった。
 「ウホ?さっきのバカ力はどーしたんだぁ?」
 頭にクエスチョンマークを浮べて尋ねる雪男に、電撃魔人の弟が
答える。
 「あれだよ、あれ。魔法陣でこいつ等の魔力を奪ってンのさ。」
 「ウホウホ、そーいう訳か。・・・って事は、こいつ等は魔族っ
て事?」
 雪男のマヌケた言葉に、呆れる電撃魔人。
 「ケッ、おめえは小娘どもが魔族だっての知らなかったのかぁ?」
 「そんな事どーでもいいのだ〜、ウホー。」
 カワイイ女の子をイジメる事しか頭に無い雪男には、2人が魔族
だろうが何だろうが関係なかった。
 そして、逆恨みを抱くヒトデ魔人がミスティーアに歩み寄った。
 「おらっ、目ェ覚ませっ!!」
 気絶しているミスティーアの腹に、ヒトデ魔人のパンチが炸裂す
る。
 「うぐっ、ううう・・・あなたは・・・さ、さっきの・・・」
 苦悶に歪む目を開けると、目の前に陰険なヒトデ魔人が立ってい
る。
 「ウヒヒ・・・イイ格好じゃねーか、アソコが丸見えだぜ〜。」
 ニタニタ笑うヒトデ魔人から顔を背けるミスティーア。これ以上
の恥辱に耐えられなくなったのだ。
 「それ以上見たら・・・陰険な目を焼いてあげますわよっ。」
 顔を背けたまま睨むミスティーアを、更に陰険な目で睨み返す。
 「ほう、焼けるものならやってみろや。魔力を奪われてるって事
は、炎が使えねーって事だよなあ。炎が使えないテメエなんざ怖く
もなーんともねぇぜ。」
 ミスティーアのカールヘアーを掴み、彼女に焼かれた顔を見せつ
けるヒトデ魔人。
 「よくも俺様の面をこんなにしてくれたな・・・この落とし前は
きっちり払ってもらうぞ・・・そのカワイイ顔を、俺の面よりも醜
く切り刻んでやろうか?」
 右腕をナイフに変え、切っ先をミスティーアの顔に突き付ける。
 「目玉を抉りだそうか?鼻と耳を削ぎ落としてやろうか?それと
も・・・舌を切り落としてアソコに捻じ込んでやろうかあ〜。自分
の舌を捻じ込まれて悶える姫君の姿を拝んでみたいぜ〜、ヒヒヒッ。
」
 その余りにも陰湿な言葉攻めに、ミスティーアの身体から寒気が
走った。身の毛もよだつとはこの事である。
 「ううう・・・やめて・・・」
 身動きが取れないミスティーアに、更なる言葉攻めが迫る。
 「縄で縛られたオッパイが痛いだろうが?こーんなに腫れあがっ
てよ〜。オッパイを切り落としたら楽になるぜぇ〜。」
 鋭い切っ先が張り詰めた乳房の上を走り、赤い鮮血が滲み出る。
 激痛に苛まれたミスティーアは、声にならない呻きを上げた。
 「あいい・・・いたあ・・・い・・・」
 その様子を見ている電撃魔人兄弟は、少し怪訝な顔をしている。
 「なあ兄貴ぃー。ヒトデ野郎に任せていいのか?陰険なあいつの
事だ、小娘を死なせちまうンじゃねーの?」
 「フッ、その前に止めればいいさ。ようは死ななきゃいいんだか
らな。奴の好きにさせておこうぜ、フフフ・・・」
 呟きあうサド兄弟の様子など意に介さず、ひたすらミスティーア
を苦しめる事に専念しているヒトデ魔人。
 「イヒヒッ、痛いか?、乳首がおっ立ってるぜ〜。ちょん切って
てやろうか〜。」
 「や、やめてーっ!!いたあーいいいっ!!」
 ミスティーアの全身に、ナイフの切り傷が無数に走る。縄で縛ら
れ、電気ムチで痛めつけられた肌を更にナイフで切りつけられる・・
・これほどの苦痛はなかった。
 ヒトデ魔人の陰湿な責苦に、ただ泣き叫ぶしかないミスティーア
だった。
 それは雪男に捕まっているエルとアルも同様だ。
 「あああ・・・ひ、姫様・・・やめて・・・姫様をイジメないで
ぇ・・・」
 泣きじゃくりながら懇願するが、そんな事を聞き入れる魔人達で
はなかった。
 「ウホホ〜ッ、そんなにご主人様がイジメられるのがイヤなら、
オメーらもイジメてやるどぉ〜。」
 片手で2人を抱えた雪男は、もう片手で2人のセーラー服を引き
裂き始める。
 ミスティーアのドレスも、2人のセーラー服も魔力を失って再生
能力を発揮できない。無情にも2人は下着姿にされた。
 「「いやーっ、やめてですわっ!!ですのっ!!」」
 声をそろえて泣き叫ぶエルとアルの声を聞きつけたヒトデ魔人が、
2人をイジメている雪男に向き直った。
 「おい、ゴリ公。小娘どもをこっちに連れて来い。」
 「ウホッ?何する気だぁ?」
 「フフン、知れた事よ。炎使いの目の前で、そいつ等をイジメて
やろうって事だ。そいつ等は炎使いにとって命よりも大事な存在み
てーだからな。大切な奴をイジメられるのは、どんな苦痛よりも辛
いぜ。」
 陰険なヒトデ魔人の言葉に、ミスティーアは絶叫を上げる。
 「や、やめてーっ!!エルとアルをイジメないでーっ!!あなた
がイジメたいのは私でしょうっ!?イジメるなら私をイジメなさぁ
ーいっ!!」
 切り付けられた痛みも忘れて叫ぶミスティーアだったが、身動き
が取れない彼女には、エルとアルを助ける手立てなど無かった。
 「んん〜、イイ声だぜ、胸がスーッとする。若い娘の叫び声ほど
キモチイイのはねえ・・・もっと泣かせてやるぜ〜。」
 卑劣な言葉を投げかけ、ミスティーアに背を向けたヒトデ魔人が、
エルとアルに歩み寄る。
 「いやっ、来ないでですわっ。」
 「近寄るなヒトデ男ですのっ。」
 泣き喚く2人を見るヒトデ魔人が、陰湿に笑った。
 「中々カワイイじゃねーか、ロリコンじゃなくても萌えちまうぜ。
」
 2人の下着が、ナイフでビリビリと切り裂かれていく。丸裸にさ
れる2人に、雪男は大喜びしている。
 「ウホホ〜ッ、カワイイオッパイだ〜。モミモミしてやるどー。」
 露になった2人のカワイイ胸を、毛むくじゃらの豪腕が揉みくち
ゃにした。
 「ひいいーっ、いやーっ!!」
 2人の悲鳴が響き、ミスティーアの顔が苦痛に歪む。
 「ああ、エル・・・アル・・・」
 彼女の脳裏に、悪夢の光景が蘇っている。悪漢ガスターク一味に
陵辱された時の記憶が・・・
 ガスタークに取り押さえられ、目の前で愛するエルとアルがラッ
トとグスタフの2人に陵辱された時と同じシチュエーションが、目
の前で展開されようとしている。
 「もういや・・・あの子達が苦しむのを見たくない・・・」
 嘆くミスティーアは、己の無力さを呪うしかなかった。
 そして、更なる悲痛が彼女を襲う。
 「おいサド兄弟ども、おめえ達もこいつ等をイジメろや。」
 電撃魔人兄弟に声をかけるヒトデ魔人。
 「チッ、サドサド言うんじゃねえよ。陰険ヒトデが・・・」
 怪訝な顔をした兄弟がエルとアルに歩み寄る。
 集まった魔人達の前に投げ出されたエルとアルが、震えながら抱
き合っている。
 「あうう・・・イジメないで、ですわ・・・」
 「あひいい・・・こ、こわいですの・・・」
 怯える2人に、邪悪な言葉が浴びせられた。
 「ウホホ〜、どーやってイジメよーかなー?」
 「へへッ、ズタズタに切り裂いてやるぜ〜。」
 「ご主人様同様に縄で吊るして欲しいか?」
 「ケケケッ、電気ムチでブン殴ってやるぜ。」
 にじり寄る魔人達・・・
 「おらあ〜っ!!」
 毛むくじゃらの豪腕が、鋭いナイフが、電気ムチが2人を襲い、
絶叫が上がった。
 「き、きゃあああーっ!!」
 袋叩きにされた2人は、声も出ないほどボロボロ状態にされた。
 「あうう・・・」
 床に転がる2人を見たミスティーアが、縄を解こうと必死になっ
て身体を揺らした。
 「エルーッ、アルーッ!!」
 泣きじゃくりながら足掻くうち、縄を止めていた金具が緩んでミ
スティーアは床に転がり落ちる。
 「はうっ、ううう・・・エル、アル・・・い、今助けるわ・・・」
 苦痛に堪え、縛られたまま床を這いずるミスティーア。
 その姿を見たヒトデ魔人が雪男に目配せをした。
 「へッ、往生際の悪い奴だぜ。おいゴリ公、奴を大人しくさせろ
っ。」
 「ウホホッ、合点承知っ。」
 すうっと息を吸い込んだ雪男は、起き上がろうとしたミスティー
ア目掛けてコールドブレスを浴びせた。
 「ああっ、あああっ!?」
 コールドブレスの直撃を受けたミスティーアは、縛られたまま首
から下を氷漬けにされてしまった。
 「あ、あああ・・・つ、つめたいいい・・・」
 固まった氷によって完全に身動きが取れなくなり、一糸纏わぬ裸
体から、極冷の氷が容赦無く体温を奪っていく。
 ミスティーアの目から生気が無くなり、唇が見る見るうちに紫色
に変色した。
 「うああ・・・だ、出して・・・」
 苦しむミスティーアに歩み寄った雪男は、尻を焼かれた恨みを込
め、ゲンコツでミスティーアの顔を殴った。
 「ウッホ〜ッ!!さっきはよくもやったな〜っ!!お返しだっ、
このこの〜っ!!」
 「はぐっ、はうっ、あうっ。」
 氷漬けにされたミスティーアは、容赦無い殴打に晒されて血を吐
いた。
 「げふっ・・・ううう・・・」
 「ウホホッ、ザマーみろっ、ペッ。」
 嘲笑った雪男は、ミスティーアの顔に唾を吐きかけて背を向ける。
 「うああ・・・エル・・・アル・・・」
 ドスドスと歩いて行く雪男の先には、床に倒れているエルとアル
がいる。雪男と魔人達が、これから何をしようとしているかは明白
だった。
 凍った唾を払う事もできず、ただエルとアルの名前を呼ぶしかな
かった。
 「さあ、炎使いを黙らせた事だし・・・お楽しみの続きと行こう
か。」
 ヒトデ魔人の声に、他の3人も頷く。
 「ケケケッ、口が2つにアソコの穴が2つ。ちょうどいいぜっ、
6人プレイといこうぜ〜。」
 「フフッ、それはいい。」
 弟に賛同した兄が、電気ムチで脅しながらエルとアルを四つん這
いにさせた。
 「さあっ、犬みたいに這いつくばれっ!!」
 「あひっ!?ひいいっ。」
 犬のようにされたアルのカワイイお尻を、雪男の豪腕が掴んだ。
 「ウホホ〜、オレの○ン○ンを入れてやるどぉ〜。」
 剛毛に被われた巨大なイチモツが捻じ込まれる。
 「ひいいっ、やめてですのーっ!!」
 叫ぶアルの横で、ヒトデ魔人がエルのピンク色の秘部に、醜悪な
イチモツを挿入する。
 「おらあ〜っ、イカせてやるぜ〜っ!!」
 「いやあっ、だ、ダメですわーっ!!」
 そして悶え苦しむ2人の口に、電撃魔人兄弟のイチモツが押し込
まれた。
 「うぐっ!?ぐううーっ!!」
 「あぐうっ、うぐぐっ!!」
 イチモツを咥えさせられた2人が、目を見開いて苦しんでいる。
鱗で被われたイチモツから電撃が流されているのだ。
 「ウケケッ、どうだぁ〜?電撃チ○コの味はよぉ〜っ。」
 「ぶグぐっ、ヴぐっ・グ・グ・グ・・・・」
 強烈な電撃を食らわされた2人の身体が激しく硬直し、秘部がキ
リリと締まっていく。
 「ウッホ〜ッ、締まるどーっ!!」
 「いいぜ〜っ、もっと電撃を食らわせろ〜っ!!」
 締まる2人の秘部に、歓喜の声を上げる雪男とヒトデ魔人。
 「そーらそら、いくぜ、いくぜっ・・・おっ、おお〜うっ!!」
 激しいストロークで責めていた魔人達が、雄叫びを上げてエルと
アルの中に大量の精液を放出する。
 「うああ・・・ううう・・・」
 激しい責苦を受けたエルとアルが、白目を向いて悶絶してしまう。
 「ケ〜ッケッケッ!!最高だぜ〜っ!!」
 「ウホホ〜ッ、気持ちよかったどー。」
 悦ぶ魔人達。そして復讐を果たしたヒトデ魔人がミスティーアを
睨んで喚いた。
 「小娘が〜、悔しかったら自慢の炎で氷を溶かしてみろや〜、ヒ
ャ〜ハハッ!!」
 ゲラゲラと笑い声を上げる魔人達の声が、氷漬けにされたミステ
ィーアの心をズタズタに引き裂いた。
 「あうう・・ユルしてエル、アル・・・ごめンなさイ・・・たす
けラれなくて・・・ほンとうに・・・ごめんナサイ・・・」
 氷漬けにされている苦痛よりも、魔人達に痛めつけられる痛みよ
りも、エルとアルを苦しめられた苦痛の方が、そして2人を助けら
れない痛みの方が彼女を苦しめていた・・・
 
 同じ頃デスガッドは、自室に戻り、弟子達に陵辱されている魔戦
姫達の様子をスクリーン越しに見ていた。
 「ふははっ、倒された我が弟子達の恨みも、これで少しは晴れた
であろう。」
 椅子に座っていたデスガッドは、十字架に磔られた全裸のスノウ
ホワイトに向き直った。
 「これで貴様の仲間どももお終いだ、諦めがついたであろう。」
 「ううう・・・天鳳姫さん・・・ミスティーア姫・・・エルちゃ
ん、アルちゃん・・・リンリンさん、ランランさん・・・」
 凄惨な地下室の様子や拷問室の様子に、皆の名を呼びながら涙す
るスノウホワイト。
 彼女の胸に刺さっている鉄の針からは、魔力を帯びた真っ赤な血
が滴り落ちている。十字架の下には皿が置かれていて、足元からポ
タポタと落ちる(魔血)を採取しているのだ。
 スノウホワイトに歩み寄ったデスガッドは、血の溜まった皿を手
にとって魔血を飲み干した。
 「ククク・・・美味いではないか、最高にな。」
 魔血を飲んだデスガッドの身体に力が漲ってくる。背中から出て
いるイカの触手がウネウネと蠢いた。
 「フッ、所詮魔族どもは我々の生贄でしかない。生贄の分際で我
々に楯突こうなどとは笑止千万よっ。」
 嘲笑うデスガッドを見て、スノウホワイトは震える唇を開けた。
 「あ、あなたは・・・人間でも魔族でもない・・・あなたの正体
は・・・神族ですね・・・?」
 スノウホワイトの問いに、デスガッドは僅かに沈黙した。
 神族・・・それは闇の魔族と対極に位置し、光の力を持って世界
を統べる存在である。
 人間から神や天使と称され、賛美を受けている神族がデスガッド
の正体だとスノウホワイトは言うのだった。
 沈黙を破り、デスガッドは口を開いた。
 「フフフ・・・そうだったな、貴様は私の正体を見抜いていたの
だったな。」
 「そ、それでは・・・やはり・・・」
 そして、デスガッドは自身の正体を明らかにした。
 「いかにも、私はかつて神界において、神族の諸々から多くの賞
賛を受け、その名を馳せた科学者だったのだ。・・・神王に裏切ら
れるまではな・・・」
 淡々と語るデスガッドの顔が、激しい憎悪に歪んだ。その様子を、
スノウホワイトは黙ったまま聞いている。
 「10年前の事だ。私は、自分の発案した科学技術の不備を指摘
され、科学者としての地位を剥奪された・・・何処にも落ち度は無
かった筈なのに、いくら神王に進言しても取り合ってはもらえなか
った・・・」
 目を閉じて過去の辛酸を物語るデスガッド。
 「私の過ちであるなら、いた仕方ないと諦めていた・・・だが真
相はそうではなかったっ。奴が・・・神王めが私に嫉妬して仕組ん
だ事だったのだっ!!」
 驚愕の真相に、唖然とするスノウホワイト。
 「ま、まさか・・・神の王ともあろう方が・・・嫉妬であなたを
陥れたなんて・・・信じられない・・・」
 「フフ・・・貴様は元人間だったから信じられんだろうな。崇め
奉っていた神が卑劣な策略を労したなどとは・・・だが、これは全
て真実だ。信じる信じないは貴様の勝手だがな。」
 そう言いながら、憎しみを込めた目でスノウホワイトを見据えた。
 「全てを失った時・・・私は誓った。愚劣な神王に思い知らせて
やろうと。人間界に闇の組織を設立し、神界に反撃してやるとなっ!
!」
 目をクワッと見開き、全てのを語るデスガッドに、スノウホワイ
トは苦悶の目を向けた。
 「あ、あなたが神王に受けた屈辱など知りませんが・・・でも、
あなたが間違った事をしているのは事実ですっ!!あなたの下らな
い復讐のために・・・一体何人の人が犠牲になったと思っているの
ですかっ!?」
 「下らんだと?私の野望が下らんだとっ!?」
 声を荒げたデスガッドは、磔られて動けないスノウホワイトの乳
房を鷲掴みにした。
 「あうっ!?うああ・・・」
 「貴様如きに何がわかる?信頼していた神王に裏切られた私の気
持ちがわかるものかっ!!奴に復讐するため、人間界に身を置いて
弟子達を育て上げ、そしてバーゼクスを足掛かりにして闇の組織を
作り上げた。もうすぐ我が野望は達成されるっ!!」
 「うあっ、ああっ!!」
 怒りのこもった手が、ギリギリと乳房を捩じ上げた。苦痛に苛ま
れながら、スノウホワイトはデスガッドに反論する。
 「あうう・・・や、野望達成だなんて・・・そ、そんな事できる
わけありませんわ・・・はうっ・・・そ、それにあなたは私達魔戦
姫にまで手を出した・・・こ、この事が闇の魔王様のお耳に入れば・
・・あなたは確実に滅ぼされますわっ。神族と魔族を敵に回して・・
・ぶ、無事に済むと思ってるのですかっ!!」
 激しく問い詰めるスノウホワイトを見たデスガッドは、余裕の笑
いを浮べスクリーンを指差した。
 「ククク・・・貴様に心配されなくとも、すでに手は打っている。
これを見よっ!!」
 指差したスクリーンに、バーゼクス城の地下部分が映し出された。
 天鳳姫が囚われている地下室の更に下、その場所には巨大な宝石
が鎮座していた。その形を見てハッとするスノウホワイト。
 「あの宝石は・・・私の魔力を奪った宝石と同じ物ですねっ!?」
 それは正に、スノウホワイトの魔力と魔鏡の力を封じたデスガッ
ドの宝石と同様の物だった。ただ、大きさが半端ではない。直径だ
けで10数メートルはあろう代物である。
 デスガッドは懐から宝石を取り出して語った。
 「左様、私が持つこの宝石と同じ物だ。魔族を滅する神界のアイ
テム・・・賢者の石ぞっ!!」
 叫ぶデスガッドに、スノウホワイトは驚愕の表情を浮べた。
 賢者の石・・・神族の重要アイテムであり、神力の源となってい
る物質だと、スノウホワイトは魔界アカデミーで聞いた事があった。
 魔族を滅する力を持つ恐るべき代物の存在に、ただ恐怖するしか
なかった。
 「あ、あんなに大きな賢者の石だなんて・・・あれでは魔王様の
御力をもってしても太刀打ちできませんわ・・・」
 震えるスノウホワイトの言葉は過言ではなかった。それを裏付け
るが如く、デスガッドは説明する。
 「その通りだ。私の作り上げし賢者の石には、魔力を吸収し、神
力に変換する能力がある。あの賢者の石に魔力を放てば、全て神力
となって魔族を滅する・・・如何に闇の魔王と言えど、自身の力を
跳ね返されれば一溜まりもあるまい。」
 デスガッドの言葉に偽りは無い。
 彼は・・・魔族の力を吸収し、パワーアップした賢者の石と、弟
子の魔人達を使って神王に対抗しようと企んでいるのだった。
 だが、恐るべき事実はそれだけに止まらなかった。デスガッドの
思惑がスノウホワイトを驚愕させる。
 「まもなく・・・貴様たち魔戦姫を助けようと、魔族達が大挙し
て押しかけてくるであろう。ここに罠がある事など知らずにな、ク
クク・・・」
 「な、なんですってっ!?では・・・リーリア様や仲間の力を奪
って賢者の石をパワーアップさせるつもりですかっ!?そんな・・・
」
 ワナワナと唇を震わせるスノウホワイト。
 もし、バーゼクスにリーリアや魔族達が攻めて来ても、逆に力を
奪われて倒されるであろう。
 闇の魔王すら手出しできない賢者の石を前にしては、たとえリー
リアでも術は無い。
 恐るべきデスガッドの野望に恐れるスノウホワイトの心情を察し
たのか、デスガッドは不敵に笑った。
 「のこのこ現れた魔戦姫も魔族どもも全員、賢者の石の餌食とな
る・・・こんな風にな。」
 デスガッドの手に、動けなくなったドワーフ人形が握られている。
そのドワーフの腕を掴んで捻り始めた。
 「アウウ・・・ヒメサマ、タスケテ・・・イタイヨォ・・・」
 泣きじゃくるドワーフを見て、スノウホワイトは絶叫した。
 「く、クラウスッ!?やめてーっ!!その子をイジメないでぇー
っ!!」
 だが、デスガッドは無情にもドワーフの腕を強引に引き千切った。
 「キャアアアーッ!!ヒメサマーッ!!」
 バラバラにされたドワーフの体が床に投げ出され、泣き叫ぶスノ
ウホワイトに、嘲るデスガッドの笑いが浴びせられる。
 「わははーっ、嘆くがいい、悲しむがいいっ。貴様は何もできず
に囮として無力な姿を晒すのだっ。うわははーっ!!」
 「そ、そんな・・・」
 虜囚の辱めに晒される事も苦痛だが、それ以上に、自分自身が仲
間を陥れる道具にされている事が辛いのだ・・・
 「ゆ、許しませんわ・・・あなたは私が必ず地獄に送ってあげま
すわっ!!覚悟なさいデスガッドッ!!」
 叫ぶスノウホワイトだったが、自由を奪われた彼女にとって、余
りにも非力な抵抗であった。
 「フッ、私を地獄に送ってくれるのか?それは楽しみだ。せいぜ
い足掻くがいい、クックック。」
 マントを翻したデスガッドは、嘲笑を残して部屋から去って行っ
た。
 後には・・・苦悩と恥辱に苦しむスノウホワイトが残される。
 「ううう・・・ヨハン、ルドルフ、ミハイル・・・クラウス、フ
ランツ、ジークフリート、ロルフ・・・みんな・・・」
 バラバラにされ、床に転がっているドワーフ達の名を呼ぶが、ド
ワーフ達の損傷は激しく、呼びかけに微かに反応するだけだった。
 「ヒメサマ・・・ヒメサマ・・・」
 ミスティーアが過去を思い出していた様に、スノウホワイトの脳
裏にも悲しい過去が蘇っていた。
 ・・・あの時と一緒・・・卑劣な権力者に欺かれ、陵辱された挙
句、愛する孤児達を奪われたあの時と・・・
 だが、苦悩するスノウホワイトにも、一筋の光明があった。それ
は、囚われる前に魔界に送ったペドロが、自分達の危機を知らせて
くれる事だった。
 彼が魔界の仲間に、そして、スノウホワイトが最も愛しているハ
ルメイルに、この事を告げてくれたら・・・
 無論、それが危険な事だとはわかっている。でも、彼女は信じて
いた。賢明なハルメイルやリーリアが、デスガッドの策略に気付い
て、手を打ってくれる事を・・・
 「リーリア様・・・ハルメイル様・・・デスガッドの罠に気付い
て・・・みんなを助けて・・・お願い、ハル坊・・・」
 その祈りだけが、スノウホワイトと、そしてミスティーア達の救
いの手立てだった・・・
 
 スノウホワイトが懸命に祈っている頃、魔族の警備隊達が、魔界
の森の中で行き倒れている1人の男を発見していた。
 「おい、あれを見ろ。誰か倒れてるぞ。」
 仲間の声に、相棒の警備隊員が森の中を見た。そこに血塗れにな
った男が倒れているのだ。
 駆け付けた警備隊員が男を助け起こして驚く。その男は魔界の住
人ではなかった。
 「こいつ人間だぞ・・・なんで魔界に人間が?」
 不信な顔をする隊員達だったが、胸に大怪我を負っている男を介
護する事が優先された。
 「しっかりしろ、今助けるからな。」
 魔族の警備隊員が男を抱き起こすと、男が呻き声を上げて目覚め
る。
 「う、ううん・・・し、しら・・・ゆき・・・さま・・・」
 「なんだって?何が言いたいんだ?」
 「しらゆきひめさま・・・しらゆきひめさま・・・」
 男はそれだけ言って気を失った。
 「白雪姫?もしかして・・・魔戦姫のスノウホワイト様の事か?」
 「うん、多分・・・そうだと思う。」
 男を運びながら、あれこれ思案する警備隊員達。とりあえず魔界
の診療所へと男を運ぶ事になった。
 「白雪姫様・・・どうか・・・ご無事で・・・」
 うわ言を呟く男・・・ペドロは、かなり危険な状態だった。
 事態は切迫している。彼が・・・事の次第をリーリアやハルメイ
ル達に知らせる事が出きるだろうか?
 ペドロこそが、スノウホワイトとミスティーア達を助ける唯一の
光明なのだ・・・




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