魔戦姫伝説(ミスティーア・炎の魔戦姫)第2話.伏魔殿の陰謀12


   罠に嵌ったミスティーア!!
ムーンライズ

 ミスティーアが地下室から脱出した頃、スノウホワイトの救出に
向かっていたエルとアルは、デスガッドの部屋の近くにまで来てい
た。
 廊下の物陰から様子を伺っていた2人は、部屋から聞こえてきた
悲鳴を耳にして顔色を失った。
 「あれは、スノウホワイト様のお声ですわっ。」
 「スノウホワイト様が捕まったですのっ。」
 もはや潜入がどうのと言ってはいられない。一刻も早くスノウホ
ワイトを助けねば・・・
 2人がそう思った時である。
 「ウホッ、ウホッ。お前ら何してんだ〜?」
 突然、後ろから野太い声が響き、2人は驚いて後ろを振りかえる。
そこには・・・
 「!?・・・ご、ゴリラさんですわ。」
 2人の後ろには、いつのまに現れたのか、ゴリラのような体躯の
男が出現していた。服装からしてデスガッドの弟子である事がわか
る。
 唖然と見ているエルの言う通り、男は体躯のみならず、顔付きま
でゴリラそのものだった。
 「ウホホ、誰がゴリラだって?」
 「あんたの事ですわっ。ゴリポンッ。」
 「お星様にされたくなかったら、さっさと失せるですのっ!!」
 叫んだ2人は、セーラー服を脱いでハンマーと鉄球に変化させた。
 カワイイ下着姿のエルとアルを見て、喜びの声を上げるゴリラ顔
の弟子。
 「ウホ〜、お前らカワユイなあ〜。オレの好みだ〜。」
 その声に、2人は身震いした。
 「こ、こいつロリコンですわ・・・」
 「変態ゴリラですの・・・」
 目をハート型にして喜ぶ弟子に、ピコピコハンマーの一撃をお見
舞いする。
 「このーっ!!」
 ドカッ!!
 ハンマーが弟子の胸板を直撃する。だが、強力な一撃であるにも
かかわらず彼は微動だにしなかった。
 「そんな・・・効かないですのっ!?」
 愕然とするアルに、イヤラシイ視線が向けられた。
 「やるじゃないの〜。でもオレには通用しないンだな〜。」
 指をチッチと振りながら余裕で笑っている。エルとアルは思わず
後ろに下がった。
 「このゴリラ男、只者じゃないですわっ。」
 「あんたは魔人ですの、ね?」
 2人の言葉に呼応するかのように、弟子は目をカッと見開く。
 「そーとも、オレは氷の魔人、雪男なのだ〜っ!!」
 叫んだ弟子の身体が隆起し、毛むくじゃらの魔人に変貌した。豪
腕で胸を叩きながら吠える雪男。
 「ウホ、ウホッ、ウッホ〜ッ!!」
 雪男の咆哮が廊下全体に響き渡る。その灰褐色の剛毛から凍てつ
く冷気が噴出した。
 「あうう、寒いですわ・・・」
 吹雪の如き凄まじい冷気がエルとアルを襲う。寒さを振り絞り、
エルが雪男に突進した。
 「ペチャンコにしてあげますわーっ!!」
 巨大化した鉄球が雪男目掛けて転がって行く。しかし雪男は、い
とも簡単に鉄球を受け止めた。
 エルとアルのパワーを遥かに上回る怪力だった。
 「ウホホ〜ッ、お返しだ〜っ。」
 嬉々とした声で鉄球を転がす雪男。
 「元に戻れ、ですわっ。」
 鉄球が迫る瞬間、エルは鉄球をセーラー服に戻した。鉄球を消さ
れた雪男が、勢い余って床に大転倒した。
 「うっほお〜っ!?」
 ドシャ〜と床を滑っていくマヌケな雪男を見て、呆れた顔をする
エルとアル。
 「あいつ、アホですわ。」
 「おバカゴリラですの。」
 床でピクピクしていた雪男が、2人の声を聞いて飛び起きた。
 「よくも笑ったな〜っ!?」
 頭から湯気を立てる雪男に、エルとアルはお尻ペンペンをする。
 「「悔しかったらここまでおいで〜、ですわ。ですの。」」
 「ウホ〜ッ。まて〜っ!!」
 雪男は、ドタバタと足音を響かせてエルとアルを追い駆ける。
 その騒々しい足音に、部屋の中でスノウホワイトを陵辱していた
デスガッドが怪訝な顔をして呟いた。
 「だれだ、騒いでるのは?」
 尋ねられた弟子が、ドアの外を伺いながら返答する。
 「はい、雪男がスパイどもと遭遇したようです。奴等を追い駆け
てますが、どうします?」
 「フン、好きにさせておけ。それより地下室の様子はどうだ?」
 「地下室に潜入していたスパイどものうち、炎を操る者が地下室
から脱出し、こちらに向かったとの事です。」
 「雪男が追い駆けている奴か?」
 「いえ、今のは怪力の双子姉妹です。炎使いはまだ来ておりませ
ん。」
 「そうか、わかった。」
 弟子と言葉を交わしていたデスガッドが、衣服を全て奪われ、床
に寝かされているスノウホワイトに目を向けた。
 捕らわれの身である彼女の白い乳房の上には、デスガッドの持っ
ていた巨大な宝石が乗せられており、その宝石からもたらされる力
で身体を動けない様にされていた。
 「はうっ・・・うう・・・天鳳姫さん・・・ミスティーア姫・・・
エルちゃん・・・アルちゃん・・・」
 仲間の名を呼ぶスノウホワイトに、デスガッドの冷たい視線が浴
びせられた。
 イカの怪獣クラーケンになっているデスガッドは、イカの触手で
スノウホワイトの身体を弄りながら、薄気味悪く笑っている。
 「フフフ、仲間の事が気になるか?奴ら、お前を助けるために我
が弟子達と戦っているようだぞ。」
 「あうう・・・み、みんなを甘く見ないで・・・たとえ私が倒れ
ようと、必ずみんながあなたの野望を砕きますっ・・・覚悟なさい
っ・・・」
 デスガッドを睨むスノウホワイトだが、自由を奪われ、秘部とア
ナルに触手を捻じ込まれている今の彼女には、抵抗の術はなかった。
 「フッ、やさしい顔に似合わず気の強い奴だな。だが、その強気
がいつまで持つかな?仲間の無残な姿を見れば文句も言えなくなる
だろうて。」
 デスガッドの言葉に、スノウホワイトは悲痛な表情を浮べる。
 「む、無残な姿ですって・・・」
 「ああ、そうだ。お前の言う通り、奴等は強い。我が弟子達も苦
戦するだろうが・・・だが、貴様等には決定的な弱点がある。仲間
を思う心が仇となるのだ。貴様には奴等をおびき寄せるエサになっ
てもらうぞ。」
 「おびき寄せるですって!?何を考えているのです・・・」
 「フフ。それは追って知るべしだ。」
 スノウホワイトに背を向けたデスガッドが、隣に控えていたゲル
グに囁いた。
 「ゲルグ君、拘束用の道具を持ってきてくれ。」
 「ああ・・・わかった。すぐに用意しよう。」
 返答したゲルグは、手下を引き連れて部屋を出る。しばらくして
手下に拷問用の十字架を運ばせたゲルグが戻って来た。
 「ドクター、こんなもんでいいか?」
 「ああ、いいとも。そいつをそこに据えてくれ。」
 デスガッドがそう言うと、ゲルグは手下に命令して部屋の中央に
十字架をセットした。
 スノウホワイトは十字架を見た途端、凶悪なデスガッドが何を目
論んでいるか察した。
 「私を囮にするつもりですねっ、なんて卑怯な・・・はうっ!?」
 スノウホワイトは声を詰まらせた。身体に巻きついた触手が彼女
を締め上げたのだ。
 「お喋りはそこまでだ。」
 デスガッドはそう言うと、スノウホワイトの身体を触手で持ち上
げ、十字架に押さえつけた。そして弟子がスノウホワイトの手足を
十字架の金具で拘束した。
 「うう・・・は、放して・・・」
 全裸で十字架に磔られたスノウホワイトに、デスガッドは口元を
ニヤリと歪めて近寄った。
 「ククク・・・どうだ、自由を奪われた気分は?貴様は手も足も
出ないまま、仲間が無残に果てる姿を見ることになる。」
 デスガッドが指をパチンと鳴らすと、部屋に2人の魔人が入って
来た。
 ドラゴンのような面構えの魔人達は、腕が電気ムチになっている
電撃魔人だった。
 2人の魔人を傍らに控えさせ、デスガッドは部屋に不気味な魔方
陣を描いた。地下室であった魔法陣と酷似している。
 「この魔法陣は魔族の能力を奪う効果がある。お前を助けにこの
部屋に入って来た仲間は、魔力を奪われて我が弟子の餌食となるの
だ、こんな風になっ。」
 デスガッドがそう言うや否や、電撃魔人達がスノウホワイトの裸
体を電気ムチで打った。
 「ひっ!?いっ、いやあーっ!!」
 凄まじいムチと電撃がスノウホワイトの白い肌を襲い、絹を裂く
ような悲鳴が部屋に響いた。
 激痛に耐えかねたスノウホワイトの首がガクリと落ちる。
 「気を失うには早いぞっ。」
 デスガッドは平手打ちでスノウホワイトの頬を殴って強制的に目
を覚まさせた。
 「ううう・・・」
 苦悶の声を上げるスノウホワイト。だが、彼女には今だ屈服の意
志はなかった。
 「あ・・・あなたの思い通りにな、なりませんわっ!!そんな単
純な罠にミスティーア姫が引っ掛かるとでも思ってるのですかっ!!
」
 苦痛に堪え、激しい口調で叫ぶスノウホワイト。だがデスガッド
は余裕の表情だ。
 「確かに単純な罠だが、情に流された奴には十分効果がある。こ
の部屋に入った貴様の仲間は、魔力を奪われ電撃によって果てるの
だ。貴様の目の前でな、ククク・・・」
 嘲笑うデスガッドは、長い布をスノウホワイトの口に押しつける
と、十字架と一緒に縛り上げた。
 「むぐっ・・・うう・・・」
 スノウホワイトは喋る事も、首を振る事もできなくなった。
 その状態ではミスティーアに危機を知らせる事ができない。
 抵抗の術がないスノウホワイトの胸に、デスガッドは鋭い返りの
付いた鉄の針を突き付ける。
 「苦しいか?貴様の苦しむ顔はミスティーアとやらの判断力を鈍
らせる事になる。」
 そう言うなり、鉄の針を乳房の谷間に突き刺した。
 「うぐうううっ!!ううっ、ぐうーっ!!」
 凄まじい激痛が走り、スノウホワイトは目を見開いて苦しむ。鋭
い先端が心臓の手前で止められた。
 「うう・・・うく・・・」
 顔面蒼白のスノウホワイトは、白い肌をヒクヒクと痙攣させて喘
いだ。
 「フハハ、いい顔だ。それだけ苦しんだ顔なら存分に効果をあげ
る事ができるぞ、フフフ・・・」
 胸から滴り落ちる鮮血を手で受けたデスガッドは、魔族の命の源
である(魔血)をグッと飲み干した。
 「魔族の魔血は私に絶大な力をもたらす・・・貴様は私の力を増
強する糧となってもらうぞ、フハハッ!!」
 高笑いしたデスガッドは、スノウホワイトに背を向けて弟子の電
撃魔人達に指示を下す。
 「では手筈通りにするのだ。奴等を捕えたら、死なない程度に嬲
ってやれ。」
 「ははっ、お任せを。」
 電撃魔人は一礼をして部屋に身を隠す。それを見届けたデスガッ
ドは、ゲルグや弟子達を引き連れて部屋を出た。
 卑劣な罠の仕掛けられた部屋には、十字架に磔られた全裸のスノ
ウホワイトが残される。
 (うう・・・ミスティーア姫・・・来てはダメ・・・)
 罠の事をミスティーアに伝えたかったが、口を封じられ、胸に鉄
の針を捻じ込まれている彼女には何もできることはなかった。
 ただ・・・ミスティーアが罠に気付いてくれる事を、そして自分
を見捨ててもいいから逃げて欲しいと願うだけだった・・・
 
 その頃、ミスティーアはデスガッドの部屋に向かって進んでいた。
城の見取り図をエルとアルに渡していたので、何度か迷ったのだが、
何とか部屋の近くまで進む事ができた。
 だが、彼女の胸には只ならぬ不安が過っていた。
 「城の者がいませんわね・・・何かおかしいですわ・・・」
 思案に暮れていたミスティーアの前に、血相を変えて逃げてくる
エルとアルが現れた。
 「ひ、姫様ーっ!!」
 走り寄ってきた2人は、ミスティーアの胸に飛びついてくる。
 「助けてくださいのーっ!!」
 怯えている2人を抱きしめたミスティーアは、2人が走ってきた
方向から、変なゴリラがドタドタと走って来るのを見た。
 「な、なんですか?あのゴリラは・・・」
 「あいつは氷の魔人ですわっ。気をつけて姫様・・・あのゴリラ
手強いですわっ!!」
 抱き合う3人の前に氷の魔人、雪男が立ちはだかる。
 「ウホホ〜、なんだお前は?さてはお前もスパイだなあ〜。」
 野太い声で喚く雪男をキッと睨むミスティーア。
 「あなたはエルとアルをイジメましたわねっ!?」
 「あんだって〜?だったらどーするんだ?」
 「こうしてあげますわっ、ファイヤーウォールッ!!」
 叫ぶなり、雪男の周囲に炎の壁を出現させたっ。
 ゴオオッ!!
 燃え盛る炎が轟音を上げて雪男を包む。
 これだけの炎を食らえば一溜まりもない・・・そう確信したミス
ティーアだったが、それは間違いだった・・・
 「ウホホ・・・ウッホーッ!!」
 怒声を上げた雪男が、豪腕で炎の壁を弾き飛ばしたのだった。
 「私の炎が効かないっ!?」
 愕然とするミスティーア。雪男の全身に生えている剛毛が炎を跳
ね返していたのだ。
 「ウホホッ、こんな炎でオレ様は倒せねーど。全員凍り漬けにし
てやるううう〜。」
 すうう〜と息を吸い込む雪男を見たエルとアルが驚愕した。
 「姫様っ、危ないですわっ!!」
 「逃げるですのっ!!」
 2人はミスティーアを抱えて雪男の前から逃げる。
 「ウッホ〜ッ、コールドブレスッ!!」
 雪男の口から真っ白な息が吐き出され、ミスティーア達のいた場
所が大量の氷に被われた。
 「きゃああっ!!」
 悲鳴を上げて転げる3人をギロリと睨む雪男。
 「ウホ〜、逃げるんじゃねーっ!!」
 「燃えなさいっ、氷ゴリラめっ!!」
 コールドブレスの攻撃を炎で跳ね返す。
 バシュウッ。
 凄まじい湯気が辺りを包み、ミスティーアと雪男の攻撃が拮抗し
た。
 コールドブレスを放っている雪男の後ろへ、ピコピコハンマーを
持ったアルが近寄って行く。
 「ひざカックンですのっ!!」
 「ウホッ!?」
 ハンマーで膝の後ろを殴られた雪男が、仰け反りながら後ろに転
倒した。
 「今ですの姫様っ!!」
 アルの言葉に、ミスティーアが素早く動いた。
 「ファイヤーッ!!」
 炎の攻撃が雪男の尻に炸裂した。剛毛の薄い尻を焼かれた雪男は、
悲鳴を上げて飛び上がった。
 「うンぎゃ〜っ、熱い〜っ!!ウホホ〜っ!!」
 尻を押さえて飛び跳ねる雪男の頭上から、(100t)と書かれ
た鉄球が落ちてくる。
 「ふんぎゅっ!?」
 鉄球の下敷きになった雪男は目を回しながら気絶した。頭の上に
はピヨピヨと小鳥が飛びまわっている。
 「あんたみたいなロリコンゴリラと遊んでいる暇はありませんで
すわっ。」
 鉄球をセーラー服に戻したエルがミスティーアに向き直った。
 「姫様、急がねばなりませんわっ。」
 「スノウホワイト様がデスガッドに捕まったですのっ。」
 2人の言葉に顔色を失うミスティーア。
 「わかりましたわ・・・直ぐに行きましょうっ!!」
 3人は気絶している雪男を無視して走り出した。
 だが彼女等は全く知らない。スノウホワイトが囚われている部屋
には卑劣な罠が仕掛けられている事を・・・
 「こっちですわっ。」
 エルに促され、ミスティーアはデスガッドの部屋へと駆け寄って
行く。
 「ここにスノウホワイトさんが・・・」
 部屋の前には警備の者などいない。警戒すべき事なのだが、スノ
ウホワイトの身を案じる3人は、ためらう事も無くドアのノブに手
をかけた。
 カギのかかっていないドアを開き中を伺うと・・・そこには全裸
で十字架に磔られたスノウホワイトの姿があったっ。
 「スノウホワイトさんっ!?なんて酷い事を・・・」
 余りの凄惨な状況に声を失うミスティーア。鉄の針が刺さったス
ノウホワイトの胸から、大量の鮮血が流れている。早く助けねば命
が危ない。
 「今行きますわよっ。」
 ミスティーアが部屋に来た事を知ったスノウホワイトが、目を潤
ませて何か言おうとしている。
 「うっ、ふうっ・・・うっうう・・・」
 だが、口を封じられ首を動かす事ができない彼女に、部屋の罠を
知らせる手立てはなかった。
 駆け寄るミスティーアは、部屋の床に隠された魔法陣の手前まで
来た・・・
 「うぐっ!!うっ、うーっ!!うーっ!!」
 ミスティーアが近寄るたび、スノウホワイトは苦悶の呻き声をあ
げる。
 ニゲテ・・・ハヤク、ニゲテ・・・
 悲痛な目で訴えるスノウホワイトだったが、ミスティーア達には
届かなかった。
 はやるエルとアルが、ミスティーアを追い抜いてスノウホワイト
の元に駆け寄った。
 2人の立っている足元には、絨毯で隠された魔法陣が・・・
 エルは、スノウホワイトの口を縛っている布を外した。
 「スノウホワイト様、今助けますわっ。」
 悲痛な表情のスノウホワイトが何か言おうとしている。
 「はあはあ・・・あう・・・にげへ・・・」
 「どうしたんですの?」
 胸の激痛を振り切り、スノウホワイトは叫んだ。
 「早く逃げてーっ!!これは罠よーっ!!」
 その声に全てを察したミスティーア達。だが・・・遅かった。
 ヴウウーンッ。
 絨毯の下から怪しい光が発せられ、エルとアルを包んだ。
 「きゃあっ!?なにが・・・」
 その光を浴びたエルとアルの身体から力が抜ける。バタバタと倒
れた2人に、悲鳴を上げるミスティーア。
 「エルッ、アルッ!!」
 その叫びに反応するかのように、天井裏に潜んでいた電撃魔人達
が、奇声を上げて飛び出して来た。
 「イ〜ッハアッ!!」
 電気ムチが唸りを上げてミスティーアに襲いかかるっ。
 「うるぁあ〜っ!!クタバレ〜ッ!!」
 スパークする電気ムチを辛うじて交わしたミスティーアは、倒れ
ているエルとアルに駆け寄ろうとした。
 それを見たスノウホワイトが絶叫する。
 「ミスティーア姫っ、来てはダメーッ!!」
 「あっ・・・」
 その声に思わず立ち竦む。そのまま行けば自分も罠に嵌る・・・
だが、躊躇するミスティーアの背中に電撃ムチが炸裂した。
 「きゃああーっ!!」
 転倒したその場所は・・・魔法陣のど真ん中だった。
 再び光が放たれ、ミスティーアは力を奪われた。
 「うあ・・・ああ・・・」
 膝をついたミスティーアを、嘲るような目付きで見ている電撃魔
人。
 「フッ、ドクターの言われた通り、バカな奴等だ。仲間を助ける
ために罠に嵌るとはな。」
 その声に、怒りを露にするミスティーア。
 「なんですってっ・・・バカはあなた達よっ!!」
 電撃魔人に炎を放とうとする・・・が、炎は僅かにくすぶっただ
けで、あっけなく消えてしまった。
 魔法陣によって、ファイヤースターターの能力を奪われているの
だ。
 「ケケケッ。なーんだ、その屁みてーな炎はよ〜。」
 「くっ・・・」
 ゲラゲラわらう電撃魔人に再度炎を放とうとするが、結果は同じ
だった。
 「そ、そんな・・・」
 愕然とするミスティーアに、2人の電撃魔人が立ち塞がった。
 「へへッ、兄貴〜。こいつをどーやって始末しようか?」
 弟分の電撃魔人に尋ねられ、片割れの兄貴分が笑いながら答えた。
 「ドクターは死なない程度に嬲ってやれと仰られたんだ。可愛が
ってやろうぜ、死なない程度によ。」
 「そりゃあいいっ。お楽しみだあ〜っ!!」
 嬉々とした声で喚いた電撃魔人兄弟は、ミスティーアに電気ムチ
を食らわせたっ。
 「はうっ、ああっ、うあ・・・あひいいっ!!」
 激しい電気ムチの連打に晒されたミスティーアの服が引き裂かれ
る。ベストが、スパッツが・・・そして下着が宙に舞う。
 「ケ〜ッケケッ!!、丸裸にしてやるぜ〜っ!!」
 無情な電気ムチが、露となった白い肌に容赦なく打ち下ろされる。
 「はあうっ・・・エル、アル・・・うあっ、ひいいっ!!」
 鞭打たれながら、ミスティーアはエルとアルを見た。魔法陣に力
を奪われている2人は、体を痙攣させて気を失っていた。
 そして・・・痛めつけられるミスティーアを、十字架に磔られて
動けないスノウホワイトが泣きながら見ている。
 「ミスティーア姫・・・ごめんなさい・・・ううっ・・・」
 ・・・私のせいで・・・私が至らなかったせいで・・・
 今のスノウホワイトには、自分を責めるしか、罠に嵌められたミ
スティーアとエル、アルに謝罪する事ができないのだった。
 激しい責苦を受けるミスティーアの悲鳴と、スノウホワイトの悲
しい泣き声が部屋に響き渡った・・・


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