『魔戦姫伝説』


 魔戦姫伝説〜鬘物「ふぶき」より〜第1幕.2
恋思川 幹

「ふぶき、あなたはここに隠れていなさい。けっして出てきてはなりませんよ」
 ふぶきの姉、小春はそういってふぶきを奥座敷の物置の中に隠そうとする。
「いやぁ……姉上さま……お側にいてください……ふぶきは怖いです……」
 まだ、幼いふぶきは小春の打ち掛けの裾をしっかと掴んで放さない。
「そのような泣き言を言ってはなりません。ふぶき、あなたは武家の娘なのですよ。さあ、
はやく」
 小春にいわれて、しぶしぶ隠れるふぶき。
「姉上さま……」
「しっ! 声を立ててもなりません。父上や兄上達が必ずやお前を助けに来てくれます。
それまでここでじっと耐えるのです。わかりましたね」
「はい……」
 小春はふぶきの隠れ場所の上に板を立てかけ、外からはふぶきが見えないように細工を
する。
「御仏よ……せめて……幼いふぶきだけは……お守り下さいませ」
 小春は仏像にむかって手をあわせ、祈りを捧げていると、背後から下品な声が聞こえて
きた。
「いたぞぉっ! 女だぁっ!」
「よぉし、俺がいただいたっ!」
「馬鹿野郎っ! あの女は俺が最初に見つけたんだぞっ!」
「はやいもん勝ちだぁっ!」
 足軽、といっても、おそらくは員数合わせの為に雇われた野党同然の流れ者なのだろう。
「下がれっ! 下郎どもっ! 北大路 頼貞が娘、小春と知っての狼藉かっ!?」
 小春が毅然とした物言いで、雑兵達を一括する。
 もっとも、これで引き下がるような連中ではないことは、小春にもわかっていた。
「へっへっへ、まさかお姫様たあなぁ。だが、俺達にゃ北大路に義理はないからなぁ」
「他の女達は皆、他の連中にとられちまったが、残り物に福があるたぁ、この事よ」
 気が早い者は、すでに袴を下ろして薄汚れた肉棒を丸出しにしている。
「下劣な……」
「おい、おめえら、剥いちまうぞっ!」
「おうっ!」
 小春が吐き捨てるように言ったのを合図にしたかのように、雑兵達は小春に襲いかかっ
た。
 雑兵が二人がかりで小春を押さえつけたので、小春は身動き一つとれない。
「いやっ! はなしなさいっ!」
「げへへへ、いいべべを着てんじゃねえか! 綺麗に脱がせろよ! 後で高く売れるんだ
からな」
「こらっ、暴れんじゃねえっ! 着物が破れちまうぞっ!」
「おやめなさいっ! はなしてぇっ!」
 雑兵達は小春を押さえつけながら、器用に打ち掛けを脱がせていく。それができるのは、
女を抱くためという目的もあるが、このように略奪した品物は彼らにとって重要な収入源
であったからだ。
「うおおっ、香が焚き染めてあっていい匂いだぜっ!」
「次は小袖だっ!」
「野党のような振る舞い、それでも武士の端くれかっ!」
 小春はなおも反抗を続ける。
「へんっ! どうせ俺たちゃ、流れ者の雇われ者さっ! 耳障りなんだよっ! 少し黙っ
てろいっ!」
 雑兵の一人が肉棒を小春の口につっこむ。
「うむぅっ……うぐ……ぐふ……ぐほっ……」
 生臭い味が小春の口中に広がり、むせる。
「それそれ、しっかり味わってくれよっ!」
 小春に咥えさせている雑兵は腰を振って、小春の口を犯す。
「…むぐっ……うぐっ……むぅうっ……」
「もっと舌を使えっ! 俺のち○こに舌をからませるようにするんだ。噛んだりするんじ
ゃねえぞ」
 雑兵は脇差を抜いて、小春につきつける。
(ここで小なりとも、この無礼者に一矢報いて死ねたなら、どんなにか楽な事だろう……。
けれど……今、ここで私が死んだら、こやつらはきっとふぶきを見つけてしまう……まさ
か、ふぶきのような幼子を陵辱するなどはなかろうが、だからといって無事であるはずも
なし……それだけは……!)
 小春は自分がいかな辱めを受けようとも、ふぶきだけは守ろうと覚悟を決める。



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