魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜


 白い少女 第48話 
Simon


――ゴヂュグチャグチャ!ヌチャッグッチグチャグリュドヂュブヂッミヂッ!グ
チャビヂュグチョ――

執拗に――千切れかけた手足が、黒鞭に食い荒らされるたびにブラブラと揺れる

――ゴ…ボッ…

内臓をズダズダにされ、ユウナの鼻と口から、濃厚な血が溢れ出す


「――キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」


最っ高の気分だった

いとおしむように、関節を一つ一つ、丁寧に砕いていく
絡み付けた黒鞭で、びっしりと心臓を包み込み――

――ドクッ――――――ドクドクドクッ――――――ドクッ

脈動を気まぐれに弄ぶ――意図的に傷一つ付けなかったユウナの相貌に、どっと
汗が噴き出す

神経を一本ずつ引き千切る――千切っては繋ぎ――また、千切る
そのたびにユウナの身体がビクビクと痙攣する

――オモシロイオモシロイオモシロイオモシロイオモシロイ!!!!

「ネェ! アンタモオモシロイィィィ!?」


――――!!!


――ナンデナンデナンデエェェェェ!?


引き寄せて覗き込んだ凶眼を向えたのは――

何の気負いも衒いもない――冷静で、容赦のない――冷め切った――軽蔑の眼差
し

「――アアアアァァァァァ!!!!」

――チクショウヂクショウゼッタイニグチャグチャニシテヤルッ!!!

――ドギュルルルルルァァァァァ!!!!!

「――ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

全ての黒鞭を――肉や骨に絡みついたまま――高速で回転させた!!

――ゴゴッ!ゴブヂュルル!ビヂュビヂュギュリリッ!ギュゴゴッ!!!

――チガニクガホネガユボガグチャグチャグチャグチャハハハハハ!!!









――ハハハ……ハハ?



――ルル――ギュギュ…………ル……



――ナンデトマルノ? オシマイナノ?



――ふぅ

やれやれ――といった感じの溜息が一つ



「――やっと、お目覚めですか? リンス様」

「うん――ごめんね、ユウナ――こんなにけがさせちゃって」



――――!!!!!――ナンデ? ドウシテ!?



「この前に比べたら、かすり傷みたいなものですよ」

「でも――」



――!!!――――!!



「ほら、分かりますか?――リンス様が触れいてくださるだけで、もうこんなに
――」

「ほんと?――じゃあ――こう…したら…」

――ペロッ――ペロペロッ――

「リ、リリリ、リンス様っ!?」

「――いや…なの?」

「いえ――その――あの――――う……(うれしい……です)」

「よかった じゃぁ――」

「で、ですから――はうぅ〜っ」



――ナニ? アイツラハ!

『力』は――『闇』はどこに?

――ナイ……ナイナイナイ! ナニモナイ!?

ある筈のものが、きれいさっぱり抜け落ちて――
なにより、この頼りなさはどうしたことなのか

――ナンデェ……ドウシテ……



――――なかないで



――エ?

――ナニ?――アッタカ…イ

――コレハ ナニ?

「こわかったんだよね――まっくらで――いたくて――あつくて」

ふわり――柔らかな光に、そっと抱かれた――



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