魔戦姫伝説異聞〜白兎之章〜


第2話 琥珀の風 part15
Simon



両手にたっぷりと掬い上げた蜜油を、アリーシャの胸に、腰に、背中に、ゆるゆ
ると擦り付けていく

ぬらぬらと肌を滑光らせて身悶えるその姿は、男たちの劣情を否が応にも掻き乱
す
だが今回は、手を出すことも自分を慰めることも堅く禁じられていた

その意図までは読めなくとも、命令に忠実に従うことはできる
だからこそ、彼らはファズの元で長らえることができているのだが――

「はぁん――あっ――お願い、やめてぇ――」

幾度となく貫きながら一向に飽きることのない美肉が、息を荒げながら己の火照
りを持て余しているそのさまは、男たちの忍耐に過剰なまでの負担を強いていた

――ニチュ――ニュルニュル――ヌラァ…

執拗でありながら、その動きはどこまでも優しく緩やかで――

「やっ――ハァハァ――あぁ!――どうして…こんな…」

くなくなと首を振るアリーシャの耳元に、ファズが口を寄せた

「見て御覧なさい――今日は誰も貴女を責めてくれませんね」

――クリ…クリッ…

「――はぁっ!」

そっと胸に添えられた手――その人差し指が、薄布の上から乳房を優しく擽る

もどかしいような、切ないような――裏返しの痛み
自分の意識が、ファズの指先に吸い寄せられていく

「分かりますか?――貴女はこの――」

――ツツ…ツ……

「――いやっ……あぁ!」

「――この器からは、逃げられないんですよ」

――フニュゥ…

「――んはぁっ!――あっ…」





「――さて」

――ツツ…ゥ


「――え?」

アリーシャを翻弄し続けていたファズの指先が、粘糸を引きながら離れていく
薄く霞のかかっていた瞳が、その指の軌跡を追う

「あ……どうして…」

「フフッ――物足りないんですか?」

――ツイ

アリーシャの口元に、その指を付きつける
蜜に濡れた指――弄るようにユラユラと――

――さあ


――――――ピチャ…

「美味しいですか?」

――ハァハァハァ

うっとりと、夢中になって指をしゃぶる
一本一本、丁寧に――指の股に舌を這わせ

――ピチャ――ピチャ…ァ……ピ…チャ…



手についていた蜜を全て舐め取らせると、ファズは指を引いた
名残惜しそうに唇を舐めるアリーシャ――その瞳は熱に浮かされたように潤み、
震える吐息が甘く香る――

「震えていますね――寒いんですか?」

からかうような物言いに、フルフルと首を振る
自分に何が起こっているのか、まだ分かっていないのだ

――ファズならば何とかできるはず
ただその想いだけで、縋ろうとしているのだろう

ファズはアリーシャの手首を取った
繊手と呼ぶに相応しい美しい手――今は蜜油に塗れ――

「――教えてあげましょうか――貴女が欲しがっているものを」

その手を、優しく導いて――


――――ピトッ

「――はうっ!?」


彼女の掌を――彼女自身の乳房へと



「――分かったでしょう?」

身体を戦慄かせ、その瞳に涙を浮かべ――それでも、胸に当てた掌は……

――――ヒクッ

「――アッ!」


――ヒクッ……フニュ

「――うぁっ――だ…めっ!」

――ドキドキドキドキ――





――始まりましたね

アリーシャを残して、ユーデリカの所に戻ってきたファズが呟いた

「――お前の知らない姫……いや――まだ誰も見たことのないアリーシャが見ら
れるぞ」

――これもお前のおかげだよ

反論を封じられたユーデリカが、それでも喉を震わせたとき――



――フニュッ!

――アハァァッ!



アリーシャの『両手』が、その乳房を握りつぶした



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