リレー小説2『魔戦姫伝説』


 第1話 サーヤの初陣.7
山本昭乃

 
さらに三日が過ぎた。
 ケダモノたちはようやく自分や周りの状況の変化に気づいたが、もう手遅れだった。

 ちゅぷっ、ちゅぷっ、ちゅぷ..
「んっ、んんっく、んんんっ....」
 リンが男のものをくわえ、舌をからませてしごく。
 強要されているわけではない。むしろ男が犯し疲れて壁際に座り込んでいるところに
自ら腰を下ろし、しかも嬉々として奉仕をしていた。
「も、もういい.. もうやめてくれ..」
 奉仕されている男が弱々しい悲鳴をあげる。リンが男の股間から顔を上げる。
 にいと笑って、
「どうしてぇ? こんなにおち○ち○かたいのに..」
 舌を出し、男の亀頭をちろちろと舐める。
「ひっ、ひっ、ひ..」 快楽と苦痛がない混ぜになった感覚が男を貫く。だが声を上げ
ようにも凌辱に次ぐ凌辱に体力を奪われ、むなしく喉が震えるのみ。
 ぬるり。
 リンの舌がゆっくりと伸び、男の肉棒に蛇のようにからみつく。
「ひ、ひ..」 信じられない光景に、男が声にならない悲鳴を上げる。逃げようとする
が体が言うことを聞かない。リンの視線から目をそらせない。
 あれだけいるはずの仲間たちが誰も助けに来てくれない..
「んっ、んんっ、んっくくっ、んっふふふふふ..」
 含み笑いを漏らしながら、リンが男を凌辱する。からめた舌を蛇がとぐろを巻くように
動かし、あるいは締めつけたり緩めたりを繰り返して肉棒をもてあそぶ。
「お.. お..」 男がガタガタ震え出す。目の前の少女に潜む魔性に。ようやく感じ
た死の恐怖に。そしてこんな時にも欲情している自分に。
「ひ.. ひや.. がっ」
 びくんと体が跳ね、勢いよく、そして最後の精液を吐き出す。
「いやがってたくせに、こんなに出るじゃない..」
 白濁液がたっぷりからみついた桜色の舌をおさめ、リンが静かに笑う。だが返事は返っ
て来ない。
 男の肩は落ち、目からは光が失せ、もう二度と動くことはなかった。
 精液の最後の一滴をこくんと飲み干し、さて、次は、と腰を上げかけたリンの腰を誰か
がつかむ。
「ひ.. ひへへへへへぇ..」
 リンの秘部を貫いて悦んでいたカマキリ顔のあの男だ。この男もかなり衰弱しているは
ずだが、その自覚がないのか弱々しく笑いながら、骨と皮だけになった腕でリンの腰をつ
かみ、唯一生気が残っている肉棒を突き立てる。
「んっ」
「ひ、ひへへへ、マ○コ、マ○コ、ガキのマ○コ..」
 とりつかれたように一心不乱に腰を振る。その一方でリンが引っかいた爪あとをかゆそ
うに、血の出るのもかまわずにかきむしる。
 だがリンは泣き叫ぶどころか、大笑いをこらえているといった表情で、
「ねえおじちゃん、知ってる? カマキリってね、えっちした後メスがオスを食べちゃう
んだって」
「ぎ?!」 後ろから犯している男からは、リンの表情は読めない。
「もうお前からはたっぷり精をしぼったし、そろそろ殺してあげるわ」
「こ、このガキゃ..」 リンの物言いに男が怒る。肉棒を引き抜き、こちらを向かせよ
うと彼女の髪を引っ張る。彼女と男の視線が合う。
「ひっ、ひいぃぃぃぃっ!!」
 男の目が恐怖に見開かれる。髪をつかんでいた手を放し、後ずさろうとするが足がもつ
れて、ぶざまに尻餅をつく。
 リンがゆっくりと立ち上がり、勝ち誇った顔で男を見下ろす。くくと笑って、
「やっと術が解けてきたわね。見たかったのよ、その顔」
「そ、そんな.. お前らはあの時たしかに死んで、冷たくなって、埋めて..」
「そうよ、だから悪魔に..じゃなくて悪魔さまに頼んで生き返らせてもらったの」
「?!?!?!」
「今度も『この前』も、あたしのあそこをぐちゃぐちゃにしてくれたお前は、特にたっぷ
り苦しめて殺してあげる」 絶妙の間を置いて、
「とけて、死んじゃえ」
 次の瞬間、男の腕、リンがつけた傷跡がどす黒く変色し、それが全身を覆う。
 男は全身から腐臭を上げ、ゆっくりと溶け始めた。
「ぎゃあああああっ!!」 全身を腐らされる恐怖と苦痛に男がのたうち回る。
「んっくくくっ、きゃははははは!!」 男の無惨な姿にリンの理性の堤防が決壊し、彼
女は狂ったように笑い出した。
「あっはははっはっ、ほんといい気味っ、あたしたちを殺したりなんかするからこうなる
のよっ。ひゃはははははは..」
 さらに自身の胸とスカートの中に手をやり、
「あんっ、ああんっ、なんか人間が溶けるとこ見てたら、腐るにおいかいだら、んふっ、
なんかしたくなってきちゃったぁ.. あはあぁっ..」
 凌辱されていた時とは比べ物にならないくらいに甘く、艶っぽい声でリンが自慰をはじ
める。
 その声に、泣き叫んでいた男のモノも勃起するが、すぐに亀頭からぐずぐずと崩れはじ
める。
「た.. たすけて..」 助けを求める手も、肉が腐り落ちて白骨に変わって行く。
「うぅんっ、いやよぉっ、最初からぁ、あんっ、みな殺しにするって、決めてたんんっ、
だからあぁっ..」
 乳首の辺りを指先でもてあそび、秘部をまさぐるスピードを速めながら、リンが年端も
行かぬ少女とは思えない妖艶な流し目を男に流す。だが男にもう欲情する肉体はない。
 ぼとり、ついに手足が次々に崩れ落ちる。
「ぎゃあああああああああああっ!!」
 男が、正確には男の首が断末魔と共に胴からちぎれ落ち、腐ったトマトのようにぐしゃ
りとつぶれた。そのみじめな最期にリンが感極まって昇り詰める。
「あんっっ、あはああああああああああぁんっっっ!!」
 びくん、びくんと小さな体がはね、足を伝って艶やかな蜜が、つうと滴り落ちる。
「はあっ、はあ、はあ、はあ、は....」
 殺戮と自慰の快楽。その余韻が徐々に冷めて行く。
「は........」
 リンの顔から笑みが消える。
「・・・・・・・・・」
 流した汗と愛液が、冷たくなってべっとりと貼りつく。
「・・・・・・・・・」
 凌辱した相手を逆に凌辱し、もてあそんだ上になぶり殺す。それをさも楽しんでいるか
のように振る舞う事で、さらに相手の恐怖と絶望を煽り立てる。
 そういう「演出」のつもりだったのに、さっき自分は溶け崩れて行く男を、心の底から
いい気味だと笑い、そのさまを見ながら自慰を楽しんだ。
 今でも泣きながら助けを求める男の姿を思い出すだけで、熱い蜜があふれてくる。逆に
冷たくなった汗が体温を奪い、彼女は小さく震えた。
「あたし.. こわれちゃったかも....」

「リン」 その背中に、ベスが静かに声をかけた。
「ひぃぃっ?!」 まるで大声で叱責を受けたように体をこわばらせ、目をつむる。
 悪人とはいえ面白がって人を殺した。どんなにきつく叱られるか、恐くて彼女の方へ振
り向けない。
「・・・それでも、いいのかもしれません..」
「え....?」 予想もしなかった言葉に、リンが驚いて振り向く。
「人の命を奪い、その行為に喜びを覚えるというのは、確かに許されない事です」
 ベスが静かに立ち上がり、リンと顔を合わせる。その足元には、ついさっき殺し終えた
ばかりらしい骸がひとつ転がっていた。
「ですが、それは人間の理(ことわり)、人間の法での話」
 一拍間を置いて、
「今の私たちは、人間ではありません」
「・・・・」
「人間にとって、牛や豚を食べ、鹿や熊を狩る事が、悪ではないように、私たちが、人間
を殺して、食べる事も、相手には、よりますが、そう気に病む事では、ないのかも、しれ
ません..」
 そしてもう一度、
「私達は、人間ではないのですから..」
「せんぱい..」
 リンにはそう言うのがやっとだった。ベスは終始落ちついている風に見えたが、とぎれ
とぎれの、リンより自分自身に対してかんで含めるような今の言葉から気が付いたのだ。
 彼女もまた、魔の力を得た者として戸惑いを抱いている事を。
 そして戸惑いを払うかのように、静かだがはっきりとした口調でベスは言った。
「さあ、『狩り』を続けましょう。ここには殺していい人間しかいませんし、今日はうる
さくは言いません。あなたの思うままやってみなさい」
「は、はいぃっ!!」
 直立不動で了解するリンに無言でうなずくと、ベスは次の獲物に向き直った。
「ひ!」 ベスの氷のような視線に射すくめられ、男の体が硬直し、欲情とは程遠い精神
状態にも関わらず、モノがそそり立つ。
 ふぁさぁ..
 ベスがメイド服の裾をつまみ上げて、ゆっくりと男に近づく。男には、彼女が翼を広げ
た悪魔のように見えた。
 男のモノの真上で歩みを止め、ゆっくりと腰を下ろすベス。根元までモノをくわえ込む
と、やはりゆっくりと腰を振り始める。
「..っ、..っ、..っ!!」 男が喉をひくつかせながらあえぐ。
「・・・・・・・・・・・・・」 だがベスは声ひとつあげず、冷たい視線を男に貼りつ
けたまま、黙々と腰を振り続ける。
「..っ、..っ、ぉ..」
「今から72時間と32分ほど前、私や陛下を侮辱した内のひとりがあなたでしたね」
「?!」
「私を淫乱呼ばわりしたのは、まあ許しましょう。実際この有り様ですし」
 男の上で腰を振りながら、表情ひとつ変えず淡々と語るベス。
「ですが、誰が王様の愛人ですって?」 声の冷気が増す。
「陛下を、主の御父君を、女であれば誰でもいいようなあなたがたの同類呼ばわりした事
は、万死に値します」
「ぁ.. ぁ..」 男の顔が真っ青になって行く。ベスの冷酷な死刑宣告だけにではな
い。彼のモノを締めつけている肉壷までが、氷のように冷たくなっていくのだ。
「ば.. ばけもの..」
「バケモノ?」
 ふっ、
 ベスが初めて笑った。
「それはあなたがたも同じでしょう。女と見ればだれかれ構わず入れて犯す者。それを弄
んで殺す者。違いがあるとすれば、どちらがより強く..」
 男の意志とは独立して膨張し切った肉棒が、最後の精を吐き出す。その肉棒から順に、
男の体が凍りついて行く。
「ひいぃぃぃっ!!」
「・・・・・・・・」 ベスがゆっくりと立ち上がる。
 パキンッ
 男とベスの結合部で、氷が砕ける音がした。その瞬間、男の全身と精神までもが冷たい
氷の中に閉ざされた。
「・・そして、より残酷か」 立ち上がったベスの足元に、氷柱と化した肉棒が落ちて砕
ける。
「さて、もうひとりは..」
「や、やめてくれ..」
「ころさないでくれ..」
 当の本人だけではない。その後に殺される虫けらたちまでが命乞いの声をあげる。
 ベスがなぜ、破り捨てられたはずのメイド服を着ているのか、気づく余裕など誰にもな
かった。

「せんぱい..」
 次の獲物に取り掛かり始めたベスを、リンは憧憬のこもった眼差しで見つめていた。
「きれえ..」
 メイド服の裾をつまみあげ、黙々と盗賊を凌辱する姿は、殺戮の悦びを覚えたリンには
優雅にさえ思えた。
 思わず胸とスカートの中に手が伸びる。
「あんっ、せんぱ..、 ?!」
 声が出ているのに気づいて慌ててベスに背を向ける。
(や、やだ、あたしったらせんぱいのこと..)
 慌てて今考えていた事を頭から追い出す。
 そして、すう、と呼吸を整えると、くすと笑って「あたしもやってみよおっと」
 翼を広げた悪魔は、ふたりになった。




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