淫虐の罠(第1話)1
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 オーロラ姫を失ったオラン公国では国王始め、国中が深い悲しみに包まれていた。こと
の顛末を知らせに訪れたオルフェ王子を公国はあたたかく迎えたが、この国の将来を思う
と、王子の心は沈んでいた。オーロラ姫は国王夫妻にとって、年老いて初めて授かった宝
物のような存在だったのである。
 オルフェは、国王に謁見し、自分がオラン公国の養子に入り、オーロラ姫無きあとのオ
ランの血筋を国を統べることを申し出た。
 国王夫妻はオルフェの申し出に困惑した。たしかに、このままではオランの国は絶えて
しまう。
しかし、オルフェは大国グランデアの第一王子。あまりにも立場の違いは明白だからだ。
「オルフェ殿の申し出はまことにありがたい。しかし、それではあなたの国が、父君が納
得はしないだろう。この婚姻でさえあまりに身分違いと思っていたのに・・・」
 お后が続いて・・・。
「オーロラのことは不運と思ってあきらめるしかありません。私どもの手はずが海賊に漏
れていたのが全ての原因です。なにより、あなた様はオーロラの仇を打ってくれた方では
ありませんか」
 オルフェは考えていた、けして漏らすまいと思ったオーロラ姫の死の真実。それが、オ
ルフェの心を捕らえて離さない。
「・・・実は・・・姫君は海賊に殺されたのではないのです・・・・」
 国王夫妻には話さずにはいられまい。そう決心したオルフェは夫妻に言葉を詰まらせな
がら話し始めた。
−オルフェがバラクーダの船を発見した時、オーロラ姫は確かにまだ生きていたのだ。オ
ーロラ姫を生きて奪還するために、オルフェ王子は時刻の本船から離れ、果敢にも一部の
信頼する部下とともに手漕ぎ船で海賊船に潜入をはかった。
 これが普通の海賊あいてであれば、身代金で片が付く。しかし、バラクーダのねらいは
オーロラ姫本人だった。どのような形であれオーロラ姫を返すことなど考えられなかった
のである。かって、豪商に化け、オーロラ姫への求婚までしようとしたバラクーダである。
オーロラ姫を自分の妻に迎えるためにこのような行為におよんだのである。たとえ、バラ
クーダの手に掛かって純潔を失うようなことがあっても、それ以上の手荒なまねをされる
ことはない。
それ故、小舟で忍び込んで奪回する手段を選んだのである。
 オルフェ達は、海賊船の近くまで寄ると遠目がねで船の中を探った。
 しかし、甲板の上で目撃したのは考えもしないショッキングな場面であった。
そこでは、海賊達が寄ってたかって、一人の女をもみくちゃにしていた。日に焼けた海賊
達とは対照的な白い肌。それはこともあろうにオーロラ姫だった。姫が甲板の上で海賊達
にもみくちゃに輪姦されていたのである。
 オーロラ姫は海賊の手下どもに輪姦されながら小便を漏らし、けらけらと笑ってさえい
たのだ。
そのそばにはうなだれて船室へ入っていくバラクーダの姿も・・・・。
  その姿を見てオルフェは全てを悟った。オーロラ姫は、純潔を奪われたショックに気が
狂ってしまったのだと。それ故、バラクーダはまるで気が違ったように、オーロラ姫を手
下どもの狂乱の中に投げ与えてしまったのである。
 そこまで気づいたオルフェは遠眼鏡の中でオーロラ姫を表情をのぞき込んだ。その表情
はうつろでとても正気のものとは思えなかった。
 そのとき、数百メートルの距離を隔てて、オルフェとオーロラ姫の目があった。その時
だけ、まるで舞踏会で踊っているときのような潤んだ目つきに変わると、オルフェに語り
かけてきた。
『愛しいオルフェさま・・・私はもうあなたの元へは参ることができませぬ・・・いっそ
その手で私を殺して下さい・・・それが私の最初で最後のお願いでございます・・・私を
殺して』
  その声はまるで自分の手の中に抱いているようにはっきりと、聞こえてきた。−・・・
あとのことは、はっきりとは覚えておりません。気がついたときには、本船が目の前にき
て、海賊船を木っ端みじんに破壊していたのです・・・・」
 そこまで一気に話し終えると、オルフェはひざをついて、夫妻の前に深くはいつくばっ
て頭を床に擦り付けた。
「・・・私が!私がオーロラ姫を殺したのです!私が!・・・・あの気高くて美しい姫を
私が!」
 まるでうめくようにオルフェは夫妻に訴えそしてわびた。
 国王が一歩前に出るとオルフェの前に同じように跪いて、オルフェの方に手を回した。
「お顔をおあげくださいオルフェ殿」
 優しい声であった。オルフェが顔を上げると、そこには同じように涙を流し、しかし、
優しく微笑んだ国王の顔があった。
「・・・オルフェ殿オーロラは本望であったでしょう。実際に夫婦として身を合わせるこ
とはなくとも、すでにあなた様はオーロラ生涯たった一人の夫であったのです」
「・・・そうです、さもなくば・・・そのように心をかわすことなどかなわぬことです。
長年連れ添った夫婦でさえかなわぬ時もあるというのに」
「国王殿・・・・」
 オルフェは、夫妻のあたたかい心に、少し心が軽くなった思いがした。

 かくて、オルフェ王子は、オラン公国の王子として迎えられ。ともに、オーロラ姫の菩
提をともらうこととなった。


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