ダーナ氷の女王 第二部 第1話 2

 話せるわけもない。
 マナの母親はダーナ姫。高貴な氷の国の姫さまの落とし子などと誰が言えようか。
 しかも自分は攫ってきた張本人だ。あの魔女にそそのかされて。
 ガインは忌まわしい過去をぬぐい去りたいと思った。
 だが、簡単に拭えるものではない。

 暗い面もちで家に帰るガイン。
 一番の大物を先にいただいて、すやすやと寝ているマナの姿に一日の疲れも吹き飛ぶようだ。
 色白の肌、銀髪の髪の毛は母ダーナ姫を思わせる。
 だがピンと立った耳は猫族のそれだ。
 愛らしい我が子を見ていると、拭いきれない過去にさいなまれる。

 姫さまはどうされているのだろう?
『ガインさん、猟のお話をもっともっと聞かせてくださいな・・・』
 楽しそうに目を輝かせるダーナ姫の姿が目に浮かぶ。
 誘拐の時、自分にははっきりとした記憶がない。
 どのような苦しみを与えたのかさえ・・・。
 それが、ガインを苦しめていた。
 ドモン達にそそのかされ、悪に手を染めてしまった。
 いや、それは総て砂漠の魔女の魔力に操られていたに過ぎないのだが。
 ドモン達もその後どうなったのか、姿を見せない。
『永遠の命』とやらをもらってどこかの国に行ってしまったのだろう。
 毎晩のようにそうやって悩んでいても、昼間の疲れがガインを眠りへと誘った。
前へ メニューへ 次へ