ダーナ氷の女王 3話 1

地獄の船旅は終わりの時を向かえようとしていた。日に日に気温が上がりまるで蒸し風呂のような室温の舟底で、ダーナは、変わらずに男たちの責めを受け続けていた。
 男たちが寝入ったわずかの時だけ、ダーナは我に返ることができた。
 巫女の宣誓式を迎えようとしていたあの清純な姫は、男たちの汗と精液にまみれ、美しい銀色の髪は乱れ、乾いた男たちの体液によって黄ばんでいる。白く透き通る肌は、男たちの暴行によ傷や痣をつけられ痛々しい。
  特にその美しく盛り上がった乳房は、日夜の責めで赤く腫れ上がってさえ見える。
 そんな痛々しいダーナのからだにはもっと恐ろしい変化が現れていた。
「なぜ・・・こんなおそろしいこと・・・」
 その変化に気づいたダーナは、地獄へも突き落とされたかとも思った。
 それは、下腹部の変化であった。
 船に乗せられてからの日々は、ダーナには見当もつかない。日の光を見ることも、月の明かりを見ることさえ許されなかったからだ。
 とはいえ。それが数カ月におよぶだの想像もつかない。実際それは二週間ほどだった。しかしダーナの下腹部は、ここ2〜3日の間に、みるみると膨らんで、既に臨月の妊婦のようだ。
「・・・おそろしいこれも魔女の仕業なの・・・」
 処女の身であった、ダーナだが、幾たびもの陵辱を受け、『懐妊』という恐怖にさいなまれていたのだが。それがこんなにも早く訪れるなど。それは、魔女の魔法の性であると考えざるをえない。
「ああ・・・こんな男たちに純潔を散らされたばかりか。子を宿すなど、私はどうしたらいいの・・・・」
 ダーナの心を一瞬『死』の文字がよぎった。しかし、ダーナの国の宗教では、自殺が厳しく禁じられている。
 ダーナは己の運命を呪わずにはいられなかった。
「お、どうだいこいつは!もうすぐにでも生まれそうじゃねえか」
「へへへ・・・俺達の誰かの餓鬼が、高貴な姫君の腹に宿ったってわけかい」
「・・・・そうさ、それにしてもはらぼてのお姫様とやるってものもそそられるじゃねえか」
「うううう・・・おいらの餓鬼かも知れねえ」
 いつのまにか男たちが舟底へとおりてき
た。毎日大きくなるダーナの膨らんだおなかを見て、自分たちの子供かも知れないと言うのに、いたわるどころか、その姿にいつにもまして欲情を催している。
「・・・やめて・・・もう・・・いやです」
 身重のダーナは、身体が気怠く、小さく呟くだけだ。
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