廃墟の奴隷市(第4話)



望の金額は天井知らずだ、ついには500万を超えたところで
二人の男に絞られた。だがやがて、太った好色そうな男が
望を競り落とした。

「750万できまりました・・」

場所を仕切っていた男が声を上げる。それは、望をこの部屋に連れてきた
兄貴だった。
にたにたと笑いながら望をステージからおろし、男のもとへと連れて行く。
ここは宴会場だろうか。舞台をおりるとそこは畳敷きだった。
照明にてらされた舞台とは違い、暗闇の中だ。
何人もの男が蠢いて、歩いてくる望に寄ってくる。
兄貴はそれらの男をかきわけて、望を歩かせた。

「へへへ・・・。またトンデモねえ奴に目をつけられたな・・。まあかわいがってもらいな」

兄貴が望に耳打ちした。

「・・・あ、あの・・。これからなにを・・」

望が不安そうな声を上げる、だが兄貴はそれには答えずにやっと笑っただけだ。
その笑顔のいやらしさに望はぞっとした。

望は競り落とした男の前まできた。畳敷きの宴会場に胡座(あぐら)をかいて座っている。
着くずした着物の前をはだけ、だらしなくふくらんだ腹をだして、望の全身を見つめている。
酒を飲んでいるのか、赤くなった顔、薄くなった頭、おやじ臭い体臭が、望の鼻を突く・・。
望はせずじがぞっとした。

「へへへ・・・きたなバレエのねえちゃん、ほらここにおいで・・・げへへへ」

両手を広げて、おいでおいでをするおやじ・・。望は

「そらかわいがってもらいな・・・」

兄貴が背中をドンと押した。

「やっ!・・」
「おっとえへへへ・・・・」

望は押されてバランスを崩した。そのまま、男の胸元に飛び込むことになった。
おやじはすかさず望を抱き寄せると、全身をなで始めた。

「いやっ・・・・」
望は拒むが、恐ろしさに身体が動かない。おやじの汗にまみれた手が、方から腕、
そしてタイツに包まれた、すらりと長い足に、這い回っている。

「えへへへ・・・かわいいなあ・・。早くこの中身も覗いてみたいなあ・・・」

望の悲鳴などかまわず、おやじは望をぐっと抱き寄せる。
望の体温と、ロマンチックチュチュの感触を楽しんでいるようだ・・。
チュチュのスカートをめくりあげて、中にまで手を入れてくる・・。

そのとき・・。

「うう・・・いやあ・・・」

まわりからも女のうめき声が聞こえる。望はその声の方に目をやった。

「・・・いやあ・・・・だめえ・・・」

白鳥のチュチュを着た女の子が、他の男にもてあそばれている。
バレリーナにしては、胸があるのか。胸の手を入れられてもてあそばれているようだ。
望はすぐに目をそらした、

「・・・他の女に気を取られているのか?・・まあいい、
競りが全部終わるまでは誰もここをでれないんだ。それまでは本番もかなわないしな・・」

おやじが、望を見つめてつぶやいた。
おやじの言葉に望は頭が混乱しそうになった。

『・・ここはどこなの?どうしてこんなにバレリーナばかりが集められて・・・』

だが、それを声に出して言う勇気は、望にはなかった。

「さて・・。お次の娘は・・・」

舞台で兄貴が大声で叫んでいる。
奥の部屋で見た、オーロラ姫のチュチュを着た子が舞台に引き出されてきた。

『ここはまるで・・・。そう、奴隷市場・・・・』

望には、目に映る光景が現実のものとは思えなかった。




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